インハウスデザイナーは自身のモチベーションをどう高めればいいのか。/若手社員に見られる不満の行方。
展示会業界の業界誌「見本市展示会通信」に連載中の「展示会デザイナーはどうあるべきか」。第7回の記事は、展示会デザイナーの「モチベーション」について。これはデザイナーに限らず全ての新入社員・会社員の方に通じるお話。「会社はそもそも完璧ではない」。このことを理解できると、意識が軽くなる、そんな「発想の転換」をテーマにお伝えします。
社会人の若手の頃、社内で上司の文句や会社への批判を言い続けていた時期がありました。決して、仕事がいやだったわけではないのですが、「なぜ、こうしないのか」「こうすればいいのに」という不満や批判の考えが終始頭にあったのです。このような状況は多くの人が経験があるのではないでしょうか。第3回の記事でもお伝えしましたが、展示会デザインという仕事は、同じような業務が波状的に終わることなく続くため「モチベーションを保つことが難しいデザイン業務」と感じています。今回、そして次回の記事ではそのような展示会デザイナーの方々に向けて、そして、同時に様々な社会人の皆様にとって、自身のモチベーションコントロールの参考にしていただければと思います。
第7回/デザイナーの「モチベーション」
これまでの記事で、展示会の仕事は「出展者を成功させること」が重要であり、そのプロジェクトの中心となるべきデザイナーには様々な側面から出展社をサポートする「成功させる力」が必要、という視点について述べた。
しかし、実際には「現実的ではない」、「受け入れられない」など、否定的に考えてしまう方も多いのではないだろうか。中には、それ以前に「そもそも、今の仕事に疑問を持っている」、「会社・上司に対して不満をもっている」などネガティブな思い・悩みを持っている方もいるかもしれない。そこで、今回は仕事に対する「意義の作り方」について、話してみよう。
〇仕事を「楽しい」と感じるか?
さて、まずはデザイナーの方、特に20代、30代の若手の方々に聞いてみたい。今の仕事、楽しいだろうか?
「楽しい」という方がいればそれに越したことはない。本稿を自身の行動の参考として読んでいただきたい。一方で、「楽しく感じない」という方は、本稿を読んで、是非日常の行動を変えるきっかけにしてもらえればと思う。
デザイナーに限らず社会人の若手の方にお会いすると、時々「モチベーションをどう上げればいいでしょうか」という質問を受けることがある。これに対して私は「会社などの環境が2割、しかし8割は自分自身の問題だよ」と答えるようにしている。会社が変わらなければいけない、という状況ももちろんあるだろうが、多くの場合、どんなに会社が変わっても結局別の不満が出てくることになる。モチベーションを上げるのは結局「自分自身の気持ちの設定次第」だ。
それであれば、具体的にどうやってモチベーションを上げるべきなのか。
私はそれにはいくつかの「発想の転換」が必要だと考えている。自身の考え方の根本を変えること。
このことについて、いくつかお話をしていこう。
〇「完璧」でない会社、そして上司
私自身もそうだったが、20代・30代の頃はつい会社や上司に対して批判的になってしまいがちだ。「どうして、こうなのか」「なぜ、そうしないのか」といったように。これは、仕事に前向きな人であればあるほど、このような不満は出てくることになる。
私も企業に勤めていた時代、このように会社や上司を批判していた。日頃、社内の状況を見ていると、上司や会社の行動について、思うところが多々出てくる。「もっとこうすればいいのに」と。それを同期や友人との飲み会において、言い合う、といったように。ある物件では、上司が考えたデザインに対して、「その案は下品だと思います」などといった大変失礼なことさえ、言ってしまったことがある。今から考えると非常に生意気な若手社員だっただろう。
しかし、自身で会社をつくり、スタッフを持ち、育成するようになって感じることは、会社も、そして上司も、さらには社長も、根本的に「完璧ではない」ということだ。
人はつい自分以外の人間・組織等に「完璧」を求めてしまう。「会社とはこうあるべきだ」「上司とはこうあるべきだ」という自身が勝手に作り上げた理想像とついつい比べてしまうのである。そして、その「自分が考える理想像」に反すると、批判と文句が出てしまう。
しかし、世の中に完璧な人・組織などはない。
足らないところ、できていないところ、未完成なところが多々ある。だからこそ、人を雇い、制度をつくってその未熟な部分を補完しようとする。上司にしてもそうだ。完璧な人はいない。だから、それを補完するようにスタッフが配置され、チームが作られる。
大切なことは、今自分がいる組織の中がどんな状況で、その中で自分はどんな役割を期待されているのか、組織のどんな未熟な点を補完するべく自分がいるのか、自分が「どう補完してあげれば」組織がうまく回るのか。自身の役割をまずは考えてみることだ。
この「完璧ではない組織の中で、自分に何ができるのか」を考える、という視点に自身を切り替えることができれば、自分が何をすればよいのかが見えてくる。与えられた仕事をただこなすだけでなく、今の組織に対して自分ができることが見えてくる。そうすると、徐々に自分を取り巻く環境が変わって見えてくることだろう。
〇「自分から」という視点
次の視点は自身のスタンスの問題だ。
「日本人論」に関する書籍を読むと、日本人の民族的性格について「集団主義」という言葉を目にする。農耕文化のムラ社会が発祥となる日本では、「個人の規範」よりも「集団の論理」が優先されてきた、というものである。このような特徴をもつ日本人は、自身がどう感じるかの前に、組織のルールに従うことを優先するよう習慣づいてしまっている。このような日本的組織の中では、自身の考えや意志を強く言わず、「指示されるまで待つ」という状況が起こりがちになる。例えば、指示された部署に異動し、指示された物件の担当になる、というように。
これの何がいけないのか、と思う方もいるかもしれない。
しかし、私は「自分が望む状況は自分自身で作り上げるべき」と考えている。「こんな物件を担当したい」。このような思いがあるのであれば、日頃から上司に率先して話しておき、「上司どうしの会話」にも耳を澄ませておく。もし、面白そうな物件の話が出ているようであれば、誰かに指名される前に「その物件、私にやらせてください」と自ら立候補すればいい。
また、異動したい部署があるのであれば、上司や会社に対して、その旨を明確に伝え、自分がその部署に向いている理由、異動して役に立てることを徹底的にプレゼンすればいい。
このように「待つ」のではなく、「自分から動く」ことが大事なのだ。この「自分から」という視点に切り替えることができれば、自身を取り巻く環境は、大きく変化して見えることだろう。
この「周囲はそもそも完璧ではない」という視点と「自分から動く」という視点が自分の中に生まれると、日頃感じていた不満がなくなってくることに気が付くだろう。是非一度、自分自身を見直してみてほしい。
では、次回はこのようなベースとなる視点変換の上で、どのように自身の「目標」や「やりがい」を設定すればいいのか、お伝えしていこう。
※本記事は、展示会業界の業界紙、「見本市展示会通信」2026年2月1日号に掲載してものを加筆修正してものです。本連載は、2026年12月までの連載を予定・進行しています。(WEB版では、2回を1つにまとめて掲載されています)
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