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ラヴェル・パリ・2025 マチェラル指揮フランス国立管によるラヴェル集

今晩は、ナイーヴ・レーベルから9月12日にリリースされたクリスティアン・マチェラル指揮フランス国立管弦楽団による「ラヴェル・パリ・2025」と題されたラヴェルの管弦楽集を聴きます。
この録音は、モーリス・ラヴェル生誕150周年を祝して、2025年2月28日、3月5日、6日、13日に開催されたフランス国立管弦楽団フェスティバルで収録されたもの。
収録曲は以下の通り。

クープランの墓 M.68
マ・メール・ロワ(バレエ)M.62
ラ・ヴァルス M.72
海の上の小舟 M.43A
亡き王女のためのパヴァーヌ M.19A
道化師の朝の歌(アルボラーダ・デル・グラシオーソ)M.43B
スペイン狂詩曲 M.54 1907
ボレロ M.81
ダフニスとクロエ M.57


CD3枚組で、ラヴェルの主要な管弦楽曲が収録されています。
以下、マ・メール・ロワの動画。

指揮のクリスティアン・マチェラルは、1980年ルーマニア・ティミショアラ生まれの指揮者。幼少期からヴァイオリンを学び、アメリカで研鑽を積んだ後、マイアミ交響楽団でコンサートマスター、ヒューストン交響楽団でヴァイオリン奏者を務め、フィラデルフィア管弦楽団で指揮の経験を重ね、ケルンのWDR交響楽団の首席指揮者を今年度まで延長し、フランス国立管弦楽団の音楽監督を2020年から務め、27年まで契約延長中。ショルティ指揮者賞などを受賞し注目を集め、2017年からカブリロ現代音楽祭の音楽監督として現代作品にも積極的です。2025年からはシンシナティ響の音楽監督にも就任予定です。日本では新日本フィルでも指揮したので聴いた方もいらっしゃるでしょう。録音ではドイツ・グラモフォンから出ているエネスコの交響曲全集がフランス国立管との演奏で素晴らしい。

フランスにとってラヴェルは誇りでしょうね。このアルバムの解説では曲目の説明ではなくて、いかにラヴェルとこのオーケストラ(前身のフランス国営放送管弦楽団)と関わりがあったか、そしてこのオーケストラのラヴェル演奏史が綴られています。1934年にオケが創立され、1937年にはラヴェルがダフニスとクロエを聴いたのがラヴェル自身が最後に自分の曲の聴いた曲になったとか。その時はハープはリリー・ラスキーヌ、それからフルートは、笛吹なら知っている伝説のフルーティスト、フェルナン・デュフレーヌが出演していたとか。この年の12月28日に62歳で逝去しましたが、このオーケストラにとってラヴェルはさまざまな巨匠たちによって引き継がれてきた演奏の歴史があります。アングルブレシュ、ロゼンタール、クレツキ、ミンシュ、クリュイタンス、マゼール、ブルーノ・ワルター、ストコフスキー、ルルー、マルティノン、チェリビダッケ、バーンスタイン、デュトワ、フルトン、クリヴィヌ、そしてこのマチュラル。延々と引き継がれてきたフランスの音、とでも言いましょうか。

最近はどこの国のオーケストラもインターナショナルになって、あまりお国柄や個性が感じられないと言われてきていますが、フランスのオーケストラは何度か生でも聴きましたが、やっぱり違いますね。それはあの美しいフランス語を話す感性からきているのか、それとも自由を愛する気風からきているのか。

フランス国立管弦楽団も何度か聴きに行きましたが、なんかすごく自由な雰囲気なんですよね。日本のオケとかってすごく統制が取れていて、ちょっと逆に窮屈に感じるんですが、フランス国立管弦楽団はそれぞれの奏者が自由に個性を表現しながらも、全体では独特の音色になるという、これはもうどうしても真似できない技があるような気がします。

この録音、3枚分の録音を聴くと、その個性がより際立って聴こえてきます。まずは弦楽器が非常に柔らかく、細身なんだけど洗練された音色と透明感。それから低弦はゴリゴリ弾かないのは、コントラバスがフレンチボウだからでしょう。

それからもちろん管楽器!これはもうフランスのオケの独壇場ですね。繊細でセンスのいいフルート、完璧にコントロールされたピッコロ!オーボエは昔のような倍音が多いリードではないけれど、細身で明るい音色、クラリネットも軽やかで透明感と明晰さがあります。そしてファゴットはバッソンでしょうね。道化師の朝の歌とかはブラボーです。

それからホルン。昔みたいにヴィブラートかけたら面白いのですが、流石にそれはしないけれど、亡き王女のパヴァーヌのソロはまろやかで実に美しい。

その特色がもっとも現れるのが、もちろんボレロ。ただ、ここでは各奏者のうまさを目立たせるのではなく、柔らかな響きの中の一つの音色として配置していて、単なるショーピースではない気品のある演奏。
ボレロの再生は難しいですね。ダイナミックレンジが広大なので、最初にヴォリュームをあげすぎると大変なことになります。この演奏も冒頭のピアニッシモは素晴らしいけど、ここはその弱音の美しさを楽しみます。

このアルバムでちょっと他にはないのが「クープランの墓」。ラヴェルがオーケストレーションしなかったフーガとトッカータをダヴィッド・モラール・ソリアーノがアレンジしています。この方はこのオーケストラのアシスタント指揮者も務めていて、ラヴェルのソナチネとかドビュッシーの月の光のアレンジもあるみたい。

フーガはこのオーケストラの最大の武器である木管楽器を中心としたアレンジ。オーボエ、クラリネットと主題が続きます。弦楽器に引き継がれた後もホルンと木管が活躍。柔らかな音色。

トッカータは細かい音をミュート・トランペットから初めてさまざまな楽器に移りつつ進みます。ピアノとはまた違ったニュアンスのフレーズ感が感じられたり、豊かな音色のパレットで楽しませてくれます。
でもやっぱりちょっとラヴェルのオーケストレーションとは微妙に違うのだな。もちろん素晴らしいアレンジなのですが、ラヴェルと比べると、・・・と言ったら怒られそうですが、やはりラヴェルがすごいということでしょうか。
そして聴き物は最後の「ダフニスとクロエ」全曲。冒頭の美しいフルートのソロから強く惹かれます。合唱はフランス放送合唱団。全体が少しベールのかかったような録音もあって幻想的。弦楽器が非常に美しく、それに名人芸的な管楽器が乗って、いかにもフランスのオケ的。各ソロをクローズアップするのではなく、全体の中に柔らかく浮かび上がらせる演出がこの曲にふさわしく感じます。合唱は舞台裏で歌っているのでしょう、第2場の序奏ではくぐもった直接音でない響きがファンタジーとこれから起こる争いを予感させます(トラック12)戦いの踊りはダイナミックでこれまでの雰囲気と変わりますが、全体的にソフトな響きは維持されていますね。速めのテンポですが、細かい木管のパッセージは完璧でさすが。

第3場、夜明けの雰囲気も細かい木管のパッセージは柔らかい靄に包まれた音色感。柔らかに朝の高揚感を描きます。ここは何度聞いても美しくて感動的。艶やかなヴァイオリン群。シリンクスの物語のフルートソロは絶品。ゆったりしたテンポで丁寧にニュアンスたっぷりに吹いています。

最後の全員の踊り、こちらは速めのテンポで盛り上げます。これだけ速くてもついて来れるオケ、特に木管すごい!スタイリッシュに決めてますね。ライブだからきっと終わった後は大歓声だったでしょう。

マチェラルの指揮自体は、決して奇を衒ったものではなく、オーソドックスで細かいところまで行き届いた精緻な演奏。ラヴェルの音楽をあるがままに聴かせてくれるという感じで、強い個性はないけれど、フランス的な音色を生かしていますね。

録音はライブのせいもあるかと思いますが、オフ気味の全体を捉えた柔らかい音色。定位は奥行きがあって、非常に雰囲気があります。
ということで、3時間かけてラヴェルの主な管弦楽曲を全部聴きました。たまにはこうやってラヴェル漬けもいいもの。フランス伝統の音色によるラヴェルを聴かせていただきました。


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