PFASは「市場」になった|栗田工業がアメリカ企業に出資した理由
PFASの情報を追っていると、頭が「規制」と「健康被害」のことがいっぱい目に留まります。
どこで検出されたのか。
どんな規制が始まるのか。
健康への影響はどこまで分かっているのか。
もちろん大切な話です。
でも、私には、まったく別の角度のニュースに目が止まりました。
水処理最大手の栗田工業が、アメリカのPFASスタートアップ企業に出資したというニュースです。
健康や規制の話ではなく、お金と戦略の話。
PFASが「怖いもの」から「市場」へと表情を変えた瞬間を見た気がして、私はしばらくその記事を眺めていました。

■ 2000円の浄水器から始まった興味
もともと栗田工業に注目したきっかけは、ホームセンターでも買えるPFAS除去浄水器でした。
栗田工業グループは、PFOSやPFOAの除去に対応した蛇口直結型やポット型の浄水器を展開しています。
価格は2000円台から。
河川や地下水でのPFAS検出が相次ぐなか、
「まずは生活者が手の届く価格で対策できるようにする」
という考え方に好感を持ちました。
もちろん、「8割除去」や「90%除去」といった数字は使い方や条件によって変わります。
それでも、
「何もできない」
と
「まず一手打てる」
の間には大きな違いがあります。
その後調べてみると、栗田工業は1949年創業の水処理専業大手でした。
半導体工場の超純水。
工場排水処理。
土壌・地下水浄化。
分析サービス。
浄水設備。
水に関する技術を幅広く持つ総合企業です。
あの数千円の浄水器は、その巨大な技術力の一番身近な出口だったのです。
■ 「使わない・測る・除く・濃縮する・壊す」を全部やろうとしている

栗田工業のPFASへの取り組みを追っていて、私が何度も驚かされたのは、その射程の広さでした。
まず、PFASを使わない方向への取り組みがあります。
積水化学工業や旭有機材などと連携し、半導体工場などで使われる配管やバルブをPFASフリー化する取り組みを進めています。
つまり、
「そもそも使わない」
という選択肢を増やそうとしているのです。
その一方で、
PFASを測定し、
除去し、
濃縮し、
最終的には無害化する。
PFAS対策は本来、この一連の流れが必要です。
どこか一工程だけでは完結しません。
栗田工業は、その全体をカバーしようとしているように見えます。
一つの製品や技術だけで勝負するのではなく、
PFAS問題全体を支える仕組みを作ろうとしている。
そんな印象を受けました。
■ アメリカのPFASスタートアップへの出資

そんな栗田工業の動きに、新しい一章が加わりました。
2026年4月、同社はアメリカのCyclopure社への出資を発表しました。
Cyclopureは2016年創業のPFAS吸着材スタートアップです。
同社の主力技術「DEXSORB」は、植物由来のでんぷん成分であるβ-シクロデキストリンを活用した吸着材です。
PFASを選択的に捕捉し、
再生利用が可能で、
さらに捕まえたPFASを高濃度に濃縮できるとされています。
PFAS対策では、
「捕まえる」
だけでなく、
「その後どう処理するか」
も重要な課題です。
DEXSORBは、その後工程まで見据えた技術として注目されています。
PFASを除去する技術は数多くあります。
しかし、「捕まえた後」をどうするかは、今も残る大きな課題です。
■ 私の見方が少し変わった瞬間
ここで私の見方が少し変わりました。
これは単なる資材調達の話ではありません。
技術に出資し、
販売権を押さえ、
再生工場の建設にも関わる。
つまり栗田工業は、
「PFASを除去する装置を売る会社」
ではなく、
「PFAS問題そのものを事業として解決する会社」
になろうとしているように見えたのです。
規制が厳しいアメリカ市場で実績を作り、
将来的には日本やアジアへの展開も視野に入れているのかもしれません。
もちろん、その成否はまだ分かりません。
しかし、PFASを単なる環境課題としてではなく、
長期的な社会課題として捉え、
そこに投資をしていることは間違いありません。
■ 私がこの会社を追いかける理由
私はPFAS関連企業の動きを日々追っています。
栗田工業も、その中で以前から注目している企業のひとつです。
規制だけでなく、実際に解決策を生み出そうとしている企業が何を考え、どこへ投資しているのか。
そうした視点から、これからも定点観測を続けていきたいと思います。
PFASの話は、ともすると不安ばかりが先行します。
規制。
汚染。
訴訟。
健康リスク。
もちろん大切なテーマです。
でも私は、それと同じくらい
「解決しようとしている人たち」
にも興味があります。
技術を開発する人。
設備を作る人。
投資をする人。
事業として成り立たせようとする人。
そういう人たちがいるからこそ、社会は少しずつ前に進みます。
■ まとめ

PFAS規制はこれからも強化されていくでしょう。
しかしその裏側では、
PFASを測り、
除去し、
代替し、
無害化しようとする技術も進化しています。
栗田工業のアメリカ企業への出資は、その象徴的な出来事の一つに見えます。
PFAS問題は、単なるリスクの話ではありません。
そこには新しい技術が生まれ、
新しい市場が育ち、
新しい解決策が形になろうとしています。
私はこれからも、PFASの「その先」を追いかけていきたいと思います。
規制だけを追っていると見えない景色があります。企業がどこに投資し、どんな技術を育てようとしているのか。その動きもまた、PFASの未来を読み解く重要なヒントなのかもしれません。
公開情報をもとに、いち発信者の視点でまとめた記事です。投資助言や財務アドバイスを目的とするものではありません。また、製品性能は使用条件等によって変わる場合があります。

