もうすぐ60歳、マンガに号泣した夜
遠くなった“映画館”
気づけば、もう何年も映画館に行っていない。話題の映画がテレビやネットで流れていても、見たいと思わなくなった。
「人生、もっと楽しんだほうがいいですよ」
30代の同僚に、そう言われてしまった。
そんなに私は「楽しんでいない人」に見えるのか・・・。もうすぐ60歳になるというのに。
同僚が13回も観た『鬼滅の刃』
その同僚は、映画館で『鬼滅の刃』を13回も観たという。アニメやマンガが大好きなのだ。
「どうして何度も観るの?」と聞くと、好きなキャラクターをじっくり追いかけたり、人間関係や色彩の美しさを味わったり、ネットで考察を読んでから検証したりするのだそうだ。
ひと通り満足できたら、映画を観ている人たちを観察するという。
「老夫婦が感動して泣いてるのを見ると、こっちまで涙が出るんですよー」と楽しそうに話してくれた。
へーー!そんな楽しみ方があるのか。
仕事にも現れる、彼女の人柄
彼女は、デザイン事務所から転職してきた。前職での長時間労働は苦ではなかったが、人間関係が嫌で辞めたそうだ。
どんなにクライアントが無理を言ってきても、締め切りに余裕を持たせて仕上げてくれる。依頼した内容+αのデザインを提案してくれる彼女に、私の仕事は支えられていた。
はじめての『鬼滅の刃』
そんな彼女に刺激されて、私は甥っ子から『鬼滅の刃』を全巻借りてきた。「今さら!」と笑われつつ、ページを開く。
マンガを手に取るのも久しぶりだ。はじめは目がチカチカして読みづらかった。だんだんやめられなくなって、明け方3時過ぎまで読みつづけてしまった。最後はボロボロ涙がでた。しゃっくりがでるほど号泣した。
登場人物たちが、すぐ近くにいるような気がして泣いたり笑ったり。感情があっちこっちに動いて忙しく目も疲れたが、これが"没入感"というのか、物語の中にどっぷりはまっていく体験は心地よかった。
次は映画館で
もうひとつよかったのは、給湯室で『鬼滅の刃』の感想を彼女に話せたこと。遅ればせながらの感動を共有できたことがうれしかった。彼女の推しだというキャラクターの魅力は、正直最後までピンとこなかったけれど。
彼女は、別の新しいマンガもおすすめしてくれた。近々アニメ映画になる予定だという。
次は、映画館でその作品を観たい。
いくつになっても、新しい物語に足を踏み入れていくのは楽しい。残りの人生の楽しみ方を、彼女に教えてもらった気がした。
