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できるだろおじさん

”できるだろおじさん”をご存じだろうか?

できるだろおじさんとは、自分ができたことは部下にもできるはずだと考え、悪意も悪気も一切なく部下にハードワークを課して潰してしまうおじさんのことを指す。

厄介なのは、彼らが心から部下のことを思って、愛と情熱で彼らを追い込んでしまっているという点だ。

優秀やプレイヤーが優秀な指導者になれるとは限らない、ということは多くの人が知るところだろう。

営業成績トップだった人が管理職になった途端、部下が次々と辞めていく。現役時代に輝かしい成績を残した選手が監督になると、チームが崩壊する。技術力が抜群だったエンジニアがリーダーになると、プロジェクトが炎上する。

そういった話は枚挙にいとまがない。しかし、なぜそうなってしまうのだろうか?

その原因は実はシンプルだ。それは結果を出した人の中には、自身の才能や環境に無自覚な人が一定数いるからだ。

彼らは自分が成功した理由を「努力したから」「工夫したから」「諦めなかったから」と認識している。もちろん、それも事実だろう。しかし、その努力や工夫が実を結んだ背景には、本人が気づいていない才能や恵まれた環境があることが多い。

そして、そういった無自覚な成功者が部下を持つと悲劇が起きてしまう。

「こいつならこのぐらいはできる、できないのは今まで発破をかけてくれる上司に出会えてこなかったこいつの不幸だ。俺がこいつを才能に見合った凄い奴に育ててやるぞ」

そんな熱いパッションで、見てくれほど才能には恵まれているわけではない部下を追い込んでいってしまう。

特にこの傾向が強いのが、一見してわかるハンデを持って生まれ、それを補う素質に恵まれて成功した人だ。

生まれが貧しかった。体格が小さかった。学歴がなかった。容姿に恵まれなかった。

こういった「目に見えるハンデ」を乗り越えて成功した人は、自分の成功を100%努力の結果だと信じやすい。なぜなら、彼らは誰の目に見ても明らかな逆境を背負っていたからだ。

「俺は貧乏な家に生まれたけど、努力して這い上がった」「俺は体が小さかったけど、工夫して結果を出した」「コネも何もなかったけど、必死に人とかかわって今の人脈を作り上げてきた」

彼らの言い分は正しい。確かに努力したし、工夫もした。しかし彼らが気づいていないのは、そのハンデを補って余りある別の素質が自分にはあったということだ。

貧しい家に生まれたが、頭の回転が異常に速かった。体が小さかったが、人並み外れた体力があった。容姿には恵まれなかったが、人を惹きつけるカリスマ性があった。

目に見えるマイナスがあったからこそ、目に見えないプラスの存在に気づけなかったのである。

そして、そういう人が部下を持つとこう言い出す。

「俺にもできたんだから、お前にもできるだろ。いや、できるはずだ」

こうして“できるだろおじさん“はうまれるのである。

できるだろおじさんの特徴は、部下の能力を自分基準で測ることだ。

「俺が若い頃は難なくこなせていた。俺より学歴も高く若さも体力もあるお前なら、俺がやり方さえ教えてやれば、当時の俺と同じくらいはできて当然だ」

しかし、それは大きな錯覚だ。できるだろおじさんが難なくこなせたのは、おじさんが特別な才に恵まれていたからだ。

できるだろおじさんが平然と耐えられた仕事量や周囲からのプレッシャーは、普通の人なら心と身体がへし折れるレベルだった可能性もあるのだ。

できるだろおじさんはこの単純な事実に気づかないまま、部下を追い詰めていく。

こういった「できるだろおじさん」の典型例として、元阪神タイガース監督の金本知憲選手を挙げることができるかもしれない。

金本選手は現役時代、決して恵まれた体格ではなかった。しかしウエイトトレーニングへの人並み外れた執念とハードワークにも耐えうる鉄人ボディで、40代以降も第一線で結果を残した。連続フルイニング出場の世界記録を持つ、まさに努力と根性の人である。

その金本選手が阪神タイガースの監督に就任した際、自身より大柄な体格を持つ鳥谷敬に対してパワーヒッターへの転身を推奨し、「お前の体格なら40本塁打を打てるはずだ」と期待をかけた。

その理屈は単純だ。俺はこの体格でここまでやれた。お前は俺より恵まれた体を持っている。ならば俺以上の結果が出せるはずだ、ということだ。

しかし言うまでもなく、体格とパワーは別物だ。鳥谷選手のプレースタイルはそもそもホームランバッターではなく、高い出塁率と守備力で価値を発揮する選手だった。金本選手が持っていた「パワー」というパラメータは、鳥谷には備わっていなかったのである。

金本元監督ほどの偉大な人物は少ないとしても、社会には数多くのできるだろおじさんが生息している。

もし自分ができるだろおじさんの部下になってしまった場合、いったいどう対処すればおじさんの熱いパッションに炭になるまで追い込まれることを避けられるのだろうか?

対処法は3つある。

まず1つ目が……

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