連載小説(43)漂着ちゃん
エヴァの話を聞きながら、私は人間が生きることの意味を考えていた。
「エヴァさん、人間はなぜまだ来てもいない未来について、正解を求めようとしてしまうのでしょう? 望みをもって明日を覗くことができなくなるのは、過去や現在に縛られた考え方を私たちが無意識的に求めているからでしょうか?誰かの言葉やAIに従ってしまいたくなるのはなぜなんでしょうね」
「あなたは私のことを責めているのでしょうか?私が自分の意思をしっかりともっていれば、欲しかったあなたをナオミとくっつけることはなかったと言いたいのですか?」
「責めてなんかいません。私だって、この町で最初に好きになったあなたのことだけを考えていれば、ナオミではなく、最初からあなたを求めていたことでしょう。理由はともあれ、もっと強くあなたのことを思っていれば…」
「起こってしまったことを悔いても仕方ありません。ナオミとあなたが結ばれることは私が望んだことでしたし、私の思い通りにあなたとナオミが結ばれたからこそ、所長の呪縛から解き放たれたのです」
イサクはエヴァの胸元ですやすや眠っている。
「呪縛とはなんだったのでしょうね。エヴァさんが所長を盲信したのか?それとも所長がエヴァさんを信じさせようとしたのか?」
「AIには人間と同じように、意思や意識を持っているとは考えられてはいません。ただ自己強化作用はあるでしょうね。人間が思考実験をしながら徐々に考察を深めていく長いプロセスを、AIは瞬時に何度も繰り返す」
「エヴァさん、AIはその点では優れているのかもしれません。しかし、完璧ではないことは、AI自身が証明しているように思うんです」
「というと?」
「いま、AIが完璧な答えを私たちに提示したとします。AIが進化を続けているのならば、明日にはAIは、いまと別の答えを提示することでしょう」
「今日聞いて完璧だと思ったAIの答えも、進化した未来のAIの答えは、今日とは違うでしょうね。結局、今日私自身が考えたことのほうが、優れている可能性がある。私はそう思います。どうせ間違えるのならば、他人やAIの出した答えにしたがって失敗するより、自らの信念にしたがって失敗するほうが納得できますしね」
話しているうちに、私はエヴァは私の考えと大きくは違わないのではないか、と思い始めた。
…つづく
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