連載開始/「展示会デザイナー」はどうあるべきか。
2025年11月から、展示会業界の業界紙「見本市展示会通信」にて、連載が始まりました。テーマは、「展示会デザイナー」。
内容的には、様々なデザイナーの方にも当てはまることが多くなると思うので、「デザイナー」をテーマに、と言い換えてもいいかもしれません。
本連載は、別途「イベスル」さんでWEB掲載もされていますので、ここではこの連載の内容に触れつつ、少々関係する内容を加筆しつつ、ご紹介していこうと思います。
さて。今回は、連載の第1回をご紹介。これは、2025年11月に発刊したものになります。
連載/展示会デザイナーはどうあるべきか。
第1回は、これから始まる連載を読んでいただく前に少々私自身のことについて触れた内容になっています。当社は社員10人にも満たない小さなデザイン会社なのですが、「展示会のデザイン」をテーマにしていることや、会場で同業の方と話したり、年に3回仲間と展示会業界の交流会を行う中で、業界の様々な方と交流をしてきました。大きな組織ではないのですが、小規模だからこそ、経営者としての立場で言えることがあります。また、私自身が大きな組織から離れ、自身で会社を立ち上げ、今の状態を作り上げてきた経験があるからこそ、お伝えできる内容がある。そう考えています。今後の連載の内容のきっかけになるような、そんな「前段の話」を第1回ではお伝えしています。
第1回/前段の話
今回から始まる連載では、展示会業界の「組織の在り方」についてお伝えしたい。とは言え、当社は社員10人にも満たない、業界の中でもかなり小規模の会社だ。社員数数百名を超える大会社も多いこの業界において、また、多くの諸先輩方もいる中で、小さな企業の代表がお伝え出来ることは、ほんの一端のことだけかもしれない。しかし、今回はテーマを「デザイナー」とすることで、展示会業界の「組織」について私なりにお伝え出来ることを書いていこうと思う。
展示会業界で活躍する多くのデザイナーの方々にとって、そしてデザイナーと共に業務を進める人々にとって何らかの行動のヒントになることを伝えられれば、と願う。
連載の初回である今回は、少々自社のこと、私自身のことについてお話することをご容赦いただきたい。
〇独立・起業~展示会業界に特化するまで
勤めていたゼネコンを退職し、建築設計を行う私が起業したのは2005年で、当時は自宅の一室を事務所として登記し、何の実績もないところから始まった。ゼネコンに勤めていた時には営業担当が仕事を取って来てくれていた。しかし、独立した以上、自分で仕事を獲得しなければいけない。そこで、様々な交流会に出て色々な人に会い、人のつながりを作るようにした。
また、一方で飛び込み営業をしたり、雑誌に広告を出したり、営業代行にお願いをしてみたこともあった。しかし、大会社でもなく有名企業でもない、ましてや実績のない小さなデザイン事務所に対して、仕事を依頼してくれる会社はほとんどなく、結果的に消費者金融に借金をしなければいけないほどの苦境に立たされることになった。当時は経営に対する知識もほとんどなく、我ながら情けない有様だ。それが、あるきっかけにより「展示会ブースデザイン」に特化することで、変化することとなる。
「展示会ブースデザイン」に特化する。
そう決めてから、自身のHPを展示会のみに書き換え、1か月に1万通ほどのDMを出した。飛び込み営業や電話営業が苦手な私は、まず「どうしたら出展者側からこちらに連絡がくるようになるのか」を考えた。結果、HPには出展者が知りたくなるようなノウハウを記載し、DMは透明封筒に実績写真と集客ノウハウを入れ「開けたくなる」ような体裁にして、自身で調べた出展者の宛先に、メール便として送り続けた。1万通も送れば、2-3件の問い合わせには結びつくもので、たった2件でも当時生きていくにはなんとかなる数字でもあった。
少しの実績をつくり、それをDMとHPで紹介し、それをきっかけに新たな仕事を得ることを繰り返して、徐々に実績を作り上げる。これらによって、ようやくなんとか生きていけるようになる。
概ね、これが起業してから7年間くらいの流れになる。
〇クライアントの寂しそうな顔に直面する
展示会ブースデザインの業務に携わるようになった当初、ある出展者のことが今でも強く心に残っている。
ある地方のインテリア素材系の企業が自身の技術を展示会に出したい、と依頼が来た。HPに掲載していた小さな実績を見ていただいたことと、私がインテリアデザインを行っていたことが理由だったとのこと。
自身の実績をつくることができる、と息巻いた私は真剣にデザインを考え、雑誌に載せられるようなデザインのブースを作り上げた。
しかし、展示会の最終日、出展者の方は少し寂しそうな顔で、「ブースのデザインが良いって色々な方に言われました」という言葉と共に展示会場を後にされる。
この言葉の意味がお分かりだろうか。
つまり、デザインはいいと言われたが、出展した結果は出なかった、という意味である。
もちろん、それ以降、この企業から仕事を依頼されることはない。
〇展示会デザインの特徴
この時初めて、展示会のデザインは「結果」を出してこそ顧客満足が生まれ、次の依頼につながるものだ、ということを痛感した。客のためにしているつもりが、実際にはただの独りよがりで自身の作品しか作っていなかった。このことがとても恥ずかしく、そんな仕事を提供してしまったことに対して、出展者に対して心底申し訳ない後悔だけが残った。
このことがあってから、出展者が望んでいるものは何なのか、どうすれば来場者があつまり、どうすれば展示会最終日に出展社が喜んでもらえるのか、徹底して考えるようにした。
企業が生きていくことは簡単なことではない。ましてや成長をさせていくことはとても難しいことだ。そこには様々な障害があり、時に社会的な環境が、しかし多くの場合、自社の内部や自分自身にその原因は存在する。
展示会の業務、もちろんそれに限ったことではないが、仕事の依頼主が、依頼をしてよかったと「満足してくださること」が、次の依頼へとつながり、その積み重ねがひいては自社に利益と成長をもたらす。
本連載では、その「満足してくださる」ことがどんなことなのか、そのためにはどこを見つめ、どう在らねばいけないのか、私自身の経験を踏まえながら、デザイナーという職種を中心にお伝えしていきたい。
独立しようと決めた時から気づくと20年以上が経っていますが、これまで本当に失敗続きだったと言えるかもしれません。しかし、この「失敗続き」という表現は自身で口にするべきではない、と決めています。稲盛和夫さんの言葉に「チャレンジしているときは失敗はない。あきらめた時が失敗である」という有名な言葉がありますが、まさにその通りだと思います。自身の会社を作り上げていく中で、様々な壁、様々な反省点がありました。しかし、それらは全て「教訓」に変わり、それが蓄積して今に至っています。
失敗ではなく、教訓を得た。このように考えることが成功への条件なのではないか、と感じます。
さて。次回は、展示会における「成功」とはどういうことなのか。「成功の意味」について考えていきたいと思います。展示会という職種は「成功」という言葉とかなり近い仕事です。その意味に向き合うことは展示会デザイナーとして大切なことと感じています。
![竹村尚久[ 展示会デザイナー|SUPER PENGUIN 代表取締役]](/https://assets.st-note.com/production/uploads/images/24845129/profile_c7502e4b23978a4263b23d015a78516d.jpg?width=60)