「重度訪問介護って、資格なくてもできるんでしょ?」って言ったら、そこがポイントだと返ってきた
「重度訪問介護って、実はヘルパーの資格がなくても研修だけで始められるんでしょ?じゃあ、わざわざ単価の高い看護師を使う必要ないんじゃない?」
そう聞いたら、夫(現役看護管理職・訪問看護開業準備中)から「そこがまさにポイントなんだよね」と返ってきました。
私:重度訪問介護って、誰でもできる仕事なの?
夫:資格のハードルで言うと、実は結構低いんです。「重度訪問介護従業者養成研修」っていう研修を修了すれば、最短数日で従事できます。無資格・未経験でも始められるので、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士、看護師、准看護師、いろんな立場の人が関われる仕事なんですよね。
私:え、それ考えたことなかった。単純に安いヘルパーだけで回せばいいと思ってた
夫:そう思う人、実際多いと思います。でも医療的ケアが必要な利用者になると話が変わってきます。
私:医療的ケアって、具体的に何?
夫:喀痰吸引とか経管栄養とか、体に直接関わる医療行為のことです。これ、ヘルパーでもできなくはないんですけど、条件がかなり限定的で。
「重度訪問介護従業者養成研修」の統合課程を修了すると、喀痰吸引等研修の基本研修を終えたことにはなります。でもそこからさらに、看護師の指導のもとで、利用者ごとに実地研修を受けて初めて、その利用者に限って医療的ケアができるようになるんです。
私:利用者ごと、ってことは…
夫:そう、Aさんの実地研修を受けても、Bさんには対応できません。利用者が変わるたびに、また研修が必要になる。しかもその都度、看護師の指導が必要になります。
一方で看護師や准看護師は、資格そのものに医療行為が含まれているので、利用者を限定せず、最初から対応できるんです。しかも、急変時の状態判断や医師への報告も、看護師なら資格の範囲でできます。
私:なるほど、そこが決定的な違いなんだ
夫:そうなんです。だから、「誰でもできる仕事だから安く回そう」という発想は危険で。医療的ケアが必要な利用者を受け入れられるかどうかで、対応できる利用者層がまったく変わってくるんですよ。
人工呼吸器を使っている方とか、経管栄養が必要な方って、実は受け入れ先が少なくて困っているケースが多いんです。そこに対応できる体制を持っていること自体が、事業所としての強みになります。
私:単価が高い看護師を雇う意味、ここにあるんだね
夫:そうです。もちろん看護師の人件費は高いです。でも、その分対応できる利用者の幅が広がって、他の事業所が受けられない依頼を受けられる。これは前に話した「特定事業所加算」でも、重度障害者への対応実績が評価される仕組みがあるので、単価面でも活きてきます。
前回、「利益=売上−コスト」の式で考えるという話をしましたけど、ここでも同じです。人件費の額を見るんじゃなくて、対応できる利用者の幅を見る。「安いヘルパーだけで回す」か「看護師を入れて対応幅を広げる」か、表面的な人件費だけじゃなく、受け入れられる利用者層まで含めて考える必要があるという話だと思っています。
横で見ていて思ったこと
これまで私は、単価が高い看護師を雇うのは「専門性があるから」くらいにしか思っていませんでした。でも話を聞いてみると、夫が見ていたのは資格の格が高いかどうかじゃなく、対応できる利用者の幅でした。「資格がなくてもできる仕事」と「看護師じゃないとできないこと」が同じ重度訪問介護の中に混在している、というのも今回初めて知りました。
前回の「利益を見る」に続いて、今回は「人件費じゃなく、対応できる幅を見る」。少しずつですが、経営者がどこを見て判断しているのか分かってきた気がします。
まとめ
重度訪問介護は資格のハードルが低く、ヘルパー・介護福祉士・看護師など幅広い人材が従事できる
ただし喀痰吸引・経管栄養などの医療的ケアは別枠。ヘルパーが行うには利用者ごとの実地研修が必要で、対応範囲も限定される
看護師・准看護師は資格の範囲内で医療的ケアに対応でき、利用者を限定せず、急変時の判断もできる
単価の高い看護師を配置する意味は、人件費だけでなく「対応できる利用者層の広さ」にある
次回予告
次は、「入院したら重度訪問介護は使えなくなるのか」という話を聞いてみようと思います。実は一定の条件を満たせば、入院中もいつものヘルパーが付き添える制度があるらしく、あまり知られていないその仕組みを掘り下げます。
このnoteは、精神科特化型訪問看護ステーションの開業準備を進める現役看護管理職(夫)と、その様子を横で見ているライター(妻)の会話をもとに構成しています。
