山陰の旅は 松江へ ②
出雲から 小雨まじりの宍道湖を横目に 松江まで。長く 地図上で思いを馳せていた松江は 城の周りを流れる堀川の舟遊びの緩やかと 武家屋敷が かつての面影を色濃く残す。活気もありつつ、何とも風情のある街だ。
遥か昔の時ですが 息子を連れて来訪した 島崎藤村が したためる
「いっそ松江の人にでも なって
しまおうか」
その気持ち 今を生きる私にも よくわかる。時が流れても そこには 旅人の心を揺らすものが あるのだ。

☆ 小泉八雲 旧居
瓦屋根と外障子、軒先に玉砂利の庭の小さ過ぎる日本家屋。ギリシャの母とアイルランドの父を持つ 欧米育ちの彼が、住んでいたかった家だ。
外国人に寄せるものなどない 不便な地方の街で、さすがにハーンさん "変わり者"としか 言いようがない。

観光バスの観光客が 溢れていた

ハーンさん
☆ 小泉八雲 記念館
旧居のすぐ隣にある。こちらは 朝ドラ「ばけばけ」が 始まる情報をかなり前にキャッチ?観光客の急増を予測して、市をあげての 素早いリニューアル。バリアフリーも 展示ルートもバッチリ、予想通り 大勢の老若男女の観光客が 小泉八雲の文学を、
彼の選んだ家族との暮らしぶりを
その世界を満喫していた。

彼の育った アイルランド調

怪談や出版物、えっ こんなにある?
☆ 皆美館
松江の宿は あまり選択肢がなく、文豪や著名人が多く泊まるという 老舗宿に。景観が素晴らしく、とにかく食べたかった色鮮やかな"鯛めし"があると言うので 即決した。
豪華な設備もない木造の宿ですが、快適な館内に 数多くの美術品が飾ってあり、宿に豊かさを感じます。


◎ 部屋
親類の家に招かれたような、ソファーにハワイアンキルトのクッションも御愛嬌の 広々した部屋でした。窓からの 松江の風景がとにかく和む。

⚫︎ ウェルカム菓子
あれこれ説明してくれる部屋係の女性も 心なしかワクワク顔で
「ええと、それで!」
テーブル上の陶箱の蓋を パッと開けると、この日の特別な生菓子が。
「おおっ!」
「職人の腕が 試されますね!」
旅の途中で、ハロウィンをすっかり忘れてました。

年に2日だけ作る レアな生菓子
◎ 松江の朝

窓から 松江の朝景

これが 絶対食べたかった
◎ 談話室 「古都里」
旅の解放感からか、文豪も画家も皆 楽しげに描いているのだ。岡本太郎や梅原龍三郎などは わかるが、
松尾芭蕉に 芥川龍之介や 与謝野晶子・鉄幹夫婦?そりゃ古いし、そりゃすごい。この豪華な旅人ラインナップは 地味に 必見です。

無造作に展示してある

バーナード・リーチの
描いた宍道湖

でも寛いでる旅先で 頼まれて
着彩までする?この完成度
◎ 売店で 土産
⚫︎ 耳まんぢう
小泉八雲の怪談「耳なし芳一の 耳まんぢう」って、怖すぎる。大体、耳を饅頭にするか?「中から しっとり優しい白あん」って、やめて〜〜

⚫︎ しじみの味噌汁
宍道湖のは大粒で味が濃厚。貝ってコロンと丸くて なんだか可愛い。

⚫︎ しじみせんべい
部屋にあり、つい手が伸びちゃう
「サクサクして 軽くて いいね」

☆ 島根県立美術館
宍道湖の曲形に寄り添い、カーブするような建物。夕焼けが美しい人気スポットの美術館で「北斎展」をしていた。この美術館は 観光客だけでなく、地域の人達も美術鑑賞に大勢 来館していた。夕陽もないし 短時間の予定でしたが、なかなか素敵な展示で、美術館は隅々までじっくり派の夫は 「あと ちょっと」。私にかなり急かされて 時間オーバー。


ヨロケた?マイヨール

宍道湖が 眺められる
☆ 湯町窯
同じ山陰でも 窯ごとに、まるで陶芸の様式が違うのには 驚く。こちらは当時 日本になかった製法で、英国人陶芸家 バーナード・リーチの影響を 強く感じる。西欧の山間で見るような ポッテリした土の厚さで、釉薬が 牧歌的に 表面を光沢させる。
蓋付きエッグメーカーが代表される。オーブンは勿論 、なんと直火が可能。直火で朝食の卵料理って、バーナード本人が 故郷の好物をただ 食べたかっただけだろう。でも ここが英国と日本の民藝の融合なのだ。


ニューウェーブ到来だったと思う

英国風

ムリ ムリ ムリ
陶芸家の妻らしき 華奢な老女が1人だけで、この日は 店を 切り盛り。
私 「黄色で 横長の大皿って ありますか?」
老女 「あら、あったような気がするわ。今日は皆 用事で出ちゃってて やだ困ったわ。私 ちょっと奥を見て探して来るから、待ってて」

「違うかしら?」
あれこれ 奥から出してくれて

決めた「左!」色の黄色を諦めて 八角形の形を優先、焦茶色の鉢に。ピッタリ1万円。高過ぎる買物だけど、旅の思い出に陶器を買って 日常使いするのが好きなのだ。
近隣地図が絵柄の包装紙や ショップカードも なんて可愛い。こんなに小さな窯なのに グラフィックが棟方志功って、贅沢すぎるセンス。
こんなとこで言うのも何ですが、棟方志功って人は ビックリするくらい 惜しげもない。ど近眼で超速彫りの変わり種のオッサンかもしれないが、描いたり彫ったりが もう嬉しくて楽しくて仕方ない人。まさに彼こそ民藝の「神」なのだと 今回ばかりは 唸った。色んな意味で 民藝の多様性や 温かみが充分に満喫できる。
JR山陰本線「玉造温泉駅」から徒歩1分。かなり嬉しいアクセスの良さで、1人旅らしき女性達が この店へと歩いていた。

優しい絵だ
◎ 突然の遭遇
米子の農道で 車を停め 空を仰ぐ
「ありがとう!」
旅先で エールを貰ったみたい。

☆ 足立美術館
「庭を観るならここ!」雑誌やテレビで知っていたが、この遠方の美術館が 私の人生の中にも ご縁があったなんて 嬉しい。連休が始まり バカ高い入館料にもかかわらず、大変な混雑。撮影は不可でしたが、私の大好きな魯山人や 横山大観のコレクション、素晴らしい目利きと財力。その規模に ビックリだ。

◎ 喫茶「 翠」
この旅で 1番の後悔。待ってる外国人家族やグループもいて(海外ガイドブックには "must "マーク ついてるな)時間が足りなくて、こんな素敵な喫茶室が 目の前にあったのに、入れなかったなんて 心底 切ない。
私とした事が…ショック過ぎて もう早くもリベンジしたい。

喫茶店、他にある?

物語のような美しき庭
☆ 回転寿司で蟹三昧
境港は、ベニズワイ蟹の漁獲量が日本1だ。地方は早く閉まる店が多いので、目星をつけていた店で 旅のラストは 愛しい蟹を(特に私は)蟹だけを たんまり食す。



夜は もう真っ暗で
☆ 米子鬼太郎空港ロビー
時間に余裕はあるのに「早く 早く」謎に慌てさせる夫を 振り切り土産を買う。こじんまりした空港のロビーは 2店舗のみ、なので 何も迷わない。野菜や魚介類は買えなかったが、練り物を貪るように購入。

宿で質問した 不思議テイスト
⚫︎ 長いも蒲鉾
スライスしたら 面白かった。日の丸みたいな 団扇みたいな。

シンプルは 力強い!
⚫︎ しじみラーメン

⚫︎ 鬼太郎どらやき(栗入り)
つい買ってしまった。知らなかったけど どら焼きの鬼太郎の顔が全部 違う。さすが米子鬼太郎空港だけあって、鬼太郎のビジュアルにはこだわるわ。水木しげるにリスペクト?




最終便で 帰京。
それからの家族や友人達とのやりとりで、山陰にまつわる色々な話が沸いて、他の人の旅や 親戚とのエピソードまで加わり、私達の山陰の思い出 自体がどんどん大きく 濃さを増して より大切なものになって行く。
知らない土地で 五感が研ぎ澄まされて行く。心がぐんぐん養分を吸収していく。また 旅に出たいし、友人達にもぜひ出かけて欲しい。人が旅人になれる時間って きっと僅かなのだけど、人生の中で 貴重な時間なんだよなぁと 今 しみじみ思う。
