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「推し活」の元祖は野球女子だった?浅尾きゅんから辿るプロ野球女性ファン史

先日、中日ファンの方と話をしていた時のことです。
「あの頃のドラゴンズは強かったですね。浅尾、岩瀬ときたら、もう打てる気がしませんでした。」

そう言った瞬間、当時を思い出して胸がきゅん

そう、浅尾きゅん
当時「きゅん」と呼ばれていた
浅尾拓也は、
スーパー中継ぎ、かつ超絶イケメン。

細身の体から繰り出される最速157キロの速球。ストレートと縦に曲がるスライダー、高速フォークを持ち味とし、フィールディングもよく、
2011年にはゴールデングラブ賞も取りました。(確か中継ぎで取ったのは彼だけです。)

主な記録だけでも
2010年のシーズン47ホールド(当時NPB記録)と59ホールドポイント(日本記録)、2011年の最優秀中継ぎ投手2連覇、79試合登板(リーグ最多)、防御率0.41、シーズンMVP(中継ぎ投手として初)など、中日ドラゴンズの黄金期を支えた絶対的守護神としての圧倒的な成績です。

落合監督も「浅尾と岩瀬でやられたら仕方ないんだから」と言うほどの信頼ぶり。

その上性格までよい。
この姿に野球女子は心を奪われ、きゅんとしてしまう。他球団ファンでも。
「浅尾くん」と言おうとして「浅尾きゅん」と言ってしまう。
そんな存在。

そういうわけで、私も
ライバル球団なのに、
あの頃の中日ドラゴンズには
さんざんやられたのに、
浅尾きゅんだけは、
思い出すと胸がきゅんきゅんする存在でした。

今日は、この「きゅん」という感情を入り口に、
プロ野球と女性ファンの歴史について語ってみたいと思います。




導入部:スタジアムのカラフルな光景、その裏にある意外な歴史

今やプロ野球のスタジアムでは、
チームカラーのユニフォームを身にまとい、声援を送る女性ファンの姿は当たり前です。

ちびたぬきも応援します。

「カープ女子」「オリ姫」という言葉に象徴されるように、
女性ファンは球場の空気をつくる大切な存在になりました。

でも、このカラフルな光景は、昔はほとんど見られなかったとしたら、
少し驚きませんか?

かつて野球場は「不良の遊び場」と呼ばれ、
女性が行く場所ではなかった──そんな時代があったのです。


1. 驚きの原点:野球場は「不良の遊び場」だった

戦前〜昭和初期、プロ野球の球場は
一般女性にとってかなり敷居の高い場所でした。

職業野球に対する偏見も多かった時代です。
作家・山口瞳は、当時の様子をこう振り返っています。

「野球選手は本来、不良なんです。
スタンドは遊び人が多かった。」

『毎日新聞』

観客の多くは男性。
女性は水商売や芸能関係者が中心で、
「健全な娯楽」というイメージはほぼなかったのです。

昭和12年(1937年)の「婦人デー」では、
「同伴婦人無料」に対して
「女だからタダなんて失礼」と怒った女性が
正規料金を払って入場した、という逸話も残っています※1。

今の球場風景からは、想像もできませんよね。


2. きっかけは野球じゃない? ナイターは「夜のデート」だった

女性が球場に増え始めた転機は、1958年頃のナイター・ブーム

意外なことに、目的は野球観戦ではなく
カップルのデートでした。

  • 映画館より長く一緒にいられる

  • 暗くて周囲の目が気にならない

  • ホットドッグを分け合える

そんな理由で、ナイターは人気スポットに。

自由恋愛への憧れや、働く女性(BG)の増加など、
社会の変化もこの流れを後押ししました。

女性ファン文化の始まりは、
とても生活感のある動機だったのです。


3. 「ミーハー」革命:『プロ野球ai』が変えたもの

私がカープファンになったのは1979年です。まだ小学生でした。
そこから10年くらい経ち、大学生になったころ、女性ファン文化は一気に加速します。
きっかけは、1988年創刊の女性向け雑誌
「プロ野球ai」でした※2。

この雑誌は革命的でした。

  • 成績よりも人となり

  • 恋愛観、私服、休日の過ごし方

  • アイドル雑誌的な誌面と付録

「ミーハー」を否定せず、
好きな選手を好きと言っていい文化を作ったのです。
(私は「週刊ベースボール」のほうが好きでしたので、購入したことはありません。)

ちなみに、創刊号(1988年)から「いま光っているアイドルたち」という企画があるのですが、そのとき1位に選ばれたのは工藤公康でした。

ここから、現代の「推し活」が始まったと言っても過言ではありません。


4. 推すのは「選手」だけじゃない? 関係性を楽しむ世界

1990年代以降、女性ファンの視点はさらに進化します。

個人だけでなく、
選手同士の関係性を楽しむスタイルが登場。

  • 仲良しコンビ

  • ライバル関係

  • チーム内の空気感

いわゆる「ホモソーシャルな絆」を
安全な距離で見守り、解釈し、楽しむ文化です。

これは今でいう
「ケミがいい」(お互いの魅力が引き出され相乗効果が生まれている状態)「コンビ推し」(その二人の関係性(ケミ)を特に応援すること)
の原型でした。


5. 「胸きゅん」が公式に! 球団主導の推し活時代

そして現代。
かつてファン発だった感情は、球団の公式戦略になります。

  • オリックス「オリ姫 推しメン投票」

  • 日本ハム「胸きゅんFestival」「彼氏にしたい選手権」

ここで重要なのは、
プレー+人間性+ギャップ

浅尾投手の「きゅん」も、
まさにこの文脈の先駆けでした。
日ハムの「谷口きゅん」もいましたね。


結び:応援席から見える、時代の変化

振り返ると、女性ファンの歴史はこう変わってきました。

  • 不良の遊び場として避ける

  • デートスポット

  • アイドル追っかけ

  • 関係性を推す文化

  • 公式化された推し活

これは単なる野球の話ではありません。
女性が「好き」をどう表現してきたかの歴史でもあります。

ライバルなのに、
今も思い出すと胸がきゅんとする「浅尾きゅん」

そんな存在が生まれたこと自体が、
プロ野球という文化の豊かさなのかもしれません。


参照元リンク一覧

※1プロ野球女性ファン文化の変遷 ~「ミーハー」ファンから「オタク」ファンの時代~

https://tokorozawa.w.waseda.jp/kg/doc/50_ronbun/2012/5011A075.pdf

※2 プロ野球ai(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83ai

※3 浅尾拓也(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%85%E5%B0%BE%E6%8B%93%E4%B9%9F

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