ここ最近の生成AIを名目にした表現規制の動き
はじめに
下記の記事をご覧ください。「AIで作った児童の性的画像、8割が法規制強化を支持 NPO調査」と言う記事で、だから創作物(実在被害者のいない漫画・アニメ表現など)を規制するよう、暗に主張しています。
この記事の最初の方で「実在児童の被害は深刻だ」と問題提起しています。言うまでもなく最初の実在児童の性被害防止、対策自体には私も同意します。しかし、問題なのは「AIなどで作られた」ものなら、実在、非実在問わずに規制しろです。言うまでもなく、実在被害者が存在しないのなら規制の合理性はありません。
上記の理屈による法の運用は他の犯罪事件でいえば、殺人事件や詐欺事件などで「容疑者段階=犯人かどうか分からない」状態でも処罰しろと言っているのと同じです。これは「推定無罪原則」「疑わしきは罰せず」の近代法の精神に反します。これでは、完全フィクションの漫画やアニメなどの非実在表現まで規制されるリスクがあることを意味します。
1.当該記事の問題点
第一、この記事では「現行の児童ポルノ法は実在被害だけを対象としているのでAIは取り締まれない」と明らかに虚偽と分かるミスリードをしています。そもそも、現行の児童ポルノ法では「絵でもモデルが実在すれば取り締まり対象」としています。つまり、実在人物と特定、同定できれば取り締まりは可能なわけです。勿論、AIであってもです。
当該記事の図解説明を見ても分かるように、実在児童の画像を「AIで加工して」作成している訳です。つまり、元の実在人物の顔自体を同一人物と分からないレベルでの加工でない限り、実在人物との同定、特定は可能です。この時点で現行法の「法的適用」自体はできるわけです。
そもそも、現在でもアイコラ(アイドルコラージュ、アイドルの顔と裸画像をつなぎ合わせて、あたかもアイドルのヌード画像であるかのように見せる画像)も現行法で名誉毀損、肖像権侵害で取り締まられています。児童であれば当然、児童ポルノ法に該当します。AIも実在人物の画像を加工して、わいせつ画像や児童ポルノ画像を作るという点では同じです。だから、実在人物を特定、同定できれば現行法で有罪にできるわけです。少なくとも、当該画像が実在人物と誤認できるレベルで似ていれば、アイコラだろうが生成AIで作られたものであろうが関係なく処罰対象になります。この状態なら、アイコラや生成AIかどうかは手段の違いでしかなく、結果としての実在人物への性加害、名誉毀損等の加害は同じです。つまり、生成AIは児童ポルノ法に該当しない、取り締まれないという論自体が虚偽な訳です。
また、それ以前に生成AIは「データセット」と呼ばれる画像データを集めたもので生成画像を作るシステムです。この「データセット」(料理でいう材料と同じ)の中に実在人物画像があれば、一発で児童ポルノの実在人物に使っている事の証明になります。
このように、現行法でも生成AIによる表現自体を規制の正当化の根拠はないわけです。
2.虚偽に基づいての、被害者の存在しない漫画、アニメ表現規制
上記で示したように「現行法では生成AIでできた児童ポルノは取り締まれない」と言う事実自体が存在しない訳です。それなのに、実在、非実在を問わず規制しろというのであれば、漫画アニメまで拡大解釈の被害が出かねません。それどころか、表現規制に発展しかねません。
例えば、アニメマンガは、人によっては顔立ちが幼く見えるため、非実在まで規制となれば規制となれば、被害者が存在しないアニメマンガまで規制されかねません。特に名作を生みだした手塚治虫作品は未成年者による性行為、戦闘シーン(暴力シーン)等が多く、発禁の危機さえあります。しかも実在性被害児童の人権保護には寄与しません。それどころか、そちらにリソースを取られ、疎外されるリスクもあります。これについてはスウェーデン警察や、10年前の当時は表現規制反対だった日本共産党も問題視し、山田太郎氏と事実上の共闘で追及です。詳細は下記記事をご参照ください。
〇下記記事の末尾にスウェーデン警察による声明「フィクションの児童ポルノ規制でリソースがとられて、肝心の性被害児童を救出できない」事態に警告しています
〇10年前の表現規制反対派時代の日本共産党と山田太郎氏による「児童ポルノ法」を「児童性被害対策の為の法律に変える」為の活動記録
3.まとめ
上記で示したように、今回のAI規制を名目にした表現規制が実行されようとしています。しかも、肝心の実在性被害児童の救済になりません。10年以上前にも、似たような規制の動きがありました。今回はそれをAI規制を絡めて再現しようとしています。当時の表現規制についての記録を下記に紹介します。
現在の表現規制の原点・大本であるゼロ年代表現規制問題について
4. 最後に
AIについては他にも問題があり、それらには私も必ずしも肯定していません。ですが、安易な規制は無関係の重要なところに延焼します。そうならない為にもまずは事実関係を把握し、問題を切り分けて論じ、慎重に行動しますようお願いします。
