「空間デザイナー」にとって「前向きさ」は強力なPRポイントになる、という話。
店舗デザイン・展示会デザイン、そしておそらくオフィスデザインも。
展示会デザイナーに限ったことではないと思いますが、日頃展示会のデザインを行っていて、中小企業を中心とする企業の販促を担うデザインをする場合、そのデザイナーの「前向きさ」というのは実は一番大事なのではないか、と常々感じています。
おそらくこのことは店舗や飲食店を設計する店舗設計者など、「商空間」全般のデザイナーにも、同様に言えることではないかと。
中でも展示会ブースデザインはそれを切実に感じる職種です。
クライアントの「大丈夫でしょうか?」にどう答えるか。
展示会デザインの場合、「出展者」がクライアントになります。
その出展者にとって、展示会は数百万円という金額を投資して、わずか3日間のためだけにブースをつくり、会期が終了すると撤去して廃棄してしまいます。
その上で投資した額に見合う「結果」を出さなければいけない。そんな「ハイリスクな販促活動」となるわけで、そのような場のブースのデザインを任された際に、お客さんから「今回の出展、大丈夫でしょうか?」と問われた際にどのように答えるか、かなり重要だと思うのです。
「さあ、どうでしょう?・・」
というのは言語道断だとして、
「そうですね…全力を尽くしましょう」
でもやはりダメ。これだと、お客さんを不安にさせてしまいます。
そうではなくて、
「大丈夫ですよ! なぜなら・・だからです」
と即答できるようでなければいけない、と思うのです。
ポイントは、自信を持って「大丈夫です」と言い切るところと、その根拠を明確に示すこと。
もちろん、このように即答で回答するからには、ただ楽天的なだけではだめで、確たる自信と先を予測した上での返答が必要になります。
例えば極めて不利な小間位置になってしまった時でも、そして、不測の事態が起こってしまった時でも同様です。
そんな時こそ、自信を持って「大丈夫ですよ」と伝えなければいけない。
商空間デザイナーに求められる「プラス思考」「前向きさ」
このようなことを考えた時に、デザイナー、特に商空間、販促に携わるデザイナーは日頃から物事をプラスに捉えるような「プラス思考」「前向きさ」を持っていることがとても重要だと感じています。
特に多額の費用を要し、「瞬間的な販促活動」である展示会出展においては、「デザイナーが持つべき根幹となる素養」だと思うのです。
展示会の場合、多額の金額を出して出展するのは多くの場合、日本全国から参加される中小企業の方々。
大手企業だから予算がある、というつもりはもちろんありませんが、わずか3日間のために100万円を超える販促費、というのは、多くの中小企業にとっては、社運を賭けるほどの重大事業、そう言った企業も多くあります。
そんな企業の社運を賭けた展示会出展だからこそ、デザイナーに掛けられた思いは大きく、そして重いもの。
だからこそ、展示会デザイナーは、社運を賭けた「期待」に対して応えなければいけないし、その途中も常に安心しておいてもらいたい、そうあるべき、と考えています。
これは、店舗デザイン・飲食店のデザインでも同じことを言えるのではないでしょうか。
独立して店を持った店主にとって、店をデザインしてもらう、というのは人生を賭けた投資のはずです。
その店舗をデザインをする人には、自身を前向きにサポートしてくれる人であってほしい。
本当に「常に前向き」でいられるのか。
では、「竹村さんの場合、本当にいつも前向きでいられますか?」という投げかけもあるかもしれません。
本当に、出展に成功するのか。
こう思う出展社対して、常に前向きにあるべきなのですが、実際には、相手の小間位置(出展場所)を見た時にどうしようもなく良くない場所である場合や、絶対に出展者の方には言えないけど、「この商品だと難しいかもしれない・・・・」と感じることもあります。
そんな時、正直なところ、私も内心は「まずい・・・・・・」と感じています。
「まずい・・この場所は来場者がほとんど通らないかも」
「周りに大型企業ばかりに囲まれて立地的に不利だな・・・・」
こんな思いや
「この商品、ちょっと微妙なデザインだな・・・」
「完成度が低すぎる商品・・これだとバイヤーさんはおそらく反応してくれないかも」
このように感じることも多々あります。
私も同様です。
実際にはそのように感じることもしばしば。
展示会場の現実、来場者の心理を日頃展示会場にいるからこそ、ある程度の会場内での反応を想像することができます。
だから、そのまま出展した時の「結果」は容易に想像がついてしまう。
そんな時に、
「この場所だと集客は難しいですね」
とか、
「この商品だとバイヤーさんは反応してくれないでしょう」
と冷静に指摘してしまう。
一見良いようにも思えますが、これだと出展者の方は不安になってしまいます。
大切なことは「発想の転換」を習慣化すること。
「プラス思考」だから、「前向き」だから、マイナスのことは見えないというわけではないと思います。
人間ですから。
悪く思えるものは悪く映る。
そんなものなのだと思います。
でも、大切なことは、一見マイナスに見えることを見つめ直し、どのように考えたら「プラス」として捉えられるのか、どうすれば補えるのか、「発想の転換」ができることだと思うのです。
そして、その発想の転換が自然にできること、習慣化していることだと感じています。
マイナスな局面に立った時、どうしてもはじめはみんなネガティブに捉えがちです。
そんな時には、そのまま悲観的になってしまうのではなく、まず「このマイナスな状況を、どう捉え直せばプラスに考えられるだろう」と自問自答することが大切。
ほとんどの物事は、大抵の場合プラスにもマイナスにも捉えることができます。
どう考えたらプラスに捉えられるのか。それをまずは探るようにする、考えるようにします。
その「考え直したプラスの側面」が大したことでもなく、どうということのないものかもしれない。
しかし、マイナスに捉えるよりもはるかにマシです。
これが展示会デザインに置き換えるなら、このような感じ。
「小間位置が悪い。であれば、こうなることが予測される。この状況を活用して結果を出すためにはどうすればいいのだろうか・・・。
むしろ、人通りが少ないというのであれば、一組の来場者とゆっくりとしっかりと商談ができるチャンスなのではないか。
であれば、その状況を活用した方がいい。
まず長居をしてくれるような商品陳列、商談場所をつくり、それがブースの外から見える位置に置く。
見込み客であれば長く居てくれれば商談も何らかの結果を獲得しやすくなるだろうし、相手との関係性も深めることができる。
そうでなくても、ブースの外から来場者が内部にいる様子が見えると、他の来場者も寄りやすくなるだろう」
小間位置が悪いと出展者さんは不安になります。
ですので、出展者さんにはこのように伝えます。
「確かに今回は小間位置は良くないですね・・・。
でもご安心ください。
このような場所であれば、むしろ1社としっかりと話をできる、という利点もあります。
そんなブースにしましょう。
そして、できるだけ、事前に見込み客や既存客に声をかけて、会期前の事前アポをとるようにしてみてください」
とお伝えします。
まずは不利な状況を認めつつ、発想を変えてその場を活用するアイデアを伝える、そしてそれを冷静に、堂々と、「全く問題がない」という様子で答えるようにします。
自身が不安な様子は絶対に見せない、これも大事です。
「虚勢」「はったり」「背伸び」も大事
誰だって、マイナスに感じるものはマイナスに感じるもの。これはみんな同じ。
「前向きな人」「プラス思考」な人とは、このような「発想の転換」が習慣化できている人で、常にその癖がついている、そんな人なのだと思います。
加えて、相手に不安な様子を見せない、「虚勢」や「はったり」も大切です。
マイナスの局面に対した時に、実際には解決策がすぐには見えない時もあります。
そんな時でも「大丈夫です」と言い切る。
クライアントに不安な姿を見せればそれだけで、相手を不安にさせてしまいます。
ですので、まだ解決策が見えていなくても、まずは「大丈夫」と言い切る。
これがただの「背伸び」でもいいと思います。
特に経験値の低いデザイナーさんの場合、このような場面は多いことでしょう。
でも、背伸びでもいいからまずは相手に不安を与えないように言い切る。
相手に背伸びを見透かされるかもしれません。
でもマイナスに感じさせるより、「あ、頑張ってるな」と感じてもらった方が何倍もいいと思います。
そして、「はったり」でその場をしのいだら、もちろん、その期待に応えられるように、全力で解決策を考えます。
発想の転換を行い、不利を有利に考え直すことができないか、この状況を最大限に活用するにはどうすればいいのかを、全力で考えるようにします。
この「まずははったりでもいいから安心をさせて」の後の、「全力で解決策を考える」という行動が何よりも大事。
よく池にいるアヒル(白鳥??)に例えられますが、水面上の姿は優雅でも、水の中では全力で水をかいている、あんな感じです。
そして、次回の打合せで堂々と解決策を伝えればいい。
はったりと水面下の努力。
これもデザイナーには大切な素養だと日頃感じています。
誰だって「プラス思考人間」に変わることができる。
このように話していくと、
「いやいや、自分は日頃からマイナス思考なんで、むずかしいかも。つまりは商空間デザイナー失格かも・・・・」
と感じるかもしれません。
でも大丈夫。
人は誰でも「プラス思考」に自分自身を変えることができます。
ちなみに、私は自分が「前向き」で「プラス思考」であることに自信をもっていますが、若いころ、学生の頃はものすごくネガティブで物事に批判的な人間でした。
高校生の頃などは、クラスの中に誰も友達がおらず、休み時間は賑わっている教室の隅っこでポツンと所在なさげに座っている、そんな生徒でした。
あの時は本当につらかったです。
結局、受験勉強と称して、高校3年生の後半、学校に行かなかったくらいですので・・・。
高校のある時、教育実習生がクラスにあらわれ、教壇で授業を行っている姿を見ました。
その時に、「自分は絶対に一生、あのように人前で、大勢の人の前で話すことなどできるわけがない」と本気で考えていました。
本当に。
この時はそんな人生はあり得ない、と思っていたんです。
今では、月に数回セミナーを行うまでになっていますので、人生分かりませんよね。
自身をプラス思考に変えることはできます。
しかし、残念ながらすぐにはできません。
現実的には時間がかかります。
1年、2年、またはそれ以上かも。
ですが、絶対に変えることは可能です。
私の場合、高校の時の失敗で、大学時代にいろいろと工夫をしました。
またいずれ、どんなことを考えてきたかをお伝えできればいいかもしれませんが、まずは一つの考え方を頭に中に置くようにしました。
それは、「最悪と思えるような状況に陥った時」に、このように考えるようにしました。
「こうなったものは仕方がない。であれば、この状況を最大限に活用できる方法はないだろうか」
このフレーズを常に頭の中に置くようにして、マイナスと思える局面で必ず思い出すようにしました。ノートやスマホなどに書いておくのもいいかもしれませんね。
もう1つ。「口ぐせ」にも気を付けました。
「どうせ」とか「やっぱり」などという単語は口に出すたびに自身をマイナスにする、と思い、「今後は口にしない」と決め、何かマイナスな局面に陥った時には、「やれやれ、しょうがないな!」と思う(心の中でつぶやく)ようにしました。
これらは今でも同じです。
(ちなみに、「やれやれ」という口ぐせは当時読んでいた「ジャンプ」に連載していたJOJOの第3部、空条承太郎が「やれやれだぜ・・」と言っていたセリフに感化されました・・・・。20代の頃の話です。←実は私はマンガ好き、アニメ好きなんです)
このように日常から、
このちょっとしたクセを自身に課すことで、「気が付いたら、自身がプラス思考と言われるように変わっていた」という状況になることでしょう。
このこと以外にもできることはまだまだあるのですが、まずは、マイナス思考はプラス思考に変わることはできる、ということを覚えておいてもらえればと思います。
商空間デザイナーの「前向きさ」はアピールポイントの1つになれる。
話はそれましたが、このように商空間デザイナーにとって、仕事の大切な目標は、その空間を作り上げることだけでなく、依頼をいただいたクライアントに成功してもらうこと、とも言えます。
デザイナーは、一時とは言え、そのクライアントにとって、共に事業を歩むことになる大事なパートナーです。
我々デザイナーの技術とセンスを見込んで大事な事業のパートナーに選んでいただいている以上、携わっている期間は、常にクライアントを安心させることができる人間であることはとても重要です。
日頃から前向きさを持つためには、日常的に物事をプラスに捉える習慣が必要となります。
もちろん、それに加えて、クライアントの方々に対して、自信を持ってアドバイスできる、様々な事象に対して対処できる知識と技術と経験値が必要。
デザイナーはデザイン力の他にコミュニケーション力が重要、とはよく言われます。それに加えて、このようなその人の根幹のような性格も大事、と常々考えています。
そして、これは商空間デザイナーにとって、大きなアピールポイントの一つと言えると思います。
もし、自身の経験や技術力が低い、自身がない、と考えていらっしゃるデザイナーさんがいて、もしその方が「前向きさ」には自信がある、というのであれば、それは自信を持っていい、立派なアピールポイントになると思います。
本日は、このような商空間デザイナーの素養に関するお話でした。
また、機会ある時に、前向きになるために私がしてきたことなど、僭越ながら書いてみようと思います。
![竹村尚久[ 展示会デザイナー|SUPER PENGUIN 代表取締役]](/https://assets.st-note.com/production/uploads/images/24845129/profile_c7502e4b23978a4263b23d015a78516d.jpg?width=60)