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短歌を詠んでみた

1

知らぬ街 一人家路を 急く我に 君は日暮れの 虹を指差す

見知らぬ街だった。土地勘も無い、異世界のような街。もう電車に乗らなければ、今日中に自宅に帰れないかもしれない。焦る私は景色など見る余裕も無かった。しかし、雨上がりの空には虹が浮かんでいて、あなたは、その虹を指差して、虹が消えてしまうまで、もうしばらくここにいてほしいという意思を見せていた。その時私は自分がいかに余裕をなくしていたかを気付かされた。

2

虚ろなる 透けし抜け殻 葉に残し 蝉は飛び行く 雲の湧く空

虚ろな内面を陽光にさらけ出すセミの抜け殻が、木の葉に張り付いている。
蝉は、夏雲の沸き立つ空へと飛び立っていった。蝉の行方は誰も知らない。

3

立ち昇る ペトリコールは 黒々と 点描を描く 雨の悪戯

石の血と言う名前として知られるペトリコール。真夏の夕立の時に立ち昇る特有の匂い。雨粒が落ちた時、それは立ち昇ってくる。大地にボツボツと点描画を描いている、雨雲の悪戯。

4

望月の 光通さぬ 山々の 森はぬばたま 黒き天鵞絨

満月の明るい夜でも全く関係が無いかのように深い山々は、しっとり濡れた真っ黒なビロードのように、全ての光を吸い込んで離さなかった。

5

歪みたる 水面に揺らぐ 落日の 作りし道に 船は横切る

海に浮かぶあの金色の道はどこに続いているのだろう?南方出身の同僚は子供の頃はよくそんな話をしたと話した。天国なんだという子供もいたそうだ、消えないうちに渡ると、天国へ行けるのだと。その道はあっという間に消えていったのだという。船だけがその残照を悠々と横切って見せていたとも。海のない町に住んでいた私は、少しうらやましく思った。

6

朝靄に ひとつ卵を 割りほぐし とろけ崩れた 朝日まばゆし

朝靄に崩れた輪郭の太陽が輝く卵のように見えてきた話。スクランブルエッグが食べたくなる短歌。

7

美しき 者も正しき 者たちも 強き光の 生む影知るや

その渦中にいる人は解らない事は結構いっぱいある。若さの盛りの女性が、そうであったり、正義を振りかざす人がそうであったりする、自分たちが生む影がどれほど濃くて暗いのかを果たして明白に知っているだろうか。それは気付かなければ危ない目に遭いやすくなる。だからぜひ、光だけではなく影にも目を凝らしてほしい、自分は果たしてどんな影を生んでいるのかを知るために。

8

忍び寄る 死を思うから とびきりの 笑顔で語る 君への愛を

もし何らかの病気の末期になったとしても、死は急には来ないかもしれない。そうだと知ったら泣き崩れてしまうだろうか、それとも、遺された人々のために笑顔を作れるだろうか。それはまだわからない。ただ、大切な人に普段からあなたは大切な人であると、出来るだけ伝えた方がいいように思う。

9

盃を 傾け死者の 弔いを 行う我に 猫は寄り添う

祖母が亡くなった時、悲しみのあまり酒をあおっていた、弔いのつもりでもあった。しかし猫は、悲しげな声を上げて何度も鳴いて、決して私から離れようとしなかった。まるで私の代わりに泣いてくれたかのようだった。

10

手作りを 愛する祖母の ミシン踏み  共に作らん 文化人形

私のミシンは祖母からのプレゼントも同じミシンだ。そのミシンのペダルを踏んで、人形を作っている時、私は、まるで、祖母が今まさにそばで応援してくれているような気持になるのだ。いつでも二人三脚で人形を作っているように思う。




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