立ち合い出産奮闘記ー産んだのは私なんですけど⁈
以前投稿した記事を一部加筆修正し、読みやす
く整えて再投稿したものです。
私は29歳で初めての子どもを産みました。
まだ立ち会い出産が珍しかった30年ほど前のことです。
何度思い返しても、
大変だったのに笑ってしまうドタバタエピソード。
夫も陣痛が!
実家に帰り出産に備えていたある朝、
目が覚めるとお腹が急に張ってきた。
その日は予定日まであとわずか4日。
土日で仕事が休みだった夫も実家に泊まっていた。
これはもしや陣痛?
キター!
陣痛の間隔は20分だったり、
10分だったり。
とりあえず夫を探した。
いない。
どこにもいない。
父が言った。
「トイレにおった。腹が痛いと言いよるぞ。こっちも陣痛が始まったか⁈」
えっ?
産むのは私なんですけど…
動けるうちに
隣の家でおしゃべりをしていた母を呼び戻し、急ぎ車で病院に向かった。
「まだ余裕がありますね。入院してもいいけど、動けるうちは家にいてもいいですよ。」
と先生に言われ、一旦帰ることにした。
「動けるうち、動けるうち」とつぶやきながら
風呂に入り、身体も髪も念入りに洗った。
そして「精をつけとかないとね。」と母が買ってきた具だくさんの巻き寿司を昼食に山ほど食べた。
その様子を見ていた祖母が微笑みながら言った。
「子どもはそんなに簡単に生まれるもんじゃあない。そこまで元気なら今日はまだ生まれんよ。」
しかし、含蓄のあるその言葉とは裏腹に陣痛の間隔は次第に短くなり、
夕方ついに入院することになった。
豪華ディナーのはずでは
午後4時半病院到着。この病院は食事が豪華だと聞いていたので、とても楽しみにしていた。
ところが運ばれてきたのは、
メザシ、ご飯、味噌汁。
聞いていたのと違う!心の中で叫んだ。
出産直前は消化の良い質素な食事なのだという説明を受け、ありがたくいただいた。
その後、実家で食事と入浴を済ませた夫が
泊まり支度をして朗らかにやってきた。
「さぁ、一緒に頑張ろう!」
楽勝、からの
夕方から陣痛は10分間隔になっていた。
子宮がぎゅっと絞られる感じ。
夜7時には5分間隔。
ベッドの横のソファーで寝転びテレビのお笑い番組を見ている夫と会話をしたり、笑う余裕はあった。
陣痛の痛みってこのくらいか、楽勝楽勝。
ところが夜9時頃になると、痛みが激変。
腰をナイフでえぐられるようだった。
「ジョーズに下半身食われる感じ」って
このことか!
慌ててテレビを消す夫に
「痛い痛い痛い!腰さすって!」
ところがさすられるとさらに痛くなり
「やっぱりさわらないでー!」
夫はどうすればいいのかわからず、おろおろするばかりだった。

そこへ看護師さんが様子を見にやってきて
「ご主人、立ち合われますか?後でお返事をお聞きしますね。」
と言い残し、去っていった。
「えっ?」
二人は顔を見合わせた。
なぜなら私たちはそれまで立ち合い出産について考えたことが一度もなかったからだ。
次の瞬間、夫はソファーに用意されていた毛布を頭からかぶり、丸くなった。
そして苦しむ私の横でその状態をしばらく続けた後、突然がばっと起き上がり、
「看護婦さんに立ち合いますって言って!」
と、一大決心をしたように言った。
ジョーズと戦っている最中の私は、それどころではなかった。
「じ、自分で言ってえ〜〜。」
そして本番
夜10時過ぎ、子宮口が全開。
破水もしていると言われ、痛みのないわずかな時間を使って、大急ぎで私は車椅子で陣痛室へ運ばれた。
「さぁ、ご主人も一緒に!」
と言われてついてくる夫。
「立ち合います」と返事をしてないけど、それどころじゃない雰囲気。
ちょっと待って、陣痛室って何?
分娩室じゃなくて?
私の頭は混乱した。
看護師さんから
「同じタイミングでお産が進んでいた妊婦さんが先に分娩室に入っているので、手前の陣痛室で待っていてください。」
と説明があった。
こんなに痛いのに? まだ待つの?!
どなたか知りませんが
お願い、早く産んで〜〜!
やがて、分娩室から「おぎゃー」の声。
よし、次は私の番だ。
しかし後の処置があるため、まだ待機。
それまでの人生で最も長い待ち時間だった。
誕生
日付が変わる頃ついに分娩室に運ばれた。
看護師さんの合図に合わせてヒッヒッフー
を繰り返す。
先生の「痛みが弱いみたいね。」の穏やかな声で、陣痛促進剤が点滴で私の腕に注入された。
これ以上痛くならないと生まれないの?!
さらなる痛みに耐えていると、先生が
「ちょっとお手伝いしますよ。」
と私のお腹を両手でぐーっと押した。
「頭が見えてきたよー!
今度はながーくいきんで!」
と助産師さん。
渾身の力を込めていきむと、産道を赤ちゃんがぬるっと通る感触があった。
出た! 赤ちゃん 生まれた!
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ。」
の声が聞こえた。
あぁ、そうだった。女の子って聞いてた。
もうどっちでもいい。
とにかく生まれてよかった。
気づくと夫の姿がない。
「気分が悪くなったのかしら。」と看護師さんが心配しているところに戻ってきた夫は、嬉しそうに言った。
「両方の親に電話してきた!」
人間って
処置が終わり、部屋に戻ったのは午前2時ごろだった。
「立ち合い出産どうだった?」
と尋ねると、夫はしみじみと言った、
「人間って、
こうやって生まれるんだと思ったよ。」
なんと深い言葉だろう。
その夜、後陣痛(子宮が元の大きさに戻ろうと収縮する時の痛み)で苦しむ私の隣で、
夫はいびきをかいて眠っていた。
大仕事を成し終えて安心しきったような寝顔を見て、私は思った。
産んだのは私なんですけど?!
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