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1日に8回「帰れ!」と言われて。56歳、アメリカ免許取得までの泥泥(どろどろ)日記

海外で運転するなら、日本発行の国際免許があれば運転は可能です。


けれど、カリフォルニア州では長期滞在なら

州発行の免許を取るよう言われますし、

身分証代わりにもなるので、私は意を決して

免許を取りに行くことにしました。

まずは筆記試験。

日本語の試験用紙があると聞いて安心していたのですが……。


そこからが「地獄」の始まりでした。


怒号のDMV。9回目に現れた天使


向かったのはDMV(車両運行局)。

アメリカ人も嫌う、最悪の対応で有名な役所です。


書類を出すたびに、「書き方が間違ってる!

書き直してこい!」と怒鳴られる。


言われた通りに直して持っていくと、


今度は別の箇所を指摘され「

またミスだ、帰れ!」と追い返される。

恥ずかしくてその場に入れないので

一旦帰っては修正し、再訪問。


これを1日に8回繰り返しました。


私が窓口に現れるたびに、職員たちが


「またあいつか……」とうんざりする空気。


けれど9回目。見かねた一人の女性職員が、


「もう、しょうがないわね」という顔で、


仕上げるまで丁寧に付き合ってくれたのです。


その場で受けた筆記試験は、必死の勉強が実り一発合格!


「やった!」と拳を握ったのも束の間、

本当の戦いは「実技」にありました。


魔女の教官と、フリーウェイでの号泣


運転には自信があったはずなのに、

アメリカのルールは別物。


私は個人レッスンの教習を受けることにしました。

現れたのは、魔女のような見た目で、


ものすごい訛りのある英語を話す女性。


彼女はとにかく、助手席から怒鳴り散らします。


特にフリーウェイの練習では、


「アクセルを底まで踏み込め!!!」と叫ばれ、

右折レーンではタイミングが悪い!!と怒鳴られ

とにかく罵詈雑言の嵐。


ステイ先に帰ってから、私は一人で号泣しました。


「なんであんなに言われなきゃいけないの?」

けれど、一人で自主練習をしていた時に、ふと気づいたんです。


「私、彼女に褒められるために運転してるんじゃないわ」


その瞬間、何かが降臨しました。


誰のためでもない、自分のためにハンドルを握る。


すると翌日、私の運転を見た彼女が驚いた顔で言いました。


「え?上手じゃない」 サイドブレーキを引いた瞬間、


思わず涙が溢れました。 すると、あんなに怖かった魔女が、


私を優しくハグしてくれたのです。


普通は不可能な「魔女の魔法」


実は、彼女がしてくれたのは指導だけではありませんでした。


試験直前、彼女は私を連れて

あの因縁のDMVへ乗り込んだのです。

そして、数いる試験官の中から


「日本人への対応に慣れている人」を探し出し、


普通なら不可能なはずの『担当者の指名』を、

その場でねじ伏せるように取り付けてくれました。


厳しい罵詈雑言は、私を確実に合格させるための愛のムチ。


彼女は、言葉も文化も違う場所で必死にもがく私を、


裏側で全力で守ってくれていた、本物の「魔女」だったのです。


最後の最後で、まさかのドレスコード!?


そして迎えた試験当日。 いつもの勝負服、Gパン姿で行くと、

また彼女が怒鳴りました。


「まこ!なんて格好してるの!

今日はドレスアップしてこないとダメじゃない!!」

見れば、彼女は気合の入った素敵なワンピースを着ています。


「着替えてくる!」とパニックになる私に、


彼女はニヤリと笑って言いました。


「冗談よ」


その一言で、肩の力が抜けました。 結果はなんと、100点満点で合格!


果たせなかった、小さな約束

試験に合格した日、


私たちは「いつか一緒に食事をしましょう」と約束を交わしました。


けれど、その約束は今も果たせないままです。


それが私の、小さな、でも温かい心残り。


今、車椅子で生活している私ですが、


心の中ではいつでもあの助手席に彼女が座っています。


「まこ!しっかりしなさい!」 そう怒鳴りながら、


私が挫けそうになると、そっと魔法をかけてくれる。


あの時の魔女との出会いは、

今も私の人生というフリーウェイを走るための、

消えないガソリンになっているのです。

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