令和6年 司法試験予備試験 論文再現答案 商法 評価A

 続きまして商法です!こちらもA評価をいただいた教科ですね。民訴や憲法とは違って商法はAなんじゃないかな、と予測してました。個人的には難しいところがなかったのですが、「他の人は難しかった」という感想を持つ人が多かったようです。そのため、自信がありました。

 商法が簡単だった理由としましては、条文の構造を把握していたので設問2で条文を探す時間を要しなかった点、設問1の論点は重問で抑えていた点です。

 来年以降予備試験を受ける方へのためになる名言
「暗記は最後でいい。試験当日に覚えていればいいんだ。例えば試験2か月前に論証をすべて暗証できても意味がない。」

 これは私がアガルートのラウンジに一度だけ招待された最、勉強初期段階の私に谷山講師が教えてくださった言葉です。
 暗記をしている時間があったら新しい問題を解いた方が効率的です。試験前日や一週間前に暗記をすれば十分間に合います。そのため、それまでの勉強は「理解」に重点を置きましょう。そうすれば、自然と暗記が楽になります。知識が50の状態で暗記するのと100の状態で暗記するの、どちらが容易いか言うまでもないですからね。

  では、以下再現答案です。

第1設問1
 1小問(1)
 (1)本件買取りは、会社法上必要な手続き(会社法(以下、法令名略)156条以下、155条3号)を経て行われており、取得手続きに違反はない。
 (2)次に、財源規制違反について、自己株式の取得の際には、その会社の分配可能額を超えてはならない(461条1項2号)とされている。本件では、甲社の分配可能額は本来800万円である。そして、Dから甲社が買い取った自己株式の額は1000万円である。よって、分配可能額を超えており、財源規制違反がある。
 (3)では、財源規制違反をした株式の取得の効果についていかに解するべきか。
 ここで、「効力を生ずる日」という文言(461条柱書)や、同時履行の抗弁(民法533条)により、株主に株式の返還を求められないことを理由に財源規制違反の効力を有効と解する見解がある。しかし、法の文言は決定打にはなり得ないし、462条を民法533条の適用を排除する特則であると解すれば足りる。
 そもそも、財源規制違反の株主総会は決議内容の法令違反があり、株主総会の無効原因である(830条2項)。そして、無効な決議に基づく自己株式の取得は無効と解するのが自然である。以上のことから、財源規制違反の自己株式の取得の効力は無効と解するべきである。
 なお、民法708条で不法原因給付として株主に株式の返還が請求できないと思われる点が問題になるが、却って違法状態を存続させることになるので、この場合同条は適用されないと解するべきである。
(1)    以上のことから、本件買取りは無効である。
2小問(2)
 1Aの責任
 上記の通り、本件自己株の取得は財源規制違反があり、「前条第1項に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合」に当たる。そして、Aは甲社の代表取締役であるところ、代表取締役は「業務執行者」に当たり(2条15イ、363条1項)、株主と連帯して、交付額を支払う義務を負う(46条)。同条二項で「注意を怠らなかったことを証明した」ときは責任を免れるところ、Aは令和6年3月31日の株主総会において令和6年3月31日の分配可能額は1200万円であると発言し、本件買取りの決議の承認を得たところ、真実は800万円であり、事実に反している。そして、そのことについて従業員Gの過失が存在しているが、それを取締まるのも代表取締役の監視監督義務の一内容と解するべきであるから、Aは注意を怠ったといえる。
 以上のことから、Aは交付金全額についてD連帯して責任を負う。
2Dの責任
 Dは甲社の株主であるところ、本件買取りに際して、甲社から「金銭等の交付を受けた者」に当たる。よって、462条柱書により、Aと連帯して交付額全額について支払う義務がある。また、株主であるから、同条2項に基づく免責はない。
3Fの責任
(1) Fは甲社の監査役であり、462条は監査役の責任について定めていなので、通常の会社に対する任務懈怠責任(423条)を追求していくことになる。
(2)Fは「監査役」である。また、「任務を怠った」につき、監査役は計算書類等を監査する職務を負うが(436条1項等)、Fは計算書類と会計帳簿の内容の照合を行ったのみで、内容に立ち入った精密な監査を行っていない。よって、「任務を怠った」といえる。
 加えて、Fに帰責事由が認められるし(428条1項)、Fが正確な監査をしていれば結果を回避できたかもしれず、因果関係(「よって」)も明らかである。そして、分配可能額を超える額について甲社に損害が生じている。
(3)以上のことから、Fは423条に基づく損害賠償責任を負う。なお、Fの賠償額はAおよびDの責任により支払われなかった残額ということになる。
第2 設問2
1令和6年9月2日の段階では未だ売渡請求の効果が生じていないため、Eとしては差し止め(179条の7第1項)を求めることが考えられる。
(1)「売渡株主」につき、EはAの請求により対象会社たる甲社株のすべてを売り渡すことを求められており、これに当たる(179条の2第1項2号)。
(2)「不利益を受けるおそれ」につき、Eは今回の売渡で甲社の株式をすべて失うことになるため、株主としての地位に不利益であることは明らかであるし、下記の通り、適正価格とは言え低い価格での売却であり、「不利益を受けるおそれ」があることは明らかである。
(3)「次に掲げる場合」につき、本件では同条1号及び、3号事由を検討する。
 ア 1号について
本件では、Aは株式等売渡請求(179条)により、Eから株式を取得しようとしているが、必要な手続きを踏んでいるかを検討する。仮に必要な手続きを踏んでいないと、「法令に違反」するものとして、「次に掲げる場合」に当たる。
 まず、Aは甲社の株式の500株をもともともっており、B,C,Dから取得した(139条、2条17号、139条)ことで、甲社株900株を取得している。そして、甲社の発行済み株式の総数は1000株であり、「株式会社の総株主の議決権の10分の9以上」を有する株主であり、「特別支配株主」に当たる。
 そして、そして、特別支配株主は、対象会社に対し179条の2第1項に掲げる事項を通知しなければならない(179条の3第1項)ところ、令和6年8月27日Eに通知している。また、8月20日の取締役会の承認を受けており(同条2項)、事前備え置きもしている(175条の5第1項)。
 以上のことから、取得手続き違反は存在しない。よって、「法令に違反する」とはいえず、1号には当たらない。
 イ 3号について
 「179条の2第1項第2号又は第3号に掲げる事項」につき、対価として交付される額が、「著しく不当」であれば差し止めが認められることになる。
 本件では、確かに、税理士Hによって適正とされた価額の範囲内であり、著しく不当とはいえないとも思える。しかし、AはB,C、Dから取得した際には一株10万円で買い取っており、Eについてだけ6万円というのはあまりに不公平である。よって、「著しく不当」といえる。
 以上より、3号事由が認められる。
ウ 以上のことから「次に掲げる場合」に当たり、差止請求は認められる。
 
2また、Eは価格を適正にするため、裁判所に対し、売買価格決定の申し立て(179条の8)をすることが考えられる。
本件では、Aから「株主売渡請求」があり、Eは上記の通り「売渡株主」に当たる。そして、現在令和6年9月2日であり、取得日は同年9月20日だから「取得日の20日前の日から前日まで」といえる。
 以上より、裁判所に対し、価格決定の申し立てをすることも可能である。                     以上。


 商法は試験委員が欲張らないという印象があるので司法試験でも得点源にしたいですね。

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