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冷蔵庫の「多いじゃろ!」を、笑顔に変えるまで


ヘルパーのBさんは言葉のキャッチボールが少しだけ苦手な人。

介護を受ける身にとって、ヘルパーさんは生活の要。


でも、投げかけた言葉を胸元で受け止めてはくれるけれど、

そこから私の方へ投げ返してくれることは、滅多にない。

例えば、

「冷蔵庫の余り物で、野菜炒めを作ってもらえる?」とお願いする。

返事はいいのだが、彼女はそこにある食材を、

律儀にすべて使い切ってしまうのだ。


出来上がった山のような一皿を見て、

心の中で「多いじゃろ……」とツッコむ。

一人分がどれくらいか、想像すれば分かりそうなものなのに。

自分の生活を他人に委ねるもどかしさが、

一瞬、溜息になって漏れそうになる。



けれど、私はあきらめなかった。

車椅子から彼女を観察すると、

その唇の形状から、私よりも「言葉を外に出すこと」に

強い苦手意識を持っているタイプだと


仮面心理学の観点から分かったからだ。



「彼女のせいじゃない。

私が、彼女が走りやすいルートを作ってあげればいいんだ」



そう思いながら探り続けていたある日、


ついに「ルート」が見つかった。


きっかけは、何気なく投げた野球の話題。


彼女の瞳がパッと輝き、特定のチームの

熱狂的なファンであることが判明したのだ。


その日以来、介護の時間は劇的に変わった。

私がチーム名を出した瞬間、

あんなに重かった言葉の球が、

驚くほどスムーズに返ってくるようになった。


介護される側は、どうしても

「待つ」時間が多くなる。


けれど、相手の特性を知り、


こちらから歩み寄ることで、生活の彩りは自分で作れるのだ。


彼女の不器用さが、今は少しだけ愛おしい。


今日も私は、彼女が投げやすいボールを探しながら、

この日常を面白がっている。





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