【創作大賞2026感想】ゆらり先生による『ゴールド ―境界の国―』
こんにちは、ぽんにむです。
現在、自分も創作大賞2026に参加している身なので、お勉強も兼ねてファンタジー小説部門の作品をいろいろ読んでいます。
その中で、また素敵な作品に出会ったので、僭越ながらご紹介させていただきます。
※この記事は、あくまで一読者としての感想です。
※物語終盤の内容にも少し触れます。
今回読ませていただいたのは、創作大賞2026ファンタジー小説部門の応募作品、ゆらり先生による
『ゴールド ―境界の国―』
です。
1.色で人生が決まる世界
設定が分かりやすく明快で好きでした。
この作品の世界では、生まれた子どもは三十日以内に国へ預けられ、十五歳で「色」を授かり、二十歳で役割が決まります。
森、水、炎、月、光。
五つの国があり、それぞれに役割がある。
人は生まれた家や身分ではなく、適性によって未来を与えられる。
一見すると、とても平等で合理的な制度です。
でも、読んでいくうちに、その「平等」が少しずつ怖くなってくるんですよね。
親が子どもを育てない。
国が子どもを育てる。
役割は与えられる。
人生は選ぶものではなく、定義されるものになっている。
このユートピアに見せかけたディストピアの世界観、スキです。
派手な魔法や戦闘で押すタイプのファンタジーではなく、制度そのものが物語の中心にあるタイプのファンタジーでした。
2.「ゴールド」という存在が良い
タイトルにもなっている「ゴールド」という存在も、とても印象的でした。
主人公のノアは、本来なら森、水、炎、月、光のいずれかに分類されるはずの儀式で、どの色にも定まりません。
そこで彼は「ゴールド」と呼ばれる存在になります。
ここで面白いのが、ゴールドが単純な「選ばれし特別な主人公」ではないところ。
ゴールドは、祝福された英雄というより、世界の分類からこぼれた存在。
どの国にも属さず、世界の揺れや偏りを観測する者。
つまり、制度の中にいながら、制度の外側を見る観測者の役割なんです。
なので我々読者と同じ視点で物語が進むんです。
これがめちゃくちゃ読みやすい要因の一つかと。
どこにも属せないからこそ、すべてを見る。
分類されなかったからこそ、分類された人々の痛みに気づける。
この設定が、作品全体のテーマとすごく噛み合ってたと思います。
3.制度と感情のぶつかり方
この作品で特に好きだったのは、制度が完全悪として描かれていないところです。
子どもを国が育てる制度も、五つの国に人を分ける制度も、完全な悪として作られたものではありません。
むしろ最初は、誰も取り残さないための仕組みだったのだと思います。
生まれた場所で人生が決まらないように、
学べる人と学べない人が分かれないように、
全員に平等な機会を与えるために…
でも仕組みが完成されていくほど、そこからこぼれ落ちる個人の感情が見えなくなる。
親に会いたい。
家族と暮らしたい。
大切な人のそばにいたい。
最後にいる場所くらい、自分で選びたい。
そういう、人として当たり前の願いが、制度の中では「処理すべき揺れ」になり蓋をされてしまう。
ここがかなりぽんにむの前頭葉に刺さりました。
4.印象に残った場面
一番印象に残ったのは、終盤でノアがゴールド権限を継承し、最初の命令を出す場面です。
ノアは、こう言います。
「子どもは、親が育てる」
「生き方は、自分で選べるべきです」
単に「制度をぶっ壊すぞ!」ではないんですよね。
十五の儀式も、二十の儀式も、適性も役割も否定はしない。
けれど、生き方だけは自分で選べるべきだと言う。
王道ですが気持ち良いですよね。
全部を破壊するのではなく、制度の中で失われていたものを取り戻そうとしている。
ノアがこれまで五つの国を巡り、いろいろな人の痛みや願いを見てきたからこそ出せる答えだと思いました。
5.推しキャラ
主人公ノアを持ち上げましたが、推しキャラは「アトラス」です。
最初はかなり冷たい管理者として登場します。
ノアに対しても、ゴールドを「特別な才能」ではなく「運用」や「制御権限」として説明する人物です。
めちゃくちゃディストピア側の人間。
でも物語が進むにつれて、彼もまた制度を支える側でありながら、その制度に縛られていた人間なのだと分かってきます。
特に第8話「春の治療室」がスキ。
世界を支えることだけを考えてきたアトラスが、ユリアと出会い、初めて「国」や「制度」ではなく、目の前の一人を気にかけるようになる。
「世界の均衡ならすぐ答えられる。
でも今は違う。」
普段冷たいキャラの心情変化は読者の感情に刺さるのではないでしょうか。
アトラスは大きく感情を爆発させるタイプではありませんが静かに、主人公らに巻き込まれ変わっていく。
世界を守る人から、一人を守りたい人へ変わっていく。
そこがめちゃくちゃ好きでした。
あと、「休息は必要だ」「効率は悪くない」みたいな言い方で誘いっぽいことをするの、かなり不器用で良かったです。
6.自分の作品と少しだけ
少しだけ、自分の作品のことにも触れさせてください。
自分は『転生監査機関《RAC》』という作品を書いています。
RACも、どちらかというと「制度」や「管理する側」を描く物語です。
だからこそ、『ゴールド ―境界の国―』の「世界を維持するための制度」と「その中で生きる人の心」の描き方には、かなり刺激を受けました。
RACは監査や執行を通して秩序を守る物語ですが、『ゴールド』は、制度の中で失われたつながりを取り戻していく物語だと感じました。
同じファンタジーでも、制度との向き合い方が全然違う。
そこがとても面白かったです。
7.まとめ
総じて、ゆらり先生作『ゴールド ―境界の国―』は、とても素敵なファンタジー作品でした。
というか、シンプルにタイトルが好き。
私はこういうシンプルでありつつ、作品の顔となっているタイトルが大好きです。
派手なバトルで魅せる作品ではなく、世界の仕組みと人の心で読ませる作品だとも思いました。
個人的には、「平等」と「自由」の扱い方がかなり印象に残ります。
平等な制度があるからこそ救われる人もいる。
でも、制度だけでは救えない心もある。
その間に立つ唯一無二の存在が「ゴールド」なのだと思います。
創作大賞2026のファンタジー小説部門を追っている方には、ぜひ一度読んでみてほしいなと思いました。
こういう作品に出会えるから、他の方の創作を読むのは楽しいですね。
自分ももっと頑張ろうと思いました。
ぽんにむでした。
さいなら〜
①ゆらり先生
②作品はこちら
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