見出し画像

「あの日、入りにくい扉を開けてよかった」― 大阪 柏原で出会ったBONCOURAという哲学 ―

――BONCOURA(ボンクラ)という“本物”を知るまで

以前、職場の上司が履いていた一本のデニムに、目を奪われた。
色落ちも自然で美しく、でもどこか無骨で存在感がある。
一見シンプルなのに、目が離せない不思議な魅力。

「そのデニム、どこのですか?」
思わずそう尋ねた。

BONCOURA(ボンクラ)っていう大阪のブランド。ええで、めちゃくちゃ。」

その一言から、僕のデニム観が180度変わっていくことになる。



入りにくかった“納屋の店”に、勇気を出して

数日後、思い切って上司に「見に行ってみたいです」と話すと、快く付き添ってくれた。
向かったのは大阪府柏原市――大阪市内から電車で30分ほどのローカルな街。
住宅地の中を進んでいくと、突如現れる一軒の建物。
それが「SALON BONCOURA(サロン・ボンクラ)」だった。

築100年以上の納屋を改装したというその空間は、まるで隠れ家のよう。
看板らしきものも控えめで、ひとりだったらきっと引き返していたと思う。
でも、上司が「大丈夫やって。行こか」と笑って言ってくれた。
その言葉に背中を押され、木製の重たい扉を開けた。



SALON BONCOURAという、特別な場所

中に入ると、外観の無骨さからは想像もつかない温かい空気に包まれた。
木の香りが心地よく、壁には古いミシンやボタン、サンプルが並んでいる。
そこは「服を売る場所」であると同時に、「服を語る場所」でもあった。

週末のみ開くこのサロンは、ボンクラを象徴する空間だ。
作り手の哲学を肌で感じられるこの場所で、ブランドの真髄に触れることができた。
対応してくれたスタッフさんもとても気さくで、デニムに対する熱量がひしひしと伝わってくる。

そして、いくつか試着した中で出会った一本――
それが「BONCOURA XX(ダブルエックス)」だった。



試着した瞬間、すべてが決まった

ボタンを留め、裾を軽く折り返して鏡の前に立った瞬間、思った。
「これだ。」

一見、武骨で男っぽい印象だが、履いてみると不思議なほど自然に身体に馴染む。
そして何より、生地の質感が明らかに他のデニムとは違っていた。

数万円のデニムを僕は迷わずその場で購入を決めた。
試着して即決――それほどまでに、XXは衝撃的だった。



BONCOURAとは何か? ブランドの背景と哲学

BONCOURAは2011年にデザイナー・森島久氏が立ち上げた日本のブランドだ。
彼は10代からヴィンテージの世界にのめり込み、リーバイスやミリタリーウェアを研究し尽くしてきた人物。

ブランド名の「BONCOURA(ボンクラ)」は、森島氏が若い頃に呼ばれていたあだ名に由来する。
そこには、かつて“ボンクラ”と呼ばれた自分でも、信念を貫けば本物を作れるという意志が込められている。

森島氏の服作りには、“量産”や“効率”といった言葉はない。
ただ「自分たちが最高だと思うものを、自分たちの手で作る」という一貫した哲学がある。



糸から開発される、世界に一つの生地

BONCOURAのデニムで最も特筆すべきは、生地が完全オリジナルであること。
糸の太さや撚り回数、染色の深さや回数まですべて自社で指定し、国内の職人とともに作り上げている。

いわゆる「13.5オンス」のオリジナルデニム生地は、触れた瞬間にそれと分かる独自の質感がある。
最初はハリがあるが、履き込むごとに柔らかく、自分の身体に馴染んでいく。
色落ちも早すぎず、じっくりと時間をかけて変化していくのが特徴だ。

また、縫製にはユニオンスペシャルなどの旧式ミシンを使い、1本ずつ丁寧に仕上げている。
パッカリング(縫い縮み)やアタリも美しく、まさに“育てるデニム”というにふさわしい。



XXモデルの魅力:古き良きと現代的バランス

僕が選んだXXは、リーバイス501XXをルーツにしつつも、単なるレプリカではない。
森島氏自身が「自分ならこう履きたい」と思う要素を組み込んだ、現代のリアルクローズとして仕上がっている。

腰回りにややゆとりを持たせつつ、裾に向かって緩やかにテーパードする美しいシルエット。
太すぎず細すぎない絶妙なバランスで、どんな服にも合わせやすい。

ボタンフライ、隠しリベット、セルビッジ仕様の生地――どれも男心をくすぐるディテールばかり。
でもそれらが“自己主張”ではなく、“本物の証”としてそこにある。



履くほどに深まる愛着

購入からしばらく経った今も、XXは自分の相棒のような存在だ。
少しずつ色が落ちていき、ヒゲやアタリが浮かんでくるたびに嬉しくなる。
この一本は、自分だけのものだ」と思える瞬間。

ボンクラのデニムは、買った日が完成ではない。
むしろ、そこからの“育てる時間”こそが最大の楽しみだ。



ボンクラが教えてくれたこと

BONCOURAの服作りは、時代の流行とは一線を画している。
効率でもなく、コスト重視でもなく、作り手の情熱と哲学で動いている。
そこには、「ものを大切にすること」「育てていく楽しみ」が詰まっている。

SALON BONCOURAの静けさ、スタッフの温かさ、そして一本のデニムとの出会い。
あの日、勇気を出して扉を開けて本当によかったと思う。

いまでは、自分も後輩にこう言っている。

「ボンクラっていう、めっちゃええデニムがあるねん。」



【まとめ】
• BONCOURAは大阪・柏原に拠点を持つ、国産デニムブランド
• 生地は糸から完全オリジナルで開発。色落ちや経年変化に深みがある
• 「XX」モデルはヴィンテージ感と現代的なバランスを兼ね備えた名品
• 店舗「SALON BONCOURA」は週末のみ営業。築100年超の納屋を改装した特別な空間
• デニムを“育てる”という価値観を体感できるブランド

いいなと思ったら応援しよう!

ぽん チップで得た収益は、恵まれない筆者の飯代に使われる予定です。