お金の進化論 #17
シードフレーズとは、何を復元しているのだろうか。
秘密鍵について知った時、
私はもう一つ、
大きな疑問を持ちました。
もし、
その秘密鍵を失くしてしまったら、
本当に終わりなのでしょうか。
銀行なら、
パスワードを忘れても、
再設定ができます。
キャッシュカードを失くしても、
再発行ができます。
でも、
ビットコインには、
銀行がありません。
窓口もありません。
コールセンターもありません。
もし秘密鍵を失くしたら、
誰にも助けてもらえない。
そんな話を聞いて、
正直、
少し怖くなりました。
ところが、
ここに一つ、
救済措置のような仕組みがありました。
シードフレーズです。
12個の英単語。
あるいは、
24個の英単語。
ウォレットを作った時、
紙に書き写してください、
と表示される、
あの言葉たちです。
私は最初、
あれはパスワードだと思っていました。
あるいは、
秘密鍵そのものだと思っていました。
でも、
どちらも少し違いました。
シードフレーズとは、
秘密鍵を生み出すための、
「種」でした。
英語で、
Seed。
種から木が育つように、
シードフレーズから、
秘密鍵が生まれます。
つまり、
秘密鍵が消えてしまっても、
シードフレーズが残っていれば、
同じ秘密鍵を、
もう一度作り出すことができます。
そして、
同じ秘密鍵が復元されれば、
再び、
自分のビットコインを動かせるようになります。
ここで私は、
ようやく理解しました。
スマートフォンを買い替えても、
ウォレットアプリを削除しても、
ビットコインが消えない理由を。
ビットコインは、
スマートフォンの中にはありません。
世界中の台帳の中にあります。
私たちが復元しているのは、
ビットコインそのものではなく、
そのビットコインを動かす権利だったのです。
だから、
新しいスマートフォンに、
シードフレーズを入力すると、
残高が戻ってきたように見えます。
でも実際には、
ビットコインが移動したわけではありません。
同じ鍵を、
もう一度取り戻しただけでした。
私はここで、
以前の疑問が一つ解決しました。
なぜ、
同じウォレットを、
別のアプリで開けるのだろう。
例えば、
あるウォレットアプリで作った資産が、
別のウォレットアプリでも表示される。
最初は、
不思議でした。
でも、
理由は単純でした。
どちらも、
同じシードフレーズから、
同じ秘密鍵を復元していたのです。
つまり、
ウォレット会社を変えたのではなく、
鍵を入れるケースを変えただけでした。
私はこの仕組みを知った時、
少し驚きました。
銀行口座なら、
銀行を変えれば、
口座番号も変わります。
でも、
ビットコインは違いました。
お金を持っているのは、
銀行ではありません。
ウォレット会社でもありません。
秘密鍵を持っている人です。
そして、
その秘密鍵を復元できる人です。
これが、
セルフカストディ。
自分で保管する
という考え方の始まりでした。
ただ、
ここでまた、
新しい疑問が浮かびます。
もし、
シードフレーズを知っている人が、
自分以外にもいたら、
どうなるのでしょうか。
次回、
自分で持つとは、どういうことなのだろうか。
自由には、
責任が伴う。
この言葉の意味を、
私は少しずつ理解し始めていました。
