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『付き合ってないハズなのに距離感ゼロな彼女が、東京の最新スポットを口実に毎回僕を連れ回してくる』(第39話)

【登場人物紹介】
コウ:少し奥手で、距離感ゼロなメイにいつも振り回されつつもドキドキしている男子。
メイ:流行に敏感でコウへの好意が隠せていない、自称ギャル(?)な距離感ゼロ女子。

第39話:夏至の夜のキャンドルライトと、近すぎる君の体温

「ねえコウ、今日が何の日か知ってる?」

六月二十一日の日曜日。梅雨の晴れ間で少し蒸し暑い夕暮れ時、メイは僕の部屋のベッドに我が物顔で腰掛けながら、スマホの画面を突きつけてきた。
距離が近い。差し出された画面を見るフリをして視線を横にずらすと、ノースリーブの隙間から覗く華奢な肩と、ふわりと漂うシャンプーの甘い香りに心臓が跳ねる。

「えっと……日曜日?」
「ぶぶー! 正解は『夏至』でした! というわけで、今からお出かけするよ!」
「え、今から? もう外、暗くなり始めてるけど……」
「だーかーら、いいんじゃん! ほら、これ見て!」

メイが画面をタップする。そこに映っていたのは、東京の街灯りが一斉に消え、温かみのあるキャンドルの光だけが灯る幻想的なイベントのニュースだった。

「『100万人のキャンドルナイト @ 増上寺 2026』! 20時になったら、東京タワーも消灯してキャンドルの灯りだけになるんだって。めっちゃロマンチックじゃない?」
「増上寺って、芝公園の? 確かに綺麗そうだけど……」
「でしょ!? ほら、ぐずぐずしてると特等席なくなっちゃうよ。はい、上着持って!」

メイは僕の手をギュッと握ると、断る隙も与えずに部屋のドアへと引っ張っていく。付き合ってないハズなのに、彼女の手のひらはいつも温かくて、僕を簡単に置き去りにしていく。

――20時、増上寺境内。

「うわあ……すご……」

カウントダウンと共に東京タワーのライトアップが消え、境内に並んだ無数のキャンドルが、ゆらゆらとオレンジ色の光を放ち始めた。
昼間の喧騒が嘘のように、静かで、どこか厳かな空気が辺りを包み込む。

「ね、連れてきて正解だったでしょ?」

隣に立つメイを見ようとして、息が止まりそうになった。
いつもよりぐっと近い。というか、完全に僕の腕に自分の腕を絡めている。キャンドルの淡い光に照らされたメイの横顔は、いつもより少し大人びて見えて、心臓の音が境内の静寂を壊してしまいそうだった。

「……うん。すごく綺麗だね、メイ」
「うん……。でも、キャンドルも綺麗だけど……」

メイが上目遣いで僕を見つめてくる。その瞳に、小さなキャンドルの炎と、僕の顔が映っていた。

「こうしてコウと手を繋いでる方が、私は何倍もドキドキするかなー、なんて」
「えっ……!?」

耳まで熱くなる僕を見て、メイは「あはは! 顔真っ赤!」と悪戯っぽく笑う。
だけど、僕の腕を掴む彼女の小さな手は、キャンドルの火よりもずっと熱く、そして微かに震えているように思えた。

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