風は、急がない
夏期講習が真っただ中のある日、
来年中学受験を迎える男の子が、
一枚の紙を広げてくれました。
赤、青、黄色、緑。
色分けされた一週間の予定表です。
朝の「目覚めの計算」から始まり、
夜十時半の就寝まで、
勉強の予定がきれいに並んでいました。
受験生にとって、夏は大切な季節。
大学受験も、高校受験も、中学受験も、
それぞれが、それぞれの未来に向かって、
一生懸命歩いています。
頑張る姿は、本当に美しいものです。
でも、頑張ることと、
力むことは、少し違うように思います。
室町時代の剣豪、塚原卜伝のお話を
思い出しました。
ある若い剣士が、卜伝に弟子入りしました。
「一生懸命修行したら、何年で免許皆伝になりますか。」
「五年くらいかな。」
「では、寝食を忘れて修行したら?」
「十年。」
「では、死に物狂いでやったら?」
卜伝は静かに笑って、
「それでは、一生かかっても無理だ。」
そう答えたそうです。
ええっ・・・???
頑張れば頑張るほど、早く上達しそうなのに・・・
なんとも不思議な話ですよね。
でも、確かに、
力みすぎると、視野が狭くなり、
目の前のことしか見えなくなるのです。
そんなとき、
心にはもはや余白がなくなってしまいます。
タレントのみやぞんさんは、
「全力投球しなくたて
六割、七割くらいがちょうどいい」
そう話しています。
力を抜けば抜くほど、
力が出る。
<野口三千三さん 身体教育研究者>
不思議ですね。
でも、水の中でのことを思えば、
少し分かる気がします。
必死にもがけば、体は沈んでしまいます。
でも、ふっと力を抜くと、
なんと、体は水に浮かぶのです。
もしかすると人生も、同じなのかもしれません。
努力を続けるためには、
「余白」が必要です。
窓を開けると、風がふわりと入ってきて、
カーテンが静かに揺れます。
冷たい麦茶がのどを潤していきます。
たったそれだけでも、
心が少しやわらかくなるように感じますよね。。
花は、急いで咲きません。
雲も、急いで流れません。
風は、急ぎません。
それでも季節はめぐり、
花は咲き、空はゆっくり色を変えていくのです。
自然は何も言いません。
ただ、そこにいます。
そして、
「あなたは、あなたの速さでいいよ。」
そんなふうに、
そっと寄り添ってくれているような気がします。
最初にお話ししたあの男の子。
きっと今日も、机に向かっているのでしょう。
一生懸命に。
だからこそ、
ときどき顔を上げてほしいのです。
窓の外を流れる雲を眺めたり、
風の音に耳を澄ませたり、
そして夏の空気を、
胸いっぱいに吸い込んでほしいのです。
そんな時間こそが、
きっとかけがえのない時間になるはずです。
そう、頑張り続けるためには、
ときどき力を抜くことも必要。
風は、今日も決して急ぎません。
少しだけ歩く速さをゆるめてみる。
そしてまた、
自分の歩幅で歩き出せばいい。
急がなくても、大丈夫。
思いっきり、夏の空気を
吸い込んでみてくださいね。
🍉今日もお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。🍉
