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奄美大島④ナイトツアー。時速5kmのジープが見せる本当の奄美

奄美大島に来たら絶対に参加してほしいツアー。

ツアー会社もプランもたくさんあるけれど、
私は今回こちらの会社に申し込んで、本当に素晴らしい体験ができました。

なので、もしこれから奄美に行こうと計画を練っている方は是非最後までご覧いただけると嬉しいです!

4WDジープ!?
幌なしなら夜の森を丸ごと体験できそう!
という理由で選んだこちらの会社。

5月下旬のとある日、19:10発の回を予約すると「19:40集合」との連絡がきた。
なるほど。
申込者が多くて2回に分けたのかもしれない。

ナイトツアーで使われる道路は、希少な固有種たちの生活エリアにある。
そのため夜間は利用が制限され、車は1時間に4台しか入れないように調整されるのだ。

これは昼間に撮った三太郎線の入り口の警告
昼間は普通に走行できる
普通にアマミノクロウサギのフンが落ちている

宿泊している名瀬エリアから車で45分。
待ち合わせ場所の奄美マングローブパークに到着した頃には日はとっぷりと暮れていた。

あいにくの小雨だが、雨の方が生き物は活発になるので出会いやすいらしい。

時間まで駐車場で待っていると、1台のジープがやってきた。
きっとあれに乗せてもらうんだ!

電車のような横向きベンチシート
しれっと助手席の後ろのベスポジを確保!
フロントガラスもパタンと前に倒れる
自衛隊が銃撃するためのジープだから、とのこと


案内してくれるのは、奄美の本格ナイトツアーの会社を自ら立ち上げて15年ジープを走らせてきた、奄美群島認定エコツアーガイドのY氏。社長さんだ。

出発まで少しお話をした。
私たちと一緒に参加する20〜30代くらいのご夫婦?も合流し、皆で会いたい生き物の話や「今朝見たこれは何ですか?」みたいな話で盛り上がる。

2人も鳥に興味があるらしい。
新しいカメラを買って奄美にやって来たようで、しきりに雨を気にしていた。

社長も悩んでいる。
予報では止む雨が、どちらかと言うと強まっている。ジープの幌を外すべきか…

私は濡れてもいい。でもカメラの人は…
そう思っていたら皆が幌を外すのに乗り気だった。
みんな、生き物に会いたくて仕方ない様子。
楽しいツアーになりそうだ。


時間になりジープは大きなエンジン音を立てて走り出した。
夜風が気持ちいい。
森にカジカガエルやコノハズクの声が響き渡る。

社長はエンジン音に負けないようにマイクを付け、解説しながらジープを走らせる。
まさにリアル版ジャングルクルーズ。

まずは入り口の警告のところで止まり、この先に進む意味についての話をしてくれる。

世界遺産であるエリア。
貴重な固有種、天然記念物の住処にお邪魔すること。
制限速度は時速10kmだけど、カエル一匹轢かないようにこのジープは時速5kmで走らせること。

そして社長はサーマルカメラを立ち上げた。
これで霧と闇に紛れる生命を見逃さないようにするのだ。

雨は出会いのチャンス
でも霧が酷いと催行中止することも
その意味は後半によく分かった


このジープはシートベルト着用の義務がない。
立っても構わない、というのでみんなスタンディング。

頭上で眠る鳥や高い梢を渡るハブを見る。
夜の森と一体化したような開放感。

とはいえ、全然自分たちでは見つけられない。
社長が「あそこ!」と強力なライトで照らしてくれて、ようやくその存在に気づく感じ。
保護色の生き物など、指さされても全然見つけられなかった。

「あそこ!」
「どこどこ?見えない!」
「ほら!」
みたいにツアーが進む。とても楽しい。

眠るルリカケス
リュウキュウアカショウビン
ごめん起こしちゃったね


ツアー客は車から降りることはできない。
代わりに社長が私たちのスマホで小さな生き物の写真を撮ってくれて、みんなでそれを回し見る。

というか社長、めちゃくちゃ写真が上手い
もし「自分で近寄って撮ってもいいよ」と言われても、ここまで生き生きとした写真は撮れなかっただろう。

奄美大島と加計呂麻島にのみ生息する大型のカエル
オットンガエル
繁殖期に大きな声でオットン!!と鳴くらしい
リュウキュウカジカガエル
鳴き声が綺麗。小さくて可愛い
日本で一番美しいと言われる
アマミイシカワガエル
ジープから身を乗り出して
自分でスマホで撮るとこんな感じ
保護色すぎてわからない

雨の中たくさんのカエルが道路に出ている。
ほとんどすべてが固有種で天然記念物だ。

カエルの腹がライトを反射するとは言え、それは落ち葉も同じ。私には区別がつかなかった。

一匹たりとも踏まないように、慎重にジープは進む。

夫撮影。アマミヤマシギ
親子でとことこお散歩中
3羽いるとわかりますか?
夫撮影
会いたかったリュウキュウコノハズク!
スマホで撮影。アマミノクロウサギ
全然逃げない

アマミノクロウサギの進化は、外敵がいない環境で無駄を削ぎ落としていった。
視力も長い耳もいらない。
それでもアナウサギの名残りで、警戒すると後ろ脚で地面を叩く仕草をする。

うさぎは多産の象徴だが、アマミノクロウサギは毎年冬に1頭しか子を産まないそうだ。
その子を外敵から守るため崖の穴に閉じ込めて、2日に一度授乳のときだけ掘り起こし、また丁寧に入り口を埋め直すという。

暗闇に生き埋めかぁ…
アマミノクロウサギにはなれないかも。

崖に穴を掘って暮らす彼らは、夜になると平らな場所に降りてきてマーキングがてらフンをする。
道路は絶好のマーキング場所なのだ。

でもそれがロードキルに繋がってしまう。

先ほど三太郎線の夜の通行は予約が必要、と言ったが、それは逆に言えば「予約さえ取ればレンタカーでも入れてしまう」ということ。

だからアマミノクロウサギを始めとした貴重な固有種たちのロードキルの被害は年々拡大している。

この森は知識のない人間が入っていい場所ではない


今回ツアーに参加してよく分かった。
どの生き物も、素人では全然見えない

闇に紛れたウサギの丸いお尻は、社長がライトで照らして初めて判別できるもの。
「そこにいる!」
と言われなければ決して気付けなかった。

ツアーの後半は霧も出てきた。
そうなると慣れているベテランガイドですら判別できなくなる。
実際、社長が「っ、あぶね」と呟くシーンが何度かあった。
サーマルカメラだけが頼りだ。

道中の水溜りにはイモリやカエル、それを狙うヘビがいる。
それら全てをどうやって避けているのか…
もはや私には分からない。

でも、そうやって奄美の夜を見せてくれた。
時速5kmで。

◇◇◇

ツアーの間、社長は奄美の歴史や現状について語ってくれた。

琉球、薩摩、米軍。支配の歴史が長いこと。
特に薩摩時代。
奴隷のように扱われ、過酷な収奪に苦しんだ日々。

そして、今もなお鹿児島が奄美の発展を妨げている、と感じていること。

私は何も知らなかった。
そしてそのことに愕然とした。


たとえば沖縄なら。
琉球王朝のこと。沖縄戦のこと。
本もある。映画もある。
沖縄の人からしたらとても満足できないだろうけど、多少は歴史として語られている。

だけど奄美は?
何も知らない。
今こうして調べようとしても、驚くほど情報が少ない。

いや、そんなの言い訳だ。
これまで知ろうともしなかったのが事実なのだから。

恥ずかしい。
知らずに生きてきてしまったこと、それが許される環境に甘えてしまっていた自分が許せない。



THE BOOMの『島唄』誕生のエピソードを思い出す。

山梨出身の宮沢和史は、沖縄に行ったとき「自分が何ひとつ知らなかった」ことに衝撃を受けて曲を作ることを決意したという。

あぁ。
今なら分かる。
たぶん、こんな気持ちだったのだろう。



『島唄』が沖縄戦のことを歌っていることは知っていた。歌詞の意味も、あのMVの衣装が死装束であることも。

でも、「知らなかったことへの強烈な羞恥と怒り」から生まれたことは、知ってはいたけど今初めて理解した



知らなければならない、と思った。

社長の語る「奄美の歴史」は真実なのか。
なぜ歴史では何も教えないのか。
本当に鹿児島が奄美の発展を妨げているのか。

知らないままでいてはいけない。



続きます。
長くなってごめんなさい。

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