「しっ!しっ!」と犬のように追い払われて。でも負けなかった56歳。
無事フリーウェイデビューを果たし、
大学までの道のりを何往復も練習し、
ついに登校初日を迎えた。
前日まで、命がけで高速を走っていた私である。
正直、もう怖いものはない気がしていた。
だから調子に乗った。
「よし、ランチは学食で」
……学食って言わないな。カフェテリア、だ。
某有名サンドウィッチ店の注文の列に並んでみた。
と、どのパンにするか聞かれる。
けれど、種類がわからない。
焼くか焼かないか。
チーズを挟むか、挟まないか。
単語は拾える。
だから聞かれてることはなんとなくわかる。
でも、どう組み立てればいいのかわからない。
どう選べばいいのかも、どう返事をすればいいのかも。
きっと私は、口を開けたまま固まっていた。
向こう側で、ヒスパニック系のおねいさんが何か叫んだ。
忙しいランチタイム。
こんなやつに構っていられない。
次の瞬間。
「しっ! しっ!」
真っ赤なネイルの爪、指を振られた。
犬でも追い払うみたいに。
プライドは一瞬でズタボロになった。
周りの視線が突き刺さる。
フリーウェイを制したはずの私は、
サンドイッチ一つ頼めない。
逃げた。
本当に走って逃げた。
お腹はとても空いていた。
悔しいというより、
情けないというより、
「どうやってチャレンジすればよかったんだろう」
それを考えていた。
逃げ込むように隣の売店に入り、
棚から適当に掴んだチップスを買った。
その日のランチは、チップス一袋。
パリッ。
やけに音が大きかった。
お腹は満たされたけど、
心はどこか空腹のままだった。
翌日、私は戦い方を変えた。
カフェテリアには行く。
でも並ばない。
少し離れた席から、じっと観察する。
みんな何て言っているのか。
パンはどう指さすのか。
焼く? 焼かない?
チーズは?
ソースは?
注文の流れを分解する。
家に帰ってメモを取る。
それを三日続けた。
それまでは、自分で持っていったパンを静かに食べていた。
負けたわけじゃない。
準備期間だ。
そして四日目。
私は並んだ。
心臓はフリーウェイより速かったけれど、
今度は固まらなかった。
ちゃんと答えた。
ちゃんと選んだ。
ちゃんと受け取った。
あの時のサンドイッチの味は、
ほんとに美味しかった!!
日本人がほとんどいない場所を選んだので
話せる人もおらず、唯一友達になってくれた
台湾とモンゴルの友人がお互い片言英語で
慰めてくれたのがありがたかったな。
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