ハンケチ
学生時代から付き合い始めてもう10年近くになる。
当然、彼とそのまま結婚する…そんな気になっていたが、最近お互いすれ違いが多い。なんとなく、そのまま別れてしまいそうな気さえする。
本当にこのままではまずいと思い、思い切って休日に遊園地に行こうと半ば強引に決めてしまったが、彼も承知をしてくれた。
待ち合わせ場所は最寄駅近くの喫茶店。いつものように10分くらい前に到着した私は喫茶店へと足を運ぶとそこには、いつもは遅れてくる彼が入り口で私を待っていた。何となく固い彼の表情に嫌な予感しかなかった。
「ちょっと話があるんだけど…歩きながら話さない?」
私がうなずくと彼は駅へ向かいながら歩き、話し始めた。
「単刀直入に言うね」
「俺たちもう別れよう」
えっ!なんで急にそんなこと言うの?
10年間が走馬灯のようによみがえる。
「ごめん、好きな人ができたんだよね、ほんとにごめん」
今までのことが全てうそだったかのような錯覚に涙が止まらずあふれ出してきた。
「ごめん、ほんとうにごめん」
「俺もう行くから」
待って!すがりつく私の腕を振り払い
「ごめん」
無情にも彼は泣きじゃくる私を置き去りにし、駅の改札へと続く階段を彼は駆け上がっていった。どのくらいの時間だったのか記憶にないけど独り泣いた。
そして私は歩き始めた。
駅の一階はロータリーとなっており、バス停やタクシー乗り場となっている。少し冷静になった私は、バス停近くの公衆トイレでメイクを直すことにした。涙をぬぐう私の前に男性トイレから超イケメンが現れた。
そして、その彼は私の涙に気付いたのだろうか
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
捨てる神あれば拾う神あり?
運命の出会い?
絶対そうだ!
そして彼は、ハンケチを私に差し出した。

一瞬の出来事で百年の恋も冷めるという。今まさにその気分だ。
だ、大丈夫です!
私は逃げるように女子トイレに入り、
洗面所でメイクを直しながら我に返った。
私は潔癖症ではないけど…例え超イケメンでも、
もしかしたらうんこした後で拭いたかもしれないハンケチで涙は拭えない。
了

表題画像は ノラ猫ポチ さんにお借りしました
ありがとうございます
賑やかし帯はこちら
いつもありがとうございます
では 素敵な1日を✨
