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悩める童話作家の表裏一体 #シロクマ文芸部


赤い傘がお題。
スプラッタしか浮かばない。

どうしよう、ポエムを書きたいのに

「月刊・文芸翡翠」
この月刊誌は月替わりで提示されるテーマやお題に添って
作家たちが寄稿するシステムになっている。
私もその作家の1人。
童話やポエムを書いているのだが・・。
今回のお題
「赤い傘」に対して完全に行き詰っている。
お題を見た瞬間おぞましい思考や情景を作り上げてしまった。
真っ赤に傘を染め上げるは・・・。
そんなそんな、自分の頭の中にそんな
血で血を洗うようなストーリーが浮かぶなんて・・。
そのイメージを払拭できないままでいる。

筆が進まない私を心配し担当がやってきた。
しばし雑談をしたあと、
「ここは思い切って路線変更はいかがでしょう。」
とホラーへの転身を提案された。

「せんせい、イメージ一新のチャンスですよ。
すっごいの書いちゃいましょうよ。」

私にホラーを書けと言ったのはたまたまか?
だいたい童話からホラーに転身っておかしくないか?

「赤い傘」から浮かんだ
どす黒い思考や広がるスプラッタな情景を私はまだ誰にも話してはいない。

「せんせいなら書けますよ!
実はもうアイディアお持ちなんじゃないですか?」
私は一瞬息をのんだ。
「お、お、おま、お前まさか、
【ヨミトルくん】をインストールしているのか??」
                   ……
「なんのはなしですか」
私は担当の手にあるパソコンをひったくろうとしたが、
さっとかわされた。
言葉も体もバタバタっとつんのめった。
「せんせいってば、やだなぁ、怖い顔」

【ヨミトルくん】とは
安直なネーミングで全世界にそれがコントであるかのように伝わった
世紀の発明品だ。
しかし、その性能はというと、
対象となる人物の深い思考にまでアクセスし拾い、記録してしまうため、
一般人は使用どころか所持を禁じられている。
ごくごく限られた者がごくごく限られた場所でしか使えないはずだ。
その為粗悪なコピー品が闇で出回っているらしい。

「これでよし!玉稿賜りましたーーー!!」
パチパチパチとキーボードを叩く操作が止まり、
担当は持っていたパソコンを頭より高くあげ嬉々としていた。

やっぱり何か使ったんだ。
私の思考は粗悪品で読みとられ、
「ある程度捻じ曲げられた」と考えていいだろう。
ベースはスプラッタな情景だ。
私が童話作家ではなくなる。
そいつ私の思考を置いていけ!頼む」
「そんなあ。読者をあっと言わせちゃいましょうよ??」
「それ、原稿じゃないから、ほんとヤメテ・・。
書くから、ちゃんと童話を書くから!!」
担当はそれ以上聞く耳を持たず、出て行ってしまった。

いや違う、私は止めなかった。
私のどす黒い思考が言語化アウトプットされた。

レビュー掲示板は沸きに沸いた。
今までの童話から
ぐちゃ、どへぇぇ・・なホラーへと
私の作品が一変したからだ。
沸いたのは作品に対してではない。
私の人間性を暴かんとし、プロファイリングが大喜利になっている。

思考は寸分たがわず使われていた。
私の中のどす黒い物が
どろりと取り出されたのだ。
担当が持っていたのは粗悪品じゃない。
ガチの【ヨミトルくん】だろう。

一体それをどうやって手に入れたのか、
誰の指示なのか、何を狙ってるのか。
そっちのほうが
面白い話になるじゃないか。
へらぁ・・とした変な笑いが止まらない。
どうやらあの担当とは長い付き合いになりそうだ。

シロクマ文芸部
お題「赤い傘」







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