【連載小説】「心の雛」第二話
いそいそと先生が裏庭から花を一輪持って帰ってきた。それを私専用の豆皿にそっと置いた。
「あぁ、もうお皿に出してくれたんですね」
先生が私の前のお皿を見て目を細めた。私が小さな人差し指で開けっ放しの冷蔵庫をピッと指差すと、扉がゆっくりと閉じた。私は少しなら魔法を扱えるのだ。
「冷蔵庫くらい、僕が閉めますから」
「これくらい大丈夫です。それより次はカラメルソースですね」
「はい、それは僕がやりますよ」
自家製のカラメルソースをくるりと回しかけ、おやつの準備が完成した。
珈琲メーカーから淹れたての珈琲をマグカップに注ぎ、先生と私が着席した。
「本日も有り難くおやつをいただきます」
「いただきまぁす」
両手を合わせ、さぁ食べよう!
先生が大好きなプリンをスプーンですくって口に運んだ。ぱくり。あぁ……本当に幸せそうな顔をなさること!
私は花の蜜。何の花か分かりやすくするためにとの配慮だろう。花の葉っぱを皿の上に敷き、その上に花冠が置かれていた。これはレンゲだ。時々先生はレンゲの若葉を炒めて食卓に出していた。
ちゅ、ちゅ。とろりと甘い蜜を口いっぱいに含む。あぁぁぁー! おいしーい!
先生がそんなニヤけた顔の私を見て、ふわりと微笑んだ。
先生はプリンが好きだ。というか、プリン以外のデザートをおやつに食べている姿を見たことがない。裏庭では鶏も数羽飼っているけれど、私は絶対プリンのための卵を産ませるためだと睨んでいる。
先生のプリンは自家製で、先生ご自身が四日に一度作っており、蒸し器で蒸し上げるタイプのプリンである。作り置きして一日に一個ずつ食べる。
出会った当初はプツプツした穴が見えていたこともあったけれど、今はもうそんなヘマはしない。なめらかで口当たりが良く、かなりの弾力(揺らすとブルンブルンとする)を持つ先生のプリンはちょっと食べただけで頬が落ちそうだ。
あーん。ぱくっ。もぐもぐもぐ。
美味しそうにスプーンですくって食べる先生はまるで子供のよう。
私は口を波型にしてプリンを召し上がる先生を見て、にっこりと微笑んだ。
(つづく)
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