学習とは「回路」を作ること - ATD26報告会に参加して
先日、「ATD26報告会」というイベントに参加してきた。
運よく接点を持てた Hyper-collaboration さんが主催される「ATD報告会」は、例年、新しいトレンドを持ち帰ったり、日々の仕事を見つめ直したり、同志の存在を知って勇気をもらったりできる、とても貴重な機会だ。
今年は、例年ATDに参加されている代表の吉田さんに加えて初参加となった小山さんとのお二人による報告会となり、立体感がぐぐっと引き上がった印象を受けた。それもあってか、参加して得た学びを記録・記憶したいモチベーションが高まったので、受け取ったキーワードや考えたことを書き残しておこうと思う。
そもそも ATD って?
ATDは “Association for Talent Development” の略だそうで、世界中の企業・組織で人材育成や組織開発に関わる実務担当者や意思決定者が集まるカンファレンス。ここ20年に語られてきた主要なテーマは、時代に呼応するように次のような変遷を辿っているらしい(生成AI調べにつきハルシネーションが含まれているかもしれないことをご留意ください)。
変化に適応できる学習デザイン、自律的学習の土壌づくり
不確実な時代を率いるリーダーの育成と組織変革(コロナ禍も受けて)
生成AIの爆発的普及への対応〜人間らしさの探求
そして、報告会は約2時間半ノンストップのセッション形式だったが、その中に個人ワークと隣人とのペアワークが8つも組み込まれていた。
インプットを聞いて終わりではなく、一つひとつ自分ごとに引き寄せてから次に進める構成になっている設計そのものが学びである。これは例年、吉田さんが入念に仕込まれているプログラムで(ここに学習のデザインがあって)毎回感心している。
では、以下に今回受け取ったキーワードや考えたことを記録する。
組織は Disruption を受け止められる状態か
冒頭に「身の回りで起きている Disruption は」を問うワークがあり、やはり AI との仕事について挙げる人が多かった。世界的にもその傾向は強そうで、今年のテーマが『Disruption(破壊的変化)を受け入れ、未来を導くこと』だったようだ。
そこで示されたのが Antifragility(反脆弱性)という言葉。
外からの負荷を受けると壊れてしまう「ガラス」、堅牢だが変わらず居続けるだけの「岩」、いっぽうで負荷を糧にしてより強くなれる「筋肉」。あなたの組織は今どのあたりにいるか?と問いかけられる。
壊れないように守るのではなく、自分たちを壊して作り替えて成長していける Antifragility(反脆弱性)を、自分たちは持っているだろうか?
自律 と Agency は、似ているようで違う
「自律」は、組織の目的と役割が明確なときに、それらを理解して自走できるか?という問い
「Agency」は、組織の戦略と自分の意志を照らし合わせて、自分としての関わり方を選べるか?という問い
起点が「組織」なのか「組織 × 自分」なのかが違うように受けとめた。
「Agency が発揮される」には、意思が見えていることに加えて、その意思をもとに動ける余地があることとの双方が求められる。これは何気に染みた。
ここで行われたワークでは「仕事で、自分の意思が塞がれたと感じた瞬間、後押しされたと感じた瞬間は?」という問いが投げかけられた。
ワーク後に会場から共有された回答には「そもそも自分の意志を出す機会がないので、塞がれた経験も後押しされた経験も無い」というものもあった。いわゆる「それ以前の話」みたいで悲しいが、それも現実だろう。
次のようなフレーズやワードも記憶に残っている。
一人が全部を決める Founder mode、意見を尊重するがなかなか決められない Consensus mode、どちらでもない「第三のリーダー像」とは?
Impact Player を発掘しその能力を生かすことができる Multiplier Leader
そして、任せた仕事の Agency を取り上げずに、最後まで「本人の仕事」として遂行してもらうという一貫した姿勢についても言及が。
自分が時に足りていないことに気付くこともできた。
学習とは「回路」ができること
終盤は「Leadership OS」として Clarity、Alignment、Movement の三つの要素を軸に話が展開。
組織や人に染みついた見方や反応は決して固定物ではないが、かといって簡単に変えられるものでもない。
各人が得られる「新しい体験」を重ねることでこそ更新できる。
固定物という表現が先の「岩」に通じるように思いつつ・・要は「知っていることと、腹落ちして関わっていることは全く違う」ということか。
受けとったメッセージを言語化してみる。
自分たちが今どこに居て、これからどこを目指すか・どの方向に向いて進むべきかを示す Clarity が先ず大前提として求められる。ただし、単に伝えるだけではなく現地現物に寄り添って Alignment を繰り返すことも求められる。そして、何よりもそのための実践に一歩踏み出す Movement があってこそ、周囲に影響を及ぼし、反応がみえる。
(ここで Clarity に一周して戻ってくる気がするのは Agile 界にいる性か)
そして、記事タイトルは次のフレーズから引用した。
学習とは、情報にアクセスできることではなく、脳の中に思考や判断のための回路が形成されることである。
情報を取りに行けば手に入る時代だからこそ、各人の中に「回路ができる」場をどう設計するかが、我々のこれからの仕事になる。
最近自分は「自分ごと化」のプロセスを大切にしているが、ある〇〇を自分ごと化した結果、その人の頭の中に「〇〇を考える回路」ができているか?をチェックポイントにしていこうと思った。
自分に向けた宣言文
まとめのワークでは、次の一文ができあがった。
私は、AIと働くという Disruption の中で、Clarity-Alignment-Movement のループを回し続ける という軸を持って Agency を発揮し、Multiplier Leader という長期的なありたい姿に向かって移行する【初版から一部更新!】
どんな行動を示しながら、Multiplier Leader に向けて Transition を図るか?時々この文章を思い出して自分に問うようにしたい。
感想、御礼
今年は、随所に小山さんが native speaker 視点で使われている言葉に関する補足を入れてくださったことで、受けとり手の解像度が上がった。例えば、
“disrupt”は、それまで平坦だった道が、ガタガタし始めるようなニュアンス
「自律」と「Agency」の違いの説明もどこかスッと入ってきた。
というわけで、毎年このような良質なインプットを提供してくださる Hyper-collaboration さんに感謝。また、当日お話ししてくださったみなさんのお陰で、さらに学びが染み込んだ感覚(ありがとうございました)!
最後に、これまた印象に残り、とても気に入り、かつ身が引き締まる言葉が共有されたので、引用して締め括りたい。
「未来を明るく描く」のは、考えが甘いのではなく、(組織を率いる者の)責任である。
