カミナリが怖い愛犬

熊本で地震があった前の日。
関東では、いわゆるゲリラ豪雨だった。
昔なら「夕立」。
最近は名前だけ、
ずいぶん強そうになった気がする。
その日も突然、空が暗くなり、
ピカッ。ドーン!!
ほぼ同時だった。
「あっ、近い。」
私でも思わず肩が跳ねた。
人間でも驚くくらいだから、
動物にとってはもっと恐ろしいんだろう。
そういえば、昔飼っていた我が家の愛犬は、
とにかく雷が大嫌いだった。
遠くで
「ゴロゴロ……」
と鳴り始めただけで落ち着かない。
部屋の中をウロウロ。
窓を見てはウロウロ。
私を見てはウロウロ。
「いや、私に言われても、雷は止められんぞ。」
そんなことを思いながら見ていると、
最終的にたどり着く場所は決まっていた。
私の机の下。
高校生だった私は、試験勉強をしている。
その足元で、愛犬は小さく丸くなって、
ブルブルブルブル……
「お前、そんなに怖いのか。」
と頭をなでると、少しだけ震えが小さくなる。
でも、雷が鳴るたびに、
またブルブル。
勉強どころではない。
いや、犬の方が勉強の邪魔をしているわけではない。
あの震えを見たら、
「ちょっと待て。」
となるのである。
夜も同じだった。
寝ていると、
いつの間にか布団がモゾモゾ動く。
気付けば布団の中に潜り込み、
私のお腹の横で丸くなっている。
そして……
ブルブルブルブル。
「暑い。」
「でも追い出せない。」
夏なのに犬たんぽ。
保温機能だけは完璧である。
昔は、
「犬って番犬だから、雷なんて平気なんじゃないの?」
なんて思っていた。
ところが現実は違う。
家族を守るどころか、
一番安全そうな家族のところへ避難してくる。
いや、気持ちは分かる。
私だって外で雷が鳴ったら建物へ逃げる。
犬も同じなのだ。
安心できる場所を知っている。
それだけなのかもしれない。
今思えば、
あの子は「雷が怖かった」のではなく、
「この人のそばなら大丈夫。」
そう思ってくれていたのかもしれない。
そう考えると、あの震えも、机の下も、布団の中も、
全部、大切な思い出になる。
雷の音を聞くたびに思い出す。
あの小さな温もりと、
私のお腹の横で、一生懸命震えていた愛犬のことを。
今でもきっと、どこかで雷が鳴ったら、
「ここ、入れて。」
そんな顔をしながら、
布団に潜り込んでくる気がしてならない。

