令和6年 司法試験予備試験 論文再現答案 実務基礎科目(民事・刑事)評価A
みなさん、こんにちはkingstimeです。予備試験論文再現答案シリーズも今回で最後となりました。
実務基礎科目は、正直全く自信がなく最高でもCだろ、という予測でしたがまさかのAでした。民事は会社の行為の要件事実は全く把握していなかったし、和解の要件事実も知らなかったので正直だめだと思っていました。刑事についても、時間が足りず処理しきれないまま書くことになりました。
結局現場では答案構成する時間もなく必死に書いた、という覚えがあります。正直論理一貫性も相当怪しい。そもそも質問にちゃんと答えた自信もない。
それなのに、みなさん。A評価を頂けるんですよ!夢がありますよね。おそらくAの中では順位の低い方(300位に限りなく近い)だと思いますが、他の方も混乱していたことが分かりますね。
そのため、A評価を取るために特別の才能は何もいらないんだろうと思います。現場で落ち着いて考え、首尾一貫したことが書ければそれだけで上位答案ではないでしょうか。
以下、再現答案です。
民事実務基礎
第1設問1
1小問(1)
訴訟物は「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」である。
2小問(2)
請求の趣旨は「被告は原告に対し、本件建物を収去し土地を明け渡せ。」である。
3小問(3)
請求原因事実は「①原告は本件土地を所有している。」「②被告は同土地上に本件建物を所有して本件土地を占有している。」
4小問(4)
抗弁として記載する事実は「①原告は被告に対し、令和2年7月1日賃料月10万円、毎月末日に翌日分を支払う、期間を30年との約定で本件土地を賃貸した。」「②原告は被告に対し同日抗弁①の賃貸借契約に基づき本件土地を引き渡した。」
第2設問2
1小問(1)
(i)については①再抗弁として主張するべきであると考える。そして、具体的事実は「①令和5年5月から令和6年2月の各月末日は到来した。」「②原告は被告に対し令和6年3月7日①の賃料合計100万円の支払いを催告した。」「③令和6年3月21日は経過した。」「④原告は被告に対し、令和6年3月31日到達の内容証明郵便をもって本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。」である。
(ii)については民法612条1項2項に基づく賃借権の無断譲渡を理由にする無催告解除の抗弁であると考えられる。本件では、賃借人AがY会社を設立する際に本件建物を現物出資しており、これにより建物の賃借権も従たる権利としてYに移転している(87条類推)。よって、「賃借権を譲り渡し」「第三者に使用収益させた」といえる。そうすると、抗弁事実と両立し、その効果を覆しうるものとして再抗弁として主張は可能である。しかし、本件では、Aは個人で腕時計販売を営むために上記行為に及んでおり、従前と変わらずAのみがその土地を使用しているのであるから、土地の利用態様は変化していない。そして、612条の解除も賃借人が第三者に土地を使用収益させることが賃貸人に対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があれば解除は認められないところ、本件の上記のような事情を踏まえると再々抗弁が功を奏する可能性が高い。そのため、こちらの主張はすべきとはいえない。
2小問(2)
① イに入る事実は「Aは同日Xに対し、本件商品を引き渡した。」である。
② 被告の抗弁は相殺の抗弁であるところ、相殺の抗弁を主張するには民法505条但し書で債権の性質がこれを許さない場合には相殺ができない。そして、被告主張の自働債権は売買契約に基づく代金支払い請求であり、双務契約である(同法555条)である。そのため、同時履行の抗弁権(同法533条)が付着しておりこの場合、同法505条但し書で相殺ができない。そこで、同時履行の抗弁を消滅させるため反対給付の履行を提供したことを主張する必要があり、そのために、イの事実を記載すべきである。
第3 設問3
1小問(1)
(う)に入る事実は「XはAに対し、令和4年11月9日、再々抗弁アの代金債務の弁済として100万円を支払った。」
和解には確定効があり(696条)、あ及びいの事実によって、和解で確定した内容の中で当事者が争いの対象とした主要な事項について各抵抗が生じる。本件では売買契約の代金額を100万円とする旨を和解で合意しており、それにより、当事者間での代金債権は100万円と確定する。もっとも、その100万円の債権を消滅させる主張をXとしてはするはずであるから、加えて100万円の弁済の事実を主張した。
2小問(2)
(i)について
① 弁護士Qに対してAの署名部分がA自身の筆跡によるものか(Aの筆跡と一致するか)を確認するべきで ある。②そして、理由としては、本件合意書提出したP側がその真正を証明すべきであるが(民事訴訟法228条1項)、A自身による署名がある場合、同法228条4項により内容の真正が推定される。反対にA自身による署名がない(Aの署名と一致しない)場合には、推定が働かないので、他の証拠を用いるか、べつの手段で内容の真正を立証する必要が生じる。よって、方針を決めるためにも上記事項を確認する必要がある。
(ii)について
本件和解合意書はその書面によって意思表示をなす処分証書にあたる。そして、処分証書についてはその内容の真正が証明された場合には裁判所は特段の事情がない限りその通り事実を認定する。
そして、上記の通り、文章は挙証者の側がその内容の真正を証明する必要があるが、本人またはその代理人の署名があれば内容の真正が推定されることになる(228条1項4項)。
以上を前提に、まずQがAの署名であることを認めた場合、あくまで、同条4項は事実上の推定と解されており、立証責任はこの場合もQ側に転換しない。裁判所の自由心証への過度な制約になるからである。そうすると、Q側としては上記推定の基礎となる「内容が確定した後に署名がされた」という経験則を覆す事実を主張してくる可能性がある。これは上記推定を覆す反証であるから、真偽不明においこめば推定は働かなくなる。そこで、Pとしてはその反証よって真偽不明に追い込まれないように本証をしていく必要がある。
他方、QがAの署名ではないとしたら、文章の内容の真正は推定されないことになる(228条4項)。そこで、Pとしては、XA間の和解契約をその他直接証拠があればそれにより、なければ間接事実の積あげにより立証していくことになる。具体的には、和解日の当日に両者が会っていたことや、詐欺ないし錯誤の事実があるのにXがそれを主張しなかったことなどから推定していくことになる。
第4設問4
① 強制執行を申し立てるにあたって、Zに所有権が移転している以上、Zに対して執行力が及ばない限りZに対して強制執行をすることができないところ、本件ではYからZに所有権が移転したのは、令和6年10月14日であり、口頭弁論終結前であるから既判力はZに及ばず(115条1項3号)、訴訟承継もしていないからZに執行力は及ばない。そうすると、上記の通り、Zに強制執行できないのである。②そこで、Pとしては、占有移転禁止の仮処分(民事保全法62条)ないし建物収去土地明け渡し制球権を保全するための建物の処分禁止の仮処分(同法55条)という係争物に関する仮処分(同法23条1項)を申し立てる(同法2条)ことが考えられる。
以上。
刑事実務基礎
第1設問1
1小問(1)
本件車両内の本件フェリーのチケットの押収は「被疑者…が遺留した物」に当たるから領置(刑事訴訟法(以下、法令名略)221条)として占有取得の時に強制力を伴わないので、強制処分(197条但し書)に当たらず令状無くしてなしうる。次に、写真撮影については、本来五感の作用でその物を感知する処分であり、検証に当たり得るが事件現場の撮影をするような場合には任意捜査である実況見分としてなしうる。よって、こちらも令状(218条1項)は不要になる。
2小問(2)
令状が必要である理由は、強制処分(197条但し書)については令状主義が及び原則として令状が必要であり、これに当たるのは個人の黙示または明示の意思に反して、その重要な権利利益に実質的な制約を加えるものである。そして、強制採血は承諾がない限り、その意思に反して身体への侵襲をともなうため、重要な権利利益への制約がある。よって、被処分者の意思に反してその重要な権利に実質的制約を加えているため、令状が必要である。そして、必要な令状の種類について、血液は人体の中で恒常的に機能しており、身体の外表を触れる検証にとどまるものではないし、また、その採取には専門的知識・経験が要求されるため、鑑定処分(223条、225条)といえ、鑑定処分許可状(225条3項)が必要である。加えて、鑑定は直接強制する明文がない(225条は172条を準用していないし、225条4項が準用する168条は139条を準用していない。)から、身体検査令状(218条1項)を必要とするべきである。
第2設問2
1小問(1)
本件の争点はAが詐欺をした事実(故意または不法領得の意思)を否認していることから、捜査の目的も主観面の立証のための証拠を集めることが中心になると考えられる。仮にAがVに本件車両を借りる以前からそれを自宅に持ち帰る意思を有していた場合、通常期間内に返却する意志を有する者が、車ごと船に乗せて帰ることを考えないのが自然だから、賃貸時の故意ないし、不法領得の意思が推認されることになる。つまり、借りる以前から車を船に乗せる意思を有していたという事実は故意及び不法領得の意思を推認する間接事実となる。そして、それを証明する証拠(間接証拠)として、借りる以前から本件車両のチケットを買っていたかを明らかにするため、日時の確認をしているのである。
2小問(2)
(1) 積極方向へ働く事情
AはVから本件車両を買った際に後払いを申し出ている。このことから、Aは当初から一切お金を払う意思がなかったものと一定程度推認される。加えて、事件後のAの所持金は5万円であり、金銭がほとんどない状況であった。そのため、当初から金銭を持っていなかったことが一定程度推認されるとすると、詐欺の目的(故意)を有していたことが一定程度推認されることになる。また、令和6年2月5日にXに対して、「昔から欲しかった」車種であることを伝えていたことからも当初から不法領得の意思を有していたものと一定程度推認される。
(2) 消極方向へ働く事情
もっとも、上記の事実について前者は一時的な手元不如意で支払うことができなかったということは考えられるし、また、所持金がなかったことも島での観光の時に使ってしまったことなどが考えられ推認力は著しく低い。さらに、Xへの5日の発言についても借りた後、欲しくなった可能性も十分にあり、推認のていどは弱いものと言わなければならない。
他方、本件車両のチケットを買ったのが、令和6年2月4日午後6時30分であり、船の時間からこのチケット使って帰宅したことが考えられるところ、Vから本件車両を借りた後に当該チケットを買っていることと、乗客用チケットはそれ以前に買っていることを合わせ考慮すると、本件はVから借りた当初は故意ないし不法領得の意思を有していなかったものと相当程度推認される。
以上のことから、検察官は単純横領罪で公判請求したのである。
3小問(3)
㋒については、上記の通り、フェリーで自宅に帰る際に本件車両ごと持ちかえるためチケットを買ったのが、令和6年2月4日6時30分以降である必要がある。そして、㋐および、㋑についてはそれ以前であるから、横領罪の成立時点とすることはできない。そして、㋒の6時45分はAが自宅に帰るためのふぇり0に乗った時点であり、この時点で既遂に達するから採用された。
他方、㋐及び㋑についてはそれぞれ、本来返却する時点と電話で返しに行く旨を伝えた時点であり、検討された。
第3 設問3
条文の根拠は被告人以外の者の調書であり、検察官の面前で採られたものであるから、刑事訴訟法321条1項2号を検討するべきである。
「相反する」につき、Xは他の証拠や立証事項と相まって異なる事実認定を導く場合をいうところ、Xは調書では、Aから電話があったことやAが家に来た旨供述しているにもかかわらず、証言ではそれらを否定しており、上記場合に当たる。また、特信情況につき原則として外部的付随的事情から判断するところ、AはXの中学からの先輩であり、その仲間が傍聴席におり、Xに終始目配せ等をしており、Xの証言は心理的圧迫を受けた状態でなされたものであった。よって、相対的特信情況も認められる。
以上のことから321条1項2号によって証拠能力が認められる。
第2設問4
1小問(1)
弁護人は消極的真実義務をおっており(弁護士職務基本規程(以下、規程)5条)、裁判所や検察の真実の探求を積極的に妨害してはならない。他方、弁護人は依頼者の意思を実現すべく誠実義務(同条)を負っているため、弁護人としてはかえって不利益になる旨を説明し、それでも翻意しなければ無罪主張するよりない。
2小問(2)
この場合も嘘をつくとかえって不利益になる旨を説明する(規程21条、22条)べきである。
以上。
若干公開するのも恥ずかしい答案ですが、「これでAを取れる」というところで、みなさんも変に手を広げず、今やってらっしゃる教材を確実にこなしてくださいね。変な情報に騙されないように。
