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【包公案・名判事包青天の事件簿】第十八鍘 白塔巷

 さて、包公ほうこう東京とうけいを守護していた頃、街は平穏で、悪人は影を潜め、常に裁判に心を砕いていたため、訴訟が滞ることはなかった。

 皇佑元年正月十五日、包公は役人らと共に城隍廟での焼香を終え、戻る途中に白塔前の路地口を通りかかると、婦人が夫を泣いて悼む声が聞こえた。
 しかし、その声は半分悲しみ半分喜んでいるようで、哀痛の情が全くなかったため、包公は密かにこれを心に留め、役所に戻るとすぐに当番である鄭強ていきょうを呼び寄せて尋ねた。
「先ほど塔前の路地口で、一人の婦人が泣いていたが、誰のために泣いていたのだろうか」
 鄭強は答えた。
「あれは謝家しゃけ街の入り口に住む劉十二りゅうじゅうにが数日前に死に、その妻の氏が家の中で泣いているのですよ」
 包公は心の中で考えた。
(この者の死には必ず不審な点がありそうだ。呉氏が夫の命を奪ったのではないか。さもなくば、泣き声がどうして半分悲しみ半分喜んでいるようなことがあろうか)

 そこで人を遣わして呉氏を連行させ、夫がいかなる理由で死んだのかを尋ねた。
 呉氏は次のように供述した。
「わたくしの夫である劉十二は野菜を売って生計を立てておりましたが、不意に先月、急病で亡くなりました。南門外の五里牌の裏に埋葬いたしましたが、家には幼い息子がおり頼る当てもなく、それゆえ悲しんでいるのです」
 包公はこれを聞き、その婦人の顔に白粉が塗られているのを見て、喪に服している身でありながら、どうして身なりを整えているのかと不審に思った。
 すぐに人夫の陳尚ちんしょうを呼び、呉氏を伴って墓所へ行かせ、棺を開けて夫に傷跡がないか検死させた。

 陳尚は次のように報告した。
「劉十二の身体には全く傷跡がなく、病死であることに相違ありません」
 これを聞いた包公は机を叩いて激怒した。
「陳尚、貴様は不正を隠蔽し、わざと私の前で取り繕っているな。三日以内に真相が明らかにならねば、決して容赦はせぬぞ」

 陳尚は家に戻ると憂い、眉をひそめていた。その様子を見て妻のよう氏が何に悩んでいるのかと尋ねた。
 陳尚はこの事の次第を説明したところ、楊氏は意外な言葉を返した。
「あなた、死人の鼻の中まで確認されましたか?」
 陳尚は答えた。
「あの亡骸はもともと私が納棺したが、鼻の中までは確認しておらんな」
 楊氏は言った。
「鉄の釘を鼻の中に差し込み、人の命を奪う手口があると聞いたことがあります。そこを調べてみてはいかがでしょう?」

  陳尚もまた半信半疑であったが、すぐに妻の言葉に従って再び検死をしてみると、劉十二の鼻の中には果たして二本の鉄の釘が突き出ており、後頭部の髪の中から差し込まれていたようであった。釘の頭は髪で隠蔽されていた。
 そして、釘を取り出して差し出し、報告した。

 包公はすぐに呉氏を取り調べた。
 呉氏は初め白状しようとしなかったが、拷問にかけられると、屠殺人の張某と密通しており、夫に気づかれるのを恐れて殺害した経緯を自白した。
 調書が整うと、呉氏を夫殺しの罪で市中へ引き出し斬首に処すとし、人妻を弄んでその夫を死に至らしめた張屠殺人は軍役の刑に処すと判決を下した。
 裁きが定まり、役人は命令に従って刑を執行した。


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