【第十三回】絵本と育児ノートと、家族のかたちを教えてくれた日
新生児の委託が決定し、
私たちの毎日は、あわただしくも幸福な“準備期間”に入りました。
ベビーグッズを揃える日々。
育児雑誌を読み漁る夜。
勤務先へのスケジュール調整。
そのすべてが、愛しい時間でした。
「迎える」という言葉が、現実味を帯びて
少しずつ胸の奥に重なっていきました。
🤝 先輩里親さんと出会う
そんなある日。
とあるご縁から、最近新生児の委託を受けたご夫婦とお会いできることになりました。
迎えてくださったのは、とても穏やかで、あたたかな空気を纏ったご夫婦。
話し方もやさしく、どこか静かな強さを感じました。
📔 心に残ったふたつのこと
その日聞かせていただいたお話は、委託の連絡が来たときのこと、実際の育児のこと、特別養子縁組の手続きまで多岐にわたりました。
詳細はお相手のプライバシーにかかわるため控えますが、その中で特に印象的だったことが二つありました。
① 育児記録の大切さ
特別養子縁組を目指す上で、とても大切にしていることのひとつが「育児記録」だと教えてくださいました。
そのご家庭では、独自のフォーマットで、毎日ノート1ページ分の手書き記録を続けていたそうです。
児相から連絡があった日のことから、
どんなことを話し、どんな気持ちだったか、
どんなふうにミルクを飲んで、寝て、笑ったかまで。
すべてがそこに、「家族としての証し」として綴られていました。
その丁寧さに、正直なところ胸を打たれました。
そして、「わたしたちにもできることがあるかもしれない」と希望が湧いてきました。
② 真実告知と“絵本”
もうひとつ、忘れられないのは「真実告知」についての工夫です。
そのご夫婦は、お子さんに自分のルーツを知ってもらうために、
手作りの絵本を作っていました。
表紙も中身もすべて手書きで、
明るく、あたたかいイラストと共に、
出生の背景や大切な人たちの存在が、
やさしく、そして正直に描かれていました。
それは、たった一人の子のための、たった一冊の愛のかたち。
ページをめくるたびに胸が熱くなって、
「こんなふうに伝えることができるんだ」と、
初めて“真実告知”という言葉に希望を感じた気がしました。
🧡 私たちらしい家族を、考えるきっかけに
この日、先輩ご夫婦の姿を見て、
私たちも「自分たちらしい家族のかたち」を考えました。
血のつながりではなく、想いで結ばれる家族。
その根っこにあるのは、日々を一緒に重ねること、
そして、まっすぐ向き合い、信じること。
不妊治療や流産を経験してきた私は、
ずっと「妊娠」「出産」に対して自信を持てずにいました。
でもこの日、はじめて思ったんです。
「ああ、私、本当にお母さんになるんだ」
心の底から、そう思えました。
📞 そして──その翌日、電話が鳴りました
対談のあと、帰り道。
夫と「やっぱり準備しておいてよかったね」と微笑み合いながら話していました。
心はしっかりと整いはじめていて、
「いつでも来てください」と言えるような、
そんな気持ちになっていたのです。
けれど、まさか。
その翌日、あの電話が鳴るなんて。
あの言葉が、
わたしたちの待っていた全てを、
静かにすり抜けていくなんて。
——次回、そのときのことを、書きます。
