六月の鯨 第二話
合同演奏会から間を置かず、今度は別の中学校の校舎を使って合評会が開かれた。合評会とは、市内の中学校と高校の吹奏楽部が集まり、夏のコンクールで演奏する曲の出来栄えを批評し合う勉強会のことだ。
今年の地区大会は七月の上旬で、その直前に吹奏楽専門の講師に直接指導してもらえるのはありがたいことなんだよ、と清は先輩から教えられた。
普段指揮している顧問以外からの視点があれば、ためになるだろうし、役に立つことも多いだろう。コンクール前の度胸試しにもなるし、広い場所で吹ける機会だって滅多にない。これは貴重なことなのだというのは清も分かっている。頭では。
「もう帰りたい……」
清は今日何度目かの深いため息をついた。吹奏楽部に入部しフルートを始めてほんの三ヶ月、清は合評会というイベントがあると聞いてから長いこと気持ちが落ち着かなかった。今日は合同演奏会の本番よりもはるかに緊張していて、昨夜はよく眠れず、寝坊して乗る予定のバスも逃しかけた。
最近やっと運指が安定して、楽譜を読むのも慣れてきた。コンクールでは二曲しか吹かないから、ずっと練習していれば誰でもそれなりに上達する。けれどみんなに比べればたどたどしいのに変わりはなく、どうかボロが出ませんように、ここ一人で吹いてみて、なんて言われませんようにと清は朝からひたすら祈っている。
「気持ちは分かるけど、大丈夫。取って食われやしないから」
体育館に設置されたパイプ椅子の観客席、清の隣に座った友人の福井沙知絵は落ち着き払ってなぐさめた。
「沙知絵ちゃんはうまいもん!」
「そうかなあ」
沙知絵は首を傾げたが、でもありがとう、と照れたようにはにかんでみせた。同じ学年の沙知絵はオーボエを担当していて、吹奏楽部の中では清といちばん仲のいい友達だ。オーボエはパート練習でフルートと同じ教室に分けられるため、二人は何かと話す機会が多い。
「まあ、トータルとしては自分たちの指導の時間より聴いてる方が長いんだからさ。気楽にいこうよ」
ね、と沙知絵がなだめるように言うので、清はようやく諦めてうん、そうだねと弱々しく呟いた。
沙知絵はのんびりしているように見えて、合奏となると鬼のような演奏を見せる。沙知絵の両親は市の吹奏楽団に入っているらしく、みんなより頭ひとつ抜けてレベルが高い。今年はコンクールの自由曲で二年生ながらソロをもらうほどの実力で、しかも人当たりもいいので先輩からも後輩からも好かれている。気が付かないうちに敵を作ってしまう清にとっては憧れの存在で、これ以上困らせてはいけないと自重する。
「それに、鯨さんに会えるんだよ。チャンスだよ」
沙知絵はそっと耳打ちした。清はどきっとして、沙知絵に振り返る。
「今日も話せるといいね」
沙知絵が思わせぶりな笑顔を見せたので、清はそういうんじゃないってば、と赤くなった顔で反論した。
あの合同演奏会のあと、清は沙知絵にだけはあの日あったことを正直に話した。沙知絵は茶化すことなく、笑うことなく、真剣に清の話を聞いてくれた。翌日、沙知絵は前年の葉輪高校の定期演奏会のパンフレットを持ってきて、裏面の部員名の書かれた欄の中から、「けい」と読める名前の人を探してくれた。
おそらく、彼の名前は佐伯鯨。担当楽器はトロンボーン。今年は三年生で、たぶんファーストを吹いている。出身中学までは分からないけれど、強豪校だけあって少なくとも下手ではない。
一冊のパンフレットからそれだけの情報を読み取った沙知絵にも驚いたが、清はぐっと彼に近付いた気がして嬉しかった。名前さえ曖昧だった頃に比べればずいぶんな進歩だ。だが、問題は彼が清を覚えているかどうかということだ。
清はどうしても鯨にお礼が言いたかった。あの日、楽器の搬出を手伝ってくれたこと。清の悩みを笑わないで聞いてくれたこと。音楽は楽しいって教えてくれたこと。あの日抱いた感情の全てを、彼に伝えなければ気が済まなかった。彼のおかげで清は仲間たちと打ち解けたし、今も部活を苦にせず続けている。
やがて合評会開始のアナウンスが入り、最初の中学校の演奏が始まった。初心者の清も勉強のつもりで耳を傾ける。膝の上には参加者全員に配られたプリントがある。これに演奏について思ったことや改善点などを書いて、終了後に各学校に渡すのだ。無記名だが、手抜きをするわけにはいかない。
清はどの学校の演奏を聴いても、自分以外の全ての音がうまく聴こえた。ピッチも合っているし、息継ぎなしでロングトーンもできている。叙情的な自由曲は歌うようで、どこに指導の余地があるのか清は本気で分からなかった。
講師による講評の間じゅう、清は「良かったです」「きれいでした」以外の感想をどう書こうか、終始頭を悩ませた。
清の中学校は四番目で、いざステージに立つともはや息の根が止まりそうだった。いま目の前にいる、この観客全員に批評されるのかと思ったら気が気ではなく、くらくらとめまいがして椅子から倒れるのではないかと思った。
陸上みたいに、自分の得意分野だったらここまで気も張り詰めなかっただろう。しかし吹奏楽の世界ではまだ未熟だと分かっているから、清はよけいに指摘されるのが怖かった。
あまりに清が青ざめているので、同じフルートの先輩である絵麻が「私が何とかするから。できないと思ったら吹いたふりだよ」と言ってくれた。清は人形のようにこくこくと頷き、やがて指揮者で顧問の咲村ようこが壇上に上がったので覚悟を決めて姿勢を正した。
咲村は清の気持ちを知ってか知らずか、後ろの観客に分からないようにそっと口を動かした。
『楽しんでやろう』
普段から穏やかな咲村が全員に視線を送り、にっこりと笑ってみせた。その余裕に清の力が抜けた。空気が和んだのが分かったのか咲村は満足げにうなずき、指揮棒を構えると同時に清も楽器を持ち上げた。ひと呼吸おいて指揮棒がぴっと上に振れると、何度も練習したきらびやかなメロディがスタートした。
一曲目は、五つある課題曲から選んだマーチ「ライヴリー アヴェニュー」だ。アップテンポで序盤から明るく元気がいい。マーチはどうしても金管楽器が目立つが、木管楽器の伸びやかなオブリガードが爽やかな気分にさせてくれる。タンギングが多い曲でリズム感が試されるので、清はメトロノームを使って重点的に練習してきた。
遅れないように、ピッチをずらさないように。清は指揮をよく見て必死で曲にしがみついた。耳を使って周りの音をよく聞き、馴染ませる。ほかの音にきれいに重なるように、繋がるように。聴いている人が、元気な気分になれるように。
トリオは伸びやかで優雅だが、終盤は苦手な連符の連続だ。運指の技術が間に合わないなら表現力だと、清は咲村の言うとおり楽しく吹くことを心がけた。メロディに乗る。主旋律と音を絡ませる。最後にメロディが駆け上がって終曲だ。良い終わり方ができたかもしれないと、清はほんの少し嬉しくなる。
楽譜をめくり、間髪入れず清は自由曲の構えに入る。今年は吹奏楽の巨匠、アルフレッド・リード作の「エル・カミーノ・レアル」だ。金管のファンファーレの直後、序盤からテンポが速い上に連符が続いて指がもつれる。前半はとにかくスピード感が命だ。できないところはごまかして、何とかすると言ってくれた絵麻を信じた。音が大きいところは堂々と、自分が目立つところは恐れず音を出すことを心がけた。
中盤は沙知絵のソロだ。さすが、堂々として貫禄がある。その繊細さを壊さないように清の音を乗せて、全体でひとつのハーモニーになる。気が付くと曲に合わせて自然と体が動いていて、ステージに上がっている全員と一つになっている感じがした。見えないけれど、横の列の人も、後ろの人も、みんな同じように目の前の一曲に全力で向き合っているのを感じ取った。
注意事項を書き込みすぎて黒くなった譜面。分かっているけれどできない自分が悔しい。でもすぐにうまくはなれないから、いまの最善を尽くすしかない。体が動く。曲がうつろう。
曲は再びアップテンポになり、華やかなメロディで幕を閉じた。全員で立って咲村が礼をすると、体育館は拍手に包まれる。
緊張したけれど、楽しかった。やっぱりみんなで合わせるというのは気持ちがいい。咲村が指揮台から下りたのを合図に、今度は講師のマイクのスイッチが入った。清は大きく息を吸う。さて、本番はこれからだ。清は身を硬くした。
昼食のための休憩時間に、他校の生徒が書いた講評のプリントがさっそく回ってきた。清が沙知絵と弁当を食べる間、休憩時間内に読んでおくように三年生から束になったそれを渡された。
講師による指導は思ったよりも優しくて清はほっとした。きっと各学校のレベルを見極めているんだろう。セクションごとに吹くようには言われたものの、清が一人で吹くよう指示されることはなく、適度に褒められて、適度に修正された。約四十分の指導が終わり、やっとステージから降りたときに清はようやく、体全体に酸素が行き渡ったような心地がした。
もぐもぐと口を動かしながら一枚一枚プリントに目を通す。辛口のコメントは皆無だった。良かったです、とかうまかったです、とかが大半で、たまに詳しく感想を書いているものもあったが、なんだ、こんな感じで良かったのかと清は拍子抜けした。
この合評会には七つの学校が参加しているため、プリントの量も膨大だ。みんなで少しずつ回し読みして、最後に渡されたプリントだった。斜めがかった細い字で、「荒削りだけど、いい演奏でした」と書いてある。その下に。
――音楽を楽しんでいることがよく伝わりました。よかったです。
音楽を楽しむ。この前、鯨が言っていた。
こういうことを言えるのは高校生かもしれない。もしかしたら鯨かもしれない。きっと経験豊富な人でなければ分からない。もし本当に鯨だったら。鯨が清の音を聴いていたら。清は胸の奥がぎゅっとなる。持っていたプリントがくしゃ、と鳴る。
どうしよう。嬉しい。伝わっていた。私はいま楽しいんだってことが、聴いている人にちゃんと届いていた。聴いている人も楽しくなってくれたらいい。そういう演奏を、清は鯨と出会って以来してみたかった。
「清ちゃん?」
プリントを手放さない清を不審に思った沙知絵が、清の顔を心配そうに覗き込んだ。
「沙知絵ちゃん」
声が出たことにほっとした彼女は、なに、と聞き返す。
「吹いてる人の気持ちって、聴いてる人に伝わるんだね」
清は泣きそうだった。もうみんな知っていたことかもしれない。この世界では当たり前のことなのかもしれない。でも清は初めてそう感じた。予想外の答えに沙知絵は二度、三度瞬きを繰り返すと「そうだよ」と言って笑った。
午後の最初の演奏は葉輪高校だった。清の目は自然とトロンボーンに向いた。鯨さん。指揮を見つめ、楽譜に向かう彼は真剣そのものだった。
課題曲は清の学校と同じだ。しかし、まるで別の曲のように清には聴こえた。まず高校生のサウンドは中学生とは重厚感が違う。どの楽器も音が太くて重い。それでいて軽やかで跳ねるようで、自分たちは本当にまだまだ未熟なんだと思い知らされた。
自由曲はホルストのオペラ「どこまでも馬鹿な男」だ。金管楽器と木管楽器が活躍する章がはっきりと分かれていて、金管はフォルテシモで派手に鳴り、低音楽器が腹の底までよく響いた。木管は優雅で美しく、フルートソロは透明感があってとてもきれいだ。
葉輪高校の演奏はやはりレベルが段違いで、演奏後の拍手は喝采に近かった。だがこんなにうまくても改善点はあるらしく、講師の指導によってどんどん良くなっていく音を目の当たりにして、清はこのままではだめだ、と焦りを覚えた。もっと練習してうまくなりたい。努力を重ねて鯨のレベルに近付きたい。あわよくば、いつか彼と一緒に吹いてみたい。
四歳分の経験値は埋まらないかもしれないが、いつか彼に追いつきたいと清は思った。
夕方、合評会は無事終了し、参加者全員で体育館を片付けた。今回は楽器の搬出は指導が終わった順にトラックに積み込んだので待機はない。観客席のパイプ椅子をたたんで所定の場所に収納し、ステージ用のひな壇を借りていた教室に戻していく。控室に使っていた教室も掃除して、外に出る前に清はちょっとトイレ行ってくるね、と言ってみんなの輪を抜けた。
他校の顧問たちと打ち合わせをしている咲村はきっとすぐに戻ってくる。点呼で自分がいないとまずいので、清はできるだけ早く戻るつもりでいた。
用を足して急いで昇降口に戻り、スニーカーを履こうとすると隣に影が落ちた。
清は思わず振り返る。鯨がいた。
「鯨さんっ」
突然の声に驚いた彼は、清がこの前楽器の搬出を手伝った子だと分かるとああ、と納得した顔をした。
「君とはよく会うね。あれ、名前教えたっけ」
わざわざ調べたなんて言えない。清はごまかすように「この前、友達の方がそう呼んでて」と言うと鯨は思い出したようだ。
「そういえばそうだね。僕、鯨って書いてけいって読むんだ。今日はお疲れさま」
「お疲れさまですっ」
鯨は微笑むと清の隣に並んで持っていたローファーを置いた。清の心臓が早鐘を打つ。どうしよう。こんなところで会うとは思わなかった。想定外すぎて、何を言おうとしていたか清は全く思い出せない。一方の鯨は全く意識していないのか、慌てることも驚くこともなく、この前と同じように凪いでいる。
このチャンスを逃すまいと、清はスニーカーの踵を履き潰したまま、鯨の正面に回り込んだ。
「あの、この前はありがとうございました。本当に、すごくすごく助かりました」
「気にしないで。やりたくてやったことだから」
鯨は靴を履き、トントン、とつま先を叩いた。上履きを持参した袋にしまい、よいしょと鞄を背負い直す。どうしよう。このままではいけない。きっとすぐに彼は行ってしまう。それはだめだ。この人には伝えたいことがたくさんある。
「あの、鯨さん、私あのあと――」
「演奏、よかったよ」
清が頭をフル回転させていると彼は遮った。
「吹奏楽が好きだっていうのがよく分かった。もう大丈夫そうだね」
清はあの講評のプリントを思い出した。
――音楽を楽しんでいることがよく伝わりました。
あれってやっぱり、もしかして。
清は言葉をつまらせた代わりに、大きくこくんと頷いてみせた。
「そうだ。君の名前、教えてもらってもいいかな」
清は目を見開いた。名前。そうだ、私の名前。
「清です。沢田中二年、高野清」
「清ちゃんだね。練習頑張って。また会おうね」
鯨は手を振り、去っていった。急に辺りがしんと静まり返る。あのときと一緒だ。まるで頭がぼうっとして、現実感がない。遠い存在だった彼が、自分の名前を呼んでくれる。まさか。そんなことが。体が熱くて、胸の奥がこそばゆい。
清は潰していた靴の踵を履き直し、ようやく足を動かして外に出た。昇降口の重いドアを開けると爽やかな風が吹き抜けた。プリーツのスカートがふわりと揺れる。おかっぱの髪がたなびいた。
清は急いでみんなの輪の中に戻った。気付いた沙知絵が先生まだ来てないよ、おかえりと清に言った。
「どうかした?」
清は顔がにやけてしまうのを隠しきれない。実はね、と清は沙知絵に打ち明けた。
*
家族で夕食を囲っていると、父親は唐突に尋ねた。
「そういえば鯨、この前の模試はどうだったんだ」
模試、と言われて鯨は思い返す。この前、というのは先週のことだろうか。この人の言う「この前」は、ずいぶんと前のことがよくあるから気を抜けない。
鯨の父親は市内の法律事務所で弁護士として働いている。仕事は忙しく、帰りはいつも夜遅い。平日は家族と話す時間もなく、こうして休日の夜に一週間にあったできごとを確認していく。自分の家族において隠しごとはいっさいなしだ、とでも言いたげに。
「まだ返ってきてないけれど、手応えは良かったよ。数学をもう少し伸ばしたいから、今度先生に添削をお願いできないか聞いてみるよ」
「そうか。難しいときはいつでも言いなさい。塾に通ってもいいんだから」
それは無理だと鯨は言いたいのを我慢する。平日は部活があるから塾に通うなんて不可能だ。しかしこの父親は、鯨が部活に打ち込んでいることなどどうでもいいらしい。
「そうだね。そのときは相談するよ」
彼と一緒にいるときは、いかに彼の機嫌を損ねないか本人以外の全員が気を使う。鯨の家では休日は朝晩の食事を共にするのがルールだが、こんなものは団欒とは言えないと鯨はずいぶん前から思っていた。
「お父さん、この子もこの前、テストで一番を取ったのよ」
母親が弟のことを気を使ったように報告する。彼はちらりと父親を見やった。母親は兄弟を差別しないが、父親の興味はあくまで出来のいい鯨にある。
「ああ。お前も野球ばかりしていないで、兄を見習いなさい」
「……うん」
褒められないと分かっていても、彼の声は沈んでいる。鯨は慌ててフォローする。
「勉強なら僕が教えるから。分からないところがあったらいつでも聞いて」
「邪魔はするんじゃないぞ」
「うん、分かってる」
余計なことを。鯨は心のなかで舌打ちをする。弟は黙々と箸を動かし、自分からはひと言も口をきかないのが痛々しい。
気の休まらない食事を終え、自室に戻ると「兄ちゃん」と声をかけられた。
「どうした?」
「俺、父さんに嫌われてるのかな」
鯨は全身が沸き立つのを感じた。弟は可愛い。家では心を閉ざしているが、外に出ればよく笑う子だ。成績は確かに自分より劣るが、それでも悪いわけじゃない。野球一筋、ボールを投げる彼は生き生きとしていて、それを知らない父親は悪だと思った。こんなに可愛い弟に、こんなことを思わせる親は失格だ。
「いいか、よく聞け」
鯨は弟の両肩を抱いて彼の目を見た。
「お前は勉強しろ。たくさん勉強して、いい大学に行け。そしてこの家を出るんだ。この家さえ出てしまえば、お前は自由だ」
「兄ちゃんは?」
彼は自分を見上げてくる。
「兄ちゃんはどうするの」
鯨は言葉に詰まる。父の希望する大学に行けば、父と同じ資格を取らされて自分の仕事を手伝うように言うだろう。
逆に鯨が夢を追いかければ、弟も母親も守る人がいなくなる。そうなったら、この人たちはどうやって心の安寧を保つのか。
「僕は大丈夫。いつか必ず逃げるから」
鯨は安心させるように笑顔を作った。
「いつかって、いつ?」
不安げな弟の質問に鯨は答えられない。それは鯨にも分からない。けれど、父の言いなりには絶対にならない。いつか欺いて逃げてやると、鯨は心に誓っている。
*
