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王家の谷とアブシンベル神殿(2/7,2/8)

2/7
気球は風に吹かれて延期に

旅にトラブルは付きものですが、それがエジプトならなおさらです。 前夜に「風が強くて明日の気球は無理!日程を変えないか?」と連絡が入りました。しかし翌日はアブシンベル神殿に行く予定が入っています。交渉の末、2日後の朝にスライドしてもらうことにしました。

結果的に、これが大正解だったのです。ツアーで一緒になった日本人グループの友人は「帰国直前の明日の朝に乗れることにかける!」と言っていたものの、結局翌日も風で飛ばず、無念のタイムアップとなってしまったようでした。
安全対策が徹底されている証拠ではありますが、ルクソールの気球を狙うなら、スケジュールには絶対に数日のバッファを持たせるプラン設計を強くおすすめします!


08:30  圧倒的なスケールのカルナック神殿

気球の延期により、朝一は東岸のカルナック神殿からスタートしました。 巨大なアメン大神殿のなかでも、やはり「大列柱室」は圧巻の一言に尽きます。134本もの巨柱がそびえ立ち、30メートル近いオベリスクが天を突いています。
見上げるほどの柱の1本1本、そして遥か高い天井にまで、びっしりと精巧なレリーフが刻まれています。重機もない時代、一体どうやってこの巨石を積み上げ、どれほどの年月をかけてこの緻密な彫刻を施したのでしょうか。そしてよくよく見ると、彫刻の奥にわずかに当時の塗料が残っているのを目にすることもできます。数千年も前の塗料が、外の遺跡にこんなに残っていることにも驚きましたし、かつては色鮮やかな神殿が建っていたのかな、と感動しました。

忘れちゃだめなのが、聖なる泉の真横にある「聖なるスカラベ(フンコロガシ)の石像」の周りを、願いを込めて反時計回りに7回まわること。
何回まわったか分からなくなりがちですので、全集中でカウントしてくださいね(笑)。

オベリスク
高いところまでレリーフがあるのが凄すぎる

12:00  ハトシェプスト女王葬祭殿

西岸へ移動し、断崖絶壁を背に堂々と佇むハトシェプスト女王葬祭殿へ向かいました。 長いスロープを登ると、ハトシェプスト女王の顔をしたオシリス神像が出迎えてくれます。女性でありながら「ファラオ(王)」として君臨するため、公的な場では付け髭をつけ、男装していたとされるハトシェプスト女王。神殿のレリーフにも、確かに逞しい男装の姿が刻まれているんです。

見どころは、プント国(現在のソマリア付近)への遠征や交易の様子を描いたレリーフです。少し分かりづらいので、宝探し気分で探してみてください。 そして個人的なハイライトは、聖獣ハトホル(牝牛)の乳を飲む女王のレリーフです。宗教的に神聖な儀式なのですが、現代人の目から見ると「牛乳をものすごい勢いでがぶ飲みしている図」にしか見えなくて、友達と見つけた瞬間、顔を見合わせて思わず吹き出してしまいました笑

写真だと伝わらない…圧倒的スケール
よくよくよくみればいい飲みっぷりの女王がいる

13:00 ランチタイム

ガイドさんに案内(半場強制連行に近い)されたのは、王家の谷の近くにある、レストランでした。お値段は1人650EGP。日本のちょっといいランチより高いです。
「Get your guide、一体どれだけお土産屋や飲食店と裏で繋がっているんだ……」と大人の事情を察しつつも、だがしかし出てきた料理は文句なしに美味しかったです。

  • ショルバト・ボダラーッ:ズッキーニ、人参、ジャガイモがトロトロに溶け込んだ、優しいトマトベースの野菜スープ。これ、日本人みんな好きそう

  • ロズ:茶色の細長いパスタ(ロサマリア)が混ざったライス。お米が日本風のモチモチ食感で、どこかホッとする味です。

  • ババガヌーグ(★私の推し):香ばしい焼き茄子のペーストです。これを先ほどのロズ(ご飯)に乗せて一緒に掻き込むと、スプーンが止まらない美味さでした!

  • ビーフシュキア:牛肉と玉ねぎのグリル。絶妙なスパイス使いで、お肉本来の旨味が引き立っています。

生野菜のサラダの色がすまじい

14:00  王家の谷(ラムセスⅢ・Ⅳ・Ⅵ世の墓)

いよいよ本命、王家の谷へ。
新王国時代のファラオたちが眠る岩窟墓群、「王家の谷」へ足を踏み入れます。入場券ですでに選ばれている3つのお墓に入れるシステムです(ツタンカーメン等はオプション)。

  • ラムセスⅣ世の墓
    最初に向かったのはラムセスⅣ世の墓です。ここは何と言っても、通路を最奥部まで進んだ先に現れる「巨大な石棺」が有名です。 人間の身長の2倍はあろうかという、天井に届きそうなほど巨大な花崗岩の棺がドスンと鎮座している光景は、その圧倒的な質量だけで見る者を気圧する迫力があります。

  • ラムセスⅥ世の墓
    続いて王家の谷のなかでも屈指の美しさを誇ると名高いラムセスⅥ世の墓へ。見どころは天井一面に広がる、コバルトブルーで描かれた天空の女神ヌトの「夜の書」が言葉を失う美しさです。

  • ラムセスⅢ世の墓
    中に入って驚いたのは、その構造のユニークさと壁画の保存状態の素晴らしさでした。とにかく回廊(通路)が奥へ奥へと長く続いており、その両壁には、当時の職人たちが魂を込めて彫り上げたレリーフが文字通り「ズラーッ」と途切れることなく描かれています。
    驚くべきは、3つの墓のなかでレリーフの発色が1番鮮烈に残っているように感じられた点です。 数千年前の人間が調合し、筆で塗った赤や黄色、青といった色彩が、まるで昨日描かれたかのような瑞々しさを保って壁面から浮かび上がってきます。
    ガイドのフセインさんが熱推しする理由にも大納得です。

夜の書

15:00 パフュームショップ

……と、ここからがエジプトツアーの「第二幕」です(笑)。 連れて行かれたのは、2日前のカイロで体験したのと全く同じ流れ、まったく同じ香りの香水瓶ショップでした。違うのはお値段くらいでしょうか。ここは30mlで30EGP。しかもおまけの香水瓶は無しです。 同行していた日本人の女の子たちも2回目のデジャヴに気づいており、全員の心がシンクロ。
「No!」の総意を持って、笑顔で突っぱねることに成功しました。


16:00  「アラバスタ・ミュージアム」

「次はミュージアムだよ」と言われて到着したのは、ただのゴリゴリのお土産ショップでした。

ここで扱っているのは、古代エジプト時代からファラオの彫刻や香水瓶に使われてきた「アラバスタ(雪花石膏)」という天然石の工芸品です。きめが細かく、光を美しく透かすのが特徴の石で、店内にはキャンドルホルダーや神々の石像、ピラミッドの模型などが棚にびっしりと並べられていました。

でもただのお土産屋さんと違っていて笑
店員さんが「うちは市場に出回っている安価なプラスチックの偽物とは違う、すべて手作りです!」と、伝統技術の工程を説明してくれるのですが、その実演が完全に「3分クッキング」スタイルなのです。
①、②、③の職人(?)の前に、すでにその工程まで出来上がった石が準備されています。①の人が形を整えるフリを終えると、②の人がめちゃくちゃダルそうに、やる気のない手つきでコンコンと叩き始め、それが終わると③の人がシャカシャカと磨き始めます。
「絶対にここで作ってないでしょ!」と心の中で激しく突っ込まずにはいられません。

中に入ると、案の定、怒涛の押し売りがスタートしました。 無料のハイビスカスティーで客を足止めし、執拗に商品を勧めてきます。
断っても「じゃあこの小さいサイズは?」とネバーエンディングストーリーが始まります。
最終的に、またもや「私たちは学生でお金が本当にないの!マッジでごめん!」という、悲哀に満ちた全力の財政難アピール戦法でなんとか脱出。
これにて、笑いと涙の王家の谷ツアーは無事(?)終了しました!


16:30 スーパー「Kheir Zaman」

ホテルの指定場所まで車で送ってもらい、最後は地元のスーパーへ。 ここはコーヒーの品揃えがとにかく豊富でした。値札がないので、店員さんにバーコードリーダーでポチポチ確認してもらいながら買い物を進めます。

衝撃だったのは、マンゴージュースが6EGP(約18円)だったことです。爆安なのに信じられないほど濃厚で美味でした。本当はザクロジュースが本命でしたが、マンゴーで大満足です。
お土産には、エジプト産のカルダモン入りエジプトコーヒーを購入しました。焙煎度合い(浅・中・深)だけでなく、カルダモンの量まで3段階(普通・多め・エキストラ)から選べる本格派!すごい!

2/8

アブシンベル神殿へ早朝出発

朝4:30、暗闇の中でお迎えの車が到着しました。エジプト旅も5日目になると、この早寝早起きルーティンに身体がすっかり馴染み、何の苦痛も感じなくなっている自分に驚きます。

今回のアブシンベル神殿は、エジプトに行くなら「絶対に外せない」と熱望していた聖地でした。しかし、ネックとなるのがそのアクセスです。 ルクソールからアスワンへ国内線で飛ぶルートも検討しましたが、直行便がほとんどなくカイロ経由になるため大タイムロス。
国内線とはいえ数時間前の空港入りが必要で、アスワンに着いてからもさらに車で4時間かかります。片道の移動時間は優に6時間を超えてしまいます。

「それなら、早朝にルクソールを出発して、車でそのまま6時間かけて行った方が合理的では?」という結論に至りました。ホテルから車に乗ってしまえば、あとは寝ているだけで目的地に連れて行ってくれますし、費用も飛行機よりずっと経済的です。 唯一の懸念は、「往復12時間の車移動は過酷ではないか」「せっかく6時間かけて行くのに、現地滞在が2時間だけで満足できるのか」という点でした。

しかし、蓋を開けてみれば、この日帰りツアーを選択したのは大・正・解だったのです!

やってきたのは、想像していた乗り合いのミニバンではなく、革シートのプライベートな車。乗客は私たち2人だけで、専属ドライバーのジョージさんが貸切状態でアブシンベルまで案内してくれました。
道中のお手洗い休憩もしっかり配慮してくれ、途中のサービスエリアでは、朝の澄んだ空気の中でエスプレッソやコーヒーを片手にスナップを楽しむ優雅なひとときも。

何より、ドライバーのジョージのマシンガントークが最高に面白いのです! 私たちが寝ている朝6時頃までは、起こさないようにそっと静かに運転してくれ、私たちが目を覚ますと同時に、外のビューポイントを熱心に解説してくれました。
そして、窓の外にロバが出現するたびに、
「見て!あれはエジプト版のフェラーリだよ!!」 と何度も車内に響き渡る声で叫んでくれるんです笑。

ジョージの快適な運転と「フェラーリ」の連呼に笑っているうちに、なんと午前10時にはアブシンベルに到着してしまいました。6時間時間の移動への恐怖は何だったのかと思うほど、あっという間の快適なドライブでした。


ガイドさんと合流

アブシンベル神殿に到着し、まずは公式ガイドのアハメドさんと合流。 しかし、エジプトの遺跡周辺には、ガイドとは別に自称「アシスタントガイド」と名乗る謎の男性たちが大勢徘徊しています。

アハメドさんからの解説が終わり、自由行動になった途端、私たちと同い年だという双子の男性2人組に声をかけられました。
「新しい現地の友達ができた!」と無邪気に喜んだ私たちは、インスタグラムを交換し、一緒に神殿をまわることに。
でも、彼らは頼んでもいないのに写真をたくさん撮ってくれたり、私たちが神殿内の観光を終えるのをじっと待っていたりしたんです。
「……あ、これ、後で絶対にチップを要求されるパターンだ」と、徐々に不穏な空気を察し始めました。

彼らはドライバーのジョージと合流する場所まで、ぴったりと後ろに張り付いてきました。
「もうこれはチップを払うしかないか……」と半分諦めかけたその時、前方から私たちのヒーロー、ジョージが現れました。

「ハビビーーー!!(アラビア語で『心の友よ!』の意味)」

大音量でそう叫びながら近づいてきたジョージは、まるでジャイアンのような圧倒的包容力(と無言の圧力)で、私たちの前に立ちはだかり、双子の男たちからガードしてくれたのです(笑)。
おかげで、彼らにチップを支払うことなく、スマートにお別れすることができました。

(……が、後日談があります。交換したインスタを開くと、彼らからメッセージの嵐が届いていました。
「How are u now?(今何してる?)」
「Now, I want to see you ❤️(今すぐ君に会いたい)」
……やかましいわ!とツッコミを入れずにはいられません(笑)。)

エジプトで出会った男性とSNSやWhatsAppを交換すると、100%の確率で「Where u now? How are u?」と、熱烈なメッセージが届きます。
同行した友人は、気づけば終始4〜5人のエジプト人と同時にやり取りをする羽目になっており、本当に大変そうでした。
気軽に「ご飯に行こう」と誘われますが、身元の保証や人柄が心から信頼できる場合を除いては、きっぱりとお断りするのが賢明です。(1日目のアリーは安心できる人でした)


圧倒的なアブシンベル大神殿

さあ、いよいよ本命のアブシンベル神殿とのご対面です! 入り口から進むと、まず見えてくるのはアブシンベル大神殿と小神殿の「後ろ側」、いわばお尻の部分です。そこからぐるりと回り込んで正面に立った瞬間、その想像を絶するスケールに、文字通り口をあんぐりと開けて固まってしまいました。あまりにも、でっかすぎます……!

大神殿の正面にそびえ立つ4体の巨像は、すべて自分大好き!自己愛の塊とも言われるファラオ「ラムセス2世」です。
面白いことに、左から右に向かって25歳から97歳まで、彼が老いていく姿が表現されています。ガイドさん曰く、年齢を重ねるにつれて「お鼻が太く立派になっていく」ことで描き分けられているそうです。

また、左から2番目のラムセス2世像は、頭部が崩落して足元に転がっています。これは昔の地震によるものですが、1960年代にダム建設に伴う世界的なユネスコの移築プロジェクトが行われた際、「崩壊した歴史も含めて価値がある」として、あえて修復されずにそのままの姿で現代に遺されました。

さらにこの神殿は、年に2回(2月22日と10月22日のファラオの記念日)、日の出の最初の光が、神殿の入り口から60メートル奥にある「至聖所」の神像までまっすぐ届くように緻密に設計されています。その「光の奇跡」の日は、世界中から観光客が押し寄せ、凄まじい混雑になるそうです。

そして、この神殿を語る上で絶対に外せないのが、「ここが世界遺産の始まりの地である」ということ。

エジプト政府が近代化のために「アスワン・ハイ・ダム」の建設を計画したのですが、ダムができるとこのアブシンベル神殿をはじめとする貴重なヌビア遺跡群が、完全に水没してしまうことが発覚したのです。

「古代の偉大な遺産を沈めてはならない!」と立ち上がったユネスコは、世界中に寄付と協力を呼びかけました。国々が総額3,600万ドルを投じて、遺跡を細かく解体し、元の位置より約60メートル高い安全な丘へとそっくりそのまま引っ越しさせるという、人類史上空前の「移築プロジェクト」が成功したのです。

「人類共通の宝は、国境を越えて世界全体で守るべきだ」
この引っ越し大作戦の成功によって生まれた強い思想こそが、のちの「世界遺産条約」へと繋がり、世界遺産制度が誕生することになりました。つまり、アブシンベル神殿が水没の危機に瀕していなければ、今の世界遺産はこの世に存在していなかったかもしれないのです。

お鼻が若干小さい
至聖所。この日は全体が照らされてる
若干お鼻が大きい
ぜーんぶラムセス2世

そんなこんなでたった2時間の見学時間も、その濃密さに大満足のひとときとなりました!


12:00 絶品タヒニとステーキ

感動の余韻に浸りながら、ランチは近くのレストラン「New Abu Simbel Restaurant」へ。

ここで出てきたタヒニ(生ゴマのペースト)が、びっくりするほど美味しかったのです!エジプトの伝統的なパン「アエーシ」との相性が抜群で、ちぎっては付け、ちぎっては付け、手が止まりません。

  • ショルバト・リサーン・アスフール:「スズメの舌」という意味を持つ、棒状の短いパスタが入ったチキンスープです。コンソメ仕立てのミネストローネに似た、コクのある優しいお味で、旅の疲れが吹き飛ぶ美味しさでした。

  • 牛肉のステーキ:名前は分かりませんでしたが、ジューシーで食べ応えがあり、大満足のエネルギー補給となりました。

タヒニが恋しい

ホテルへ帰路につく

往復12時間という長距離を、安全に、そして最高に楽しく盛り上げてくれたジョージには感謝しかありません。

しかし、この旅で今でも唯一後悔しているのが、「ジョージに十分なチップを渡せなかったこと」です。

翌日はエジプト最終日だったため、手元のエジプトポンドはほぼ底をついていました。かといって、財布にあるユーロやドルは今後の他国での旅を考えると使いたくない……という、各国旅の終盤特有の「現金カツカツ問題」に直面してしまったのです。

結局、持ち合わせのポンドをかき集めて渡すのが精一杯で、彼の素晴らしい仕事ぶりには見合わない少額になってしまいました。双子からジャイアンばりの男気で守ってくれたジョージに、もっと「ハビビー!」の気持ちを形にして返したかったです……!





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