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世界一?ソフトバンクGが「1000兆円企業」になれると考える4つの理由

目次

  1. 孫正義氏がまた大風呂敷を広げた

  2. ソフトバンクGは1000兆円企業になれるのか

  3. 理由1 1000兆円になるのは「今」ではなく2042年

  4. 理由2 目標は「ドル」ではなく「円」

  5. 理由3 「時価総額1000兆円」ではなく「NAV1000兆円」

  6. 理由4 過去の実績から見れば「14倍」は控えめにさえ見える

  7. 大風呂敷に見えて、実は堅実な目標だった

1.孫正義氏がまた大風呂敷を広げた

2026年6月24日、ソフトバンクグループの株主総会で、孫正義氏が掲げたのは、現在74兆円のNAVを2042年までに1000兆円へ増やすという目標だった。

孫氏が、

「宣言します。1000兆円です」

と話すと、会場からは大きなどよめきが起きた。
ソフトバンクGの株主総会は、普通の会社の株主総会とは少し違う。
決算数字を淡々と説明する場というより、孫正義という経営者が未来を語るステージである。
AIは人間の知能を超える。ソフトバンクグループはASI時代の中心に立つ。そして、現在74兆円のNAVを2042年に1000兆円へ。
この流れで聞けば、誰だって「おお」となる。

2.ソフトバンクGは1000兆円企業になれるのか

ちなみに、2025年の日本の名目GDPは約663兆円だった。
現在、世界最大級の企業であるNVIDIAの時価総額は、約5兆ドルである。仮に1ドル160円で換算すると、約800兆円になる。
現在のNVIDIAでさえ、1000兆円に届いていない。そんな数字を、日本企業であるソフトバンクGが目指すという。

それでは、この目標は達成できるのだろうか。
結論から言うと、僕は、1000兆円は十分に達成可能だと考えている。

3.理由1 1000兆円になるのは「今」ではなく2042年

まず、1000兆円は現在の目標ではない。期限は16年後の2042年である。

現在のNVIDIAが約5兆ドルなのに、ソフトバンクGは1000兆円を目指すのか。世界一になるつもりなのか。

しかし、現在のNVIDIAと2042年のソフトバンクGを比べても、あまり意味がない。

2042年には、NVIDIAもAppleもMicrosoftも、今よりはるかに大きくなっているかもしれない。現在はまだ名前も知られていないAI企業が、世界最大の企業になっている可能性もある。

仮に企業価値が名目で年3%ずつ増えるだけでも、16年後には約1.6倍になる。年5%なら約2.2倍だ。

2042年の1000兆円は、現在の1000兆円と同じ重さを持つ数字ではない。

4.理由2 目標は「ドル」ではなく「円」

この目標を考えるうえで、最も重要なのが通貨である。

孫氏は、2042年に5兆ドル、あるいは10兆ドルを目指すとは言わなかった。あくまで日本円で「1000兆円」と宣言した。

しかも、日本語の資料だけではない。英語版の株主総会資料や統合報告書でも、ドル換算せず、わざわざ「JPY 1 quadrillion」「¥1 quadrillion」と円建ての目標を掲げている。

ソフトバンクGの資料

これはかなり興味深い。

ソフトバンクGが現在のNAV74兆円を計算する際には、1ドル161.63円という具体的な為替レートが明記されている。それにもかかわらず、2042年の1000兆円については、想定為替レートもドル換算額も示されていない。

もちろん、16年後のドル円など誰にも予想できない。

それでも孫氏の頭の中には、2042年には現在より円の価値が1/2や1/3になるなどの相当な円安が進んでいるという見立てがあるのではないか。

同じ1000兆円でも、1ドル150円なら約6.7兆ドルだが、200円なら5兆ドル、300円なら約3.3兆ドルにすぎない。

仮に2042年のドル円が300円なら、現在の74兆円から1000兆円への増加率は円建てでは13.5倍だが、ドル建てでは約7倍になる。

必要な年平均成長率も、円建てで見た約17.7%から、ドル建てでは約13%まで下がる。

簡単な目標ではない。しかし、印象はかなり変わる。
海外資産を多く持つソフトバンクGにとって、円安はNAVを膨らませる強力な追い風になる。保有するドル建て資産の価値が変わらなくても、円が安くなるだけで円換算額は増える。

AIの成長だけで1000兆円を達成する必要はない。
AIの成長に加えて、世界的なインフレと円安も、名目円のNAVを押し上げてくれる。

5.理由3 「時価総額1000兆円」ではなく「NAV1000兆円」

この記事のタイトルでは敢えて「1000兆円企業」と書いた。孫氏が実際に掲げたのは、ソフトバンクGの時価総額を1000兆円にするという目標ではないからだ。

目標は、あくまでNAVでの1000兆円である。

NAVとは、保有株式の価値から純有利子負債を差し引いた金額だ。2026年6月23日時点では、ソフトバンクGのNAVが74兆円であるのに対し、時価総額は37兆円だった。

つまり、当時のソフトバンクG株は、NAVの約半分の時価総額で取引されていたことになる。

将来NAVが1000兆円に達しても、同じような持株会社ディスカウントが続けば、ソフトバンクG自身の時価総額は500兆円程度かもしれない。

「NAVが1000兆円になること」と「時価総額1000兆円の企業になること」は同じではない。

NVIDIAの約5兆ドルは時価総額である。一方、ソフトバンクGの1000兆円はNAVだ。
そもそも、比較している指標が違うのである。

ここが、実に言葉巧みなところだと思う。

孫氏は、

「NVIDIAを超えます」
「世界最大の企業になります」
「時価総額世界一になります」

とは宣言していない。

言ったのは、2042年にNAV1000兆円を目指すということだけである。

しかし、聞き手は1000兆円という数字を現在のNVIDIAと比較して、勝手に世界一を想像する。

現在の世界最大企業でさえ1000兆円に届いていない。
それならソフトバンクGが1000兆円になれば、世界一ではないか。

会場では「おお!」となる。

孫氏は時価総額で世界一になるとは約束しなかった。
しかし、世界一になるかのような興奮を生み出すことには成功した。

6.理由4 過去の実績から見れば「14倍」は控えめにさえ見える

孫氏は株主総会で、1994年から2010年までの16年間に企業価値を15倍にし、2010年から2026年までの16年間にはNAVを25倍にしたと説明した。

そして次の16年間では、74兆円を1000兆円、すなわち約14倍にするという。

もちろん、過去に15倍、25倍にできたから、次も14倍にできるとは限らない。

それでも孫氏から見れば、

「過去16年間で25倍にした。次の16年間の目標は14倍だ」

という計算になる。

しかも次の14倍には、AI関連企業の成長だけでなく、世界的な資産価格の上昇、インフレ、円安も含めることができる。

本人にとっては、決して思いつきで口にした数字ではないのだろう。

株主総会でも孫氏は、数字を公表したときには必ず達成してきたことを自らの「プライド」と語り、今回の1000兆円を言うのにも勇気が必要だったと説明している。

1000兆円は、単なる景気のよい掛け声ではない。
孫氏なりに「頑張れば届くかもしれない」と考えたうえで選んだ数字なのではないか。

7.大風呂敷に見えて、実は堅実な目標だった

僕自身、最初に1000兆円と聞いたときは確かにまた途方もない大風呂敷を広げたと思った。

しかし、条件を一つずつ確認すると、違う姿が見えてくる。

期限は16年後の2042年。
単位はドルではなく名目円。
目標は時価総額ではなくNAV。

そして、世界一になるとは一言も言っていない。

AI関連資産が爆発的に成長すれば、もちろん目標に近づく。

成長が少し足りなくても、世界的なインフレが助けてくれる。
さらに円安が進めば、海外資産の円換算額が膨らむ。

複数の追い風をすべて取り込めるように、期限、通貨、指標が選ばれている。

だから1000兆円は簡単な目標ではないが、最初に感じるほど無謀でもない。
むしろ、達成可能性をかなり慎重に考えた、意外に堅実な目標なのではないか。

孫正義氏は、また大風呂敷を広げたのだろうか。
否である。

孫氏は大風呂敷を広げたのではない。堅実に設計した目標を、大風呂敷に見せたのである。

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