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1990年③2月21~22日パリ到着【女子大生ヨーロッパ32日間バックパックひとり旅】

※本稿は、1990年に大学生だった私が、2月21日から3月24日の32日間バックパックでヨーロッパを旅した時のエピソードです(第3話)。旅の間に書いていた旅日記のオリジナルは2026年時点で行方不明ですが、その日記をもとにした原稿が残っていました。旅に慣れて写真が増えるのと反比例して文章量が減っていくその原稿をnote用に編集し、ところどころ2026年の私が突っ込み注釈[*]を入れつつ、ゆるっと投稿します※

モスクワでトランジット

モスクワ空港の窓から見える景色は、とても寒そうだった。人々は本当に毛皮の帽子をかぶっていた。

乗り継ぎのあと、私の隣に座ったのは40代前半くらいの日本人女性だった。パリはもうお馴染みのようで
「今回は2週間くらい。ちょっと短いのよね」
と言う。

私が1ヵ月でヨーロッパをまわるつもりだと話すと
「それはムリよぉ。パリだけでも1か月じゃ足りないくらいよ」
と言われた。確かにそうかもしれない。

ひとりが不安だった私は、パリの治安についても訊いてみた。

「そんなに危なくないわよ。ほら、新宿の歌舞伎町だって場所によっては夜、女の子がひとりで歩くのはちょっと…と思うでしょ?どこの国にもそういうところはあるもの。私はそんなにこわいと思ったことはないわ」

モスクワでの乗り継ぎではフランス人らしい人がだいぶ乗り込んできたが、彼らは機内を自由に歩き回り、楽しそうに話をしていた。

15、6歳くらいの少年たちのグループもいる。私は彼らの整った顔立ちを見て、きれいだなぁと見とれてしまった。とても元気がよく、そのうちのひとりはビスケットの箱を周りの日本人にもつきだして勧めていた。

HくんとUくんは、空港からホテルまでの行き方を相談していた。私もひとりでは不安だなと思いながら、彼らの話を聞いていた。
(*女性が出てきたり男子ふたりも相変わらず登場したり、席順が不明ですが…)

出発前、航空券を手配してくれた旅行代理店でホテルまでの行き方を訊くと、係の男性は少しめんどくさそうに説明してくれた。
「あのー、行けば分かるんですけどね、空港からバスが出てるんですよ、凱旋門まで。そのバスに乗って凱旋門で降りたら、シャンゼリゼ通りのこの辺にタクシー乗り場があるんで、あとはタクシーに乗って行けば大丈夫です。行けば分かりますよ、ええ」

簡単に言ってくれる。

パリが近づくと、乗客全体がそわそわしてくる。

モスクワから乗り込んできた美しい少年たちは、もう荷物を手元に下ろして、声高に談笑している。
ロシア語、フランス語、日本語とアナウンスが流れ、窓の外にはパリの灯が見え始めた。

暗闇の中に浮かぶ明かりを見ながら、私は心の中でリンドバーグの言葉を思い出していた。
(*「翼よ、あれが巴里の灯だ!」は自伝「Spirit of St. Louis」につけられた邦題で、実際にリンドバーグが言った言葉ではないとのことです)

パリ到着

結局、飛行機を降りたあと、入国審査を終えて両替所を探すHくんたちに情報提供しながら付き合っていると、もう10時頃になってしまい、彼らがホテルまで送ってくれることになった。

幸い彼らの予約してあるホテルと私のとは地下鉄の駅で4つしか離れていなかった(地下鉄の駅名はCorvisart駅だった)。

ホテルに着いたときは、もう夜中の12時に近かった。
(*このホテルが唯一、日本から予約していったホテル )

通りに出ると街燈がオレンジの光を放って、道路脇に停まった古い型のシトロエンが石畳に影を落としている。
(*ん?本当に車の型がわかっていたのか…?)

人通りはなく、私たちは
「パリだなぁ」
「パリだねぇ」
と妙に感心しあっていた。

あまりに遅くなってしまったので部屋がキープされているか心配だったが、無事にチェックインを済ますことができ、私たちはホテルの前で記念写真を撮って別れた。

私の部屋は5階。

旧式のエレベーターもあったが、なんとなく階段で上る。

廊下の突き当りの部屋は、中に入ると天井が傾斜していて屋根裏部屋のような造りだった。

まず、ドアに鍵をかける。本で読んだ通り、外から合鍵で開けられることのないように鍵を鍵穴に差し込んで少し傾けておく。本当にこれで外から開かないのかは疑問だが、初めてのパリで私は用心深くなっていた。

荷物をベッドの上に広げ、シャワーを浴びたあと、靴下などの洗濯をする。
水が日本と違うので泡がよく立たない。
あまりきれいになった感じはしないが、部屋の中にロープを張って干す。

やっと落ち着いて、ベッドの上にうつぶせに寝ころび、一日目の旅日記をつけた。

家へはまだ何も連絡を入れていなかった。
日本は今、朝9時頃だ。お母さん、心配してるかなぁ。
(*「ええ、もちろん心配していますとも!早く電話を掛けなさい」と言ってやりたいところです)

今日、空港や飛行機の中で出会って言葉を交わした人は5人。

不思議な気分だった。もう二度と会わないかもしれない人たち。

とても疲れて、身体も痛かった。

隣の部屋から何人かの男女の声が聞こえる。何かゲームをしているらしい。
聞こえるのは日本語ではなく、英語でもないようだった。

かなり賑やかだったが、おかげで安心できて、小さめのベッドで私はいつの間にか眠っていた。

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