「私、薬剤師なんで。」小説プロジェクトを始めます
薬剤師の見えない仕事を、物語にしたくて
実用書『薬剤師、AIはじめました』を書いた私が、今度は薬局を舞台にした小説を書き始めました。
タイトルは「私、薬剤師なんで。 〜桜ノ町薬局、本日も平常運転〜」です。
薬局で働いていると、説明しようとした途端、言葉が固くなることがあります。
待合の空気、カウンター越しの表情、薬を渡す前に言葉を探す時間。その気配は、制度や業務内容の説明だけではこぼれやすいものです。
薬局の外から見える景色と、中で考えていることは、たぶん少し違います。その差を、物語として書いてみたいと思いました。
「私、薬剤師なんで。」は、薬局を舞台にしたお仕事小説です
舞台は架空の北多摩市。桜ノ町商店街の一角にある「桜ノ町薬局」です。
大きな病院の前ではなく、商店街の中にあって、地域の人がふらっと立ち寄るような薬局です。処方箋を持って来る人もいれば、風邪薬やマスクを買いに寄る人、相談だけして帰る人もいます。
主人公は、桜ノ町薬局で働く30代の薬剤師・柏木千晶(かしわぎ・ちあき)です。
自虐的なところがあり、立派なことを言うより、目の前の仕事を一つずつ片づけるタイプです。
けれど薬局では、患者さんの何気ない一言で手が止まります。急いでいる相手の前でも、確認したほうがいいと思えば、言葉を選びながらもう一歩だけ聞く人です。
薬剤師の仕事をよく知らない人にも読めるように、専門用語を前に出しすぎず、薬局で働く人たちの迷いや判断、ちょっとした会話を中心に進めていく予定です。

この小説は、AIと一緒に作っています
先に書いておくと、この小説はAI補助執筆で作っています。
AIは、考える相手として使っています。構成を整理したり、下書きについて相談したり、文章の引っかかりを見つけたりする補助役です。
テーマや舞台、登場人物の性格や関係性は私が考えます。薬局の描写に不自然な箇所がないか、医療を扱う文章として避けるべき表現が含まれていないか、最後に何を残すかも、自分で判断します。
隠してあとから説明するより、最初にこう書いておくほうが、この連載には合っていると思いました。
「袋詰め」に見える仕事の奥にあるもの
薬局のカウンターの奥は、外から見ると分かりにくい場所です。
薬を受け取る場面だけを見ると、処方箋を見ながら薬をそろえ、説明している人に見えるかもしれません。ときには、薬局の仕事が「袋詰め」に近い作業のように映ることもあるはずです。
でも、それをそのまま「違います」と返すだけでは、たぶん伝わりにくい。薬局の中で何を見ているのか、どこで迷うのか、なぜ確認が必要なのかは、外から見えにくいからです。
薬を渡す前には、処方内容に加えて、これまでの薬や体調、飲み方、困りごとなどを必要に応じて確認します。薬が生活の中でどう使われるのかを見るために、夜中に起きる回数や、家の中で困っていることを聞く場面もあります。
もちろん毎回ドラマチックな出来事が起きるわけではありません。むしろ地味です。けれど、その確認の積み重ねに、この仕事の大事な面があります。
第1話では、この「外から見えにくい仕事」を入口にしました。
説明ではなく、物語で届けたいこと
「薬剤師は袋詰めだけではありません」と説明することはできます。
でも、説明で分かる内容と、場面として感じる手触りは違います。
たとえば、患者さんに聞きたいことがあっても、どこまで踏み込むべきか迷う瞬間があります。確認が必要だと分かっていても、待合の空気や相手の表情を見て言葉を選ぶような、小さな判断が何度も続きます。
そうした空気は、解説よりも物語のほうが近い形で届けられるかもしれない。
そう思って、この小説を書き始めました。
薬剤師を特別に大きく見せたいわけではありません。カウンターのこちら側で実際に起きている判断や迷いを、できるだけ普通の仕事として描きたいです。
薬局を知らない人にも読めるように
この小説は、薬剤師だけに向けた内輪話にはしないつもりです。
薬局の仕事をほとんど知らない人にも、職業ものや商店街の物語が好きな人にも、桜ノ町薬局の中をのぞくように読んでもらえたらと思っています。
専門用語は出てきますが、用語を覚えるための小説ではありません。制度を勉強するための話でもありません。
薬局の人たちが、日々の業務で何を見て、何に引っかかり、どんな言葉を選ぶのか。
そこを読んでもらえたら十分です。
作り方は、対話と確認のくり返しです
制作では、私がテーマや舞台、登場人物、薬局現場として外せない条件を決めています。
そのうえで、AIと対話しながら、各話の流れを詰めます。
どんな患者さんが来るのか、薬局内で誰がどう動くのか、主人公がどこで引っかかるのか。最後に何を残すのかも確認します。
本文ドラフトができても、そのまま公開するわけではありません。薬剤師の目で不自然な箇所を確認し、医療描写として避けるべき表現や、整いすぎた文章を見直します。
AIは便利です。でも、薬局の空気を最後に判断するのは私です。
最終判断は、私がします
医療や薬局を扱う以上、ここは曖昧にしません。
登場人物・薬局・医療機関はすべて架空です。実在の勤務先、同僚、患者さんが特定される情報は扱いません。
また、この小説は個別の医療助言ではありません。薬に関する判断や相談は、実際の現場で確認するものです。
物語として読める形にしながら、薬局描写を雑にしない。
この二つを外さないように、薬剤師として確認しながら書きます。
全9話、完結までnoteで公開します
このシリーズは、全9話の連作としてnoteで公開していきます。本文はすでに最終話まで書き上げてあるので、途中で止まる心配はありません。
あわせて、note創作大賞2026のお仕事小説部門に応募します。大きく構えすぎず、でもせっかく書くなら、読んでくれる人に届く場へ出してみたいと思いました。
各話は、読み切り感のある連作短編です。どの話から読んでも一つの出来事として読めますが、第1話から順番に読んでもらうと、桜ノ町薬局の人たちの関係や、町に少しずつ近づいてくる変化も見えてくるはずです。
小説として楽しんでもらうことを、いちばん大事にしたいです。
まずは第1話から
第1話のタイトルは「薬は、薬の話じゃない」です。薬局の仕事が「袋詰め」に見えるところから、物語は始まります。
薬局で薬を渡すまでに、何を見て、何をたしかめているのか。なぜ、処方箋の内容だけでなく、患者さんの生活までたしかめる瞬間があるのか。
その確認が、患者さんの暮らしの話につながっていく。そんなところから、桜ノ町薬局シリーズは始まります。
薬剤師・薬局関係者の方には、「あるある」としても読める話になっていると思います。薬局をあまり知らない人には、読み終えたあとに、この仕事を少し知ってもらえたらと思っています。
まずは第1話から読んでもらえたらうれしいです。
第1話はこちらです。
シリーズ全話は、こちらのマガジンにまとめています。
