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夏の越後湯沢温泉、女ひとり旅 ~なんもねえ のが逆にいい (越後)湯沢かな~

この文章について


はじめまして、NISA貧乏(仮)会社員の雪男(OL)です。
この文章は、NISA貧乏になりたい平凡なOLによる旅記録です。さして節約はできておりませんが、NISAに資金をつぎ込み毎月家計が自転車操業になっている、国内旅行が趣味のNISA貧乏(仮)女が、金に苦しみながら全国津々浦々を巡る旅エッセイです。


今回の旅中、ずっと頭の中を渦巻いていた一句がある。 

 
 なんもねえ のが逆にいい 湯沢かな
 

 夏の湯沢はなんもねえ、ほんとになんもねえのである。
 スキー場へ向かうロープウェイはあるが、スキー場は(雪がないので)ない。夏にはその山頂にも、どこにでもあるようなカフェや足湯しかない。景色も近くのアルペンルートに見劣りする。新潟といえば、日本海といえばの海産物も、内陸側なのでぱっとしない。温泉の泉質も、周辺の草津温泉などに比べるとやはり劣る。湯畑のような見ごたえのある観光地もなく、駅前に物寂しく足湯がぽつん、と備えられているだけである。

 雪男は2026年8月某日、まとまった休みをとれたため、越後湯沢へ向かった。越後湯沢を目的地として選んだ理由は「東京から在来線で安く行ける旅先であること」「爆弾おにぎりを食べてみたかったこと」の2点である。  
 下調べはほぼなし。越後湯沢温泉という温泉地があり、どうやらJRを乗り継いでいくと在来線のみでたどり着けそうな場所であり、爆弾おにぎりが売っている、というだけの情報で、グーグルマップを頼り、早朝5時前に家をでた。
 京浜東北線から上野駅で乗り換え、上越線で高崎駅へ向かい、水上駅にたどり着いたまではよかった。

金がねえ

 トラブル発生である、金がねえ。水上駅から長岡行きの電車に乗り換える際、恐ろしいアナウンスが頭上に響いた。

「この先はICカードが利用できない区間となっております。ICカードをご利用のお客様は、車内で現金にてご精算ください」

!!!???!?

そうです、交通費節約民は一度は落とされたことのある罠、地方のJRによる「ICカードキャンセル界隈(区域)」です…

くそう!!ICには880円しかないし、現金は2200円しかもってねえ!!
 震える手で急いでクレカ引き落とし用の口座を確認すると、そこには1万円だけ残っていた。

よかった!!!ATMで現金を下ろそう!!

と思って水上駅を見渡すが、コンビニなんてものはどこにもねえ!!!ド田舎!!!(失礼)

詰んだ……これにて終わりです、ひとり旅、水上駅にて終了しました…

てなわけで、たどり着きもしていないから「越後湯沢にはなにもない」んですよ、HAHA!!

というわけでもなく…
普通に(?)長岡駅行きの電車にのって、厚かましくも近くにいたお姉さんからPayPayと現金を交換してもらい、事なきを得ました…
よかった、クレカ口座にPayPay銀行使ってて。実はPayPayにも残高1000円くらいしかなかったので、その場でチャージしてお姉さんにお金をお返ししたんですよね笑

大学生の頃の自分なら、たぶん、高崎駅までキセル乗車でとんぼ返りして、現金を下ろしてから水上駅に戻っただろうな。成長したな、自分(?)となぞに自己成長を誇りつつ、
そして金のETFを売ったお金をPayPay銀行に移しかえ、ついでに自分の資産をニマニマ見つめていたら、
かの有名な「国境の長いトンネル」なんてものはとうに過ぎ去り、越後湯沢温泉駅に到着したのである。(あーあ、、)

いざ、利き酒 at ぽんしゅ館!

ここからは順調!越後湯沢駅の改札をでると、伊勢丹の地下のように大量のお土産コーナーがずらっと一面に広がり、そこを進んだ先に、ぽんしゅ館が見えた。入り口には酔っぱらいサラリーマンのオブジェが置いてある。

ぽんしゅ館入り口 酔っぱらいリーマン

 ぽんしゅ館の入り口を入ってすぐ右手に、利き酒コーナーがある。1000円で5枚コインとお猪口が貸し出され、大量の日本酒と数種類の梅酒、ワイン、発泡酒から好きなお酒が選べる。通常は1コイン1お猪口分、機械からお酒が注がれるのだが、お高いお酒はコイン2枚以上で1お猪口分しか飲めないことにご注意を!

ぽんしゅ館のお猪口!お土産コーナーで買えます!!

 貧乏性な私は、1コインでお猪口1杯分飲める日本酒のみを選択し、越後桜、ほんのりチーズの香りの日本酒(名前を忘れた)、リンゴの香りの日本酒(〃)などなど、5種類の日本酒を利き酒した。
 そのなかで私の好みにドンピシャだったのが、「雪男」である!!
 甘すぎないスッキリした飲み口、いくら飲んでも、気持ち悪くならない!
 日本酒って、最初の1杯はおいしいのだが、だんだんあのお米の甘さが気持ち悪くなってきて、気分が悪くなってしまうので、私はワインかビールを好むのだが、雪男はくどい甘味がなく、ぐいぐいいけた。
しかし、午前10時前にしてほろよいとは、なんとも贅沢である。

爆弾おにぎりにかぶりつけ!

つづいての目的地は、爆弾おにぎりだ。2合分の白米の塊。でかすぎる。韓国アイドルの1週間分の食事が1つのおにぎりで完結しているようなデカさ。

超巨大、爆弾おにぎり(米2合)

おにぎりの具材は高菜を選択。新潟の米を使ったおにぎりなんて、不味くする方が才能があると思うが、最高においしかった。もちもちの白米、韓国海苔風にちょっと塩味がかった海苔、ピリッと辛い高菜。2合分の米だが、ペロリである

越後湯沢に来たことを後悔する

腹一杯、ちょっとほろ酔い。最高の気分で、越後湯沢駅を出て、温泉街の散策に向かった。まずは西口方面から。

駅のロータリーの前には、いかにも町営・市営設備といった趣の足湯があった。甲高の足なら、足の甲まで浸かりきらないのでは?という水位の足湯に足を突っ込むと、冷たい。
「冷やし足湯、始めました」とな。ふーん、と思いつつ、10分程度、冷水に足を浸す。AM10:45。

つづいて向かったのが、越後湯沢観光では必ずといっていいほどおすすめされている観光スポット、「湯沢高原ロープウェイ」へ向かう。

5分もたたぬうちに、ロープウェイ乗り口まで到着する。そこで山頂までの料金を確認すると、なななんと、3500円。高い!

Google Mapのクチコミを確認すると、山頂にはカフェや足湯があるそうな。うーん…越後湯沢駅周辺の風景って、遠景でみてもたいしたもんじゃなさそうだし、カフェなんて地上にもあるし、足湯もさっき入った。3500円払う価値はなさそうだな、と判断し、ロープウェイは諦めた。ケチである。

ロープウェイ以外に、徒歩圏内でいける観光スポットをネットでリサーチする。ない。なんもない。
かろうじて、名物「越後るうろ」(ロールケーキ)を売っているカフェや、へぎそばのお店、日本酒のお風呂や町営の日帰り風呂などは存在するが、腹いっぱい、宿にいけば温泉がある状態では、何もそそられない。

特集記事があてにならんなら、自分で探すまでよ。ロープウェイの施設を出て、南へ、北へ行けど、なにもない。
祈るように駅の東口側のエリアも散策するが、なにもない。寂れた商店街が、50メートルほどつづくのみである。
かろうじて、川端康成の「雪国館」という文学館は存在するが、がらがらで営業しているかもわからない。

東西南北なんもねえ、という悲しすぎる事実に気づいたのがAM11:30。ホテルのチェックインまで3時間半もあった。


なんもねえ

なにもすることがないので、一旦駅に戻って、お土産を物色する。ぽんしゅ館で利き酒した記憶を頼りに、お土産と宿で楽しむ用の日本酒を買い込む。酒のつまみになりそうな、越後の米菓子を買う。PM12:30。
荷物ははち切れんばかりだが、やはりなんもすることねえ。腹いっぱいなので、コーヒーを買って、駅の端のベンチで本を読みつつ時間を過ごす。
「なんのために来たんかな…暑いし、日焼けするし、これやったら東京でジムに行ってた方がよかったかも…」という感情が湧いてくる。
「あーあ、越後湯沢じゃなくて、他の観光地にしておくんだったな…」


Vacationの語源を考える

ぼーっとしてると、眠くなってくる。ちょっと寝る。お土産用に買った、日本酒ブラウニーを食べる、おいしすぎて買い足しに行く。コーヒーを飲む、うまい。越後湯沢駅周辺の熊出情報をチェックする、こわい。

ぼけーっとベンチに座っていると、中学の頃に読んだ、長らく思い出したこともない小説のタイトルが頭に浮かぶ。『Casual Vacancy』この本は、高校の頃に、邦題に戸惑った記憶がある。
「お気楽なバカンス」だと思って、英語で読み始めると、内容は全くお気楽でもないし、バカンスでもなかった。スリラー小説だったのである。

邦題は「突然の空席」であった。Casual Vacncyを和訳する際、確かに「突然の空席」が最適なのであろうが、私のなかでは「一時的な空白」というイメージでこの本を読み進めてしまった。

越後湯沢までの電車内では、仕事での失敗が何度も脳内をリフレインし、お金の心配をし、今後FIREが達成できるか、計画どおりの年齢にFIREできるか、そんなことをぐるぐると思い悩んでいた。

越後湯沢についてからは、明日どうやって帰ろうか、どうやって「旅費のもとをとるぐらい」楽しめるか、あくせくしていた。

でも、なにもないんだから、駅のベンチでゆっくりコーヒーでも飲んでいるほか、仕方がない。私の意識が、突如としてCasual Vacancy、突然の空白、状態となる。久しぶりに、精神も脳も休まった気がした。

そのとき、ふと思った。
ああ、Vacation って、「娯楽のための休暇」とか、「バカンス旅行」とかいう意味じゃなく、「日常に挟まれた空白」という意味なんだろう、と気づいた。
改めてネットで調べてみると、Vacanceの語源は、「空にする、自由にする」という意味を持つラテン語の「vacare」にあった。

休みを無駄にしまい、と予定を詰め込んで、子供に有意義な絵日記を書かせるために奮闘することが「バカンス」じゃない。
旅行に行ったからには、巡れる観光地はすべて見て回ろうと鼻息あらくすることが「バカンス」じゃない。

バカンスは、休暇は「なんもねえ(=空白)」ものであって、ディズニーランドにいって「やりたいことが多すぎて、やりきれない」のが理想的な姿なのではなく、なんもねえなあ、とぼけーと空を眺めるのが、理想といえるのかもしれない。


その後、宿にチェックインして、部屋にはいるが特筆すべきものはなにもない。温泉にはいるが、泉質等、特筆すべきものはなにもない。熊出没の危険もあり、夜ごはんは晩酌とつまみのみで終わらせたが、日本酒がうますぎたこと以外、特段…なにもない。


カップ酒の雪男とお猪口


なんもなかった、それがよかった、越後湯沢

越後湯沢旅を総括しよう。

夏の越後湯沢はなんもなかった。
でもそれがよかった。

雪男はおいしかった。感動して、雪男をアカウント名にするぐらいにはうまかったが、全国一ウマい日本酒として友人に紹介するほどのインパクトはない。
爆弾おにぎりもうまかった。でも、普通サイズのおにぎりであれば、あそこまでの話題性やインパクトもなかったであろう。
ロープウェイも、スキー場なくして3500円を払うほどの魅力はない。
温泉街も、寂れているし、どこにでもある温泉街、といった感じで、散策のしがいがない。

でも、なにもないからこそ、なにもできない。なにもできないからこそ、身も心もゆっくりできる。

それが夏の越後湯沢の楽しみ方である、と私は思う。
これにて完。

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