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運用最適化・「アルゴリズム実装者第一号」



彼は「最高に運の良い男」として知られていた。

正式には、
「運用最適化アルゴリズム実装者第一号」。

脳内には、
政府が開発した最新のAIチップが埋め込まれている。

あらゆる選択肢を瞬時に計算し、
最も「運の良い」行動を提示する装置だ。

その指示は、
視界の隅に表示される。


たとえば。
当たり付きの自動販売機では、
当たるタイミングで並ぶ。
だから、もう一本、
必ず無料でもらえる。


恋愛でも勉強でも、
彼は、正解を引き続けていた。


ある朝。
表示された指示は、
「外出を控える」だった。

彼は従った。
これまでも、
そうして過ごしてきたからだ。

そして、
指示が少しずつ変わり始めた。

「朝食を食べるな」
「ニュースを見ろ」
「右手を挙げて、5秒静止」

意味は分からない。
だが、無視もできない。
指示に従い、
家に閉じこもっていた。

数日後、
彼はサポートセンターに連絡した。

「指示がおかしい、
変なことばかり言ってくる」

オペレーターは
しばらく沈黙したあと、答えた。

「システム上は問題ありません。
すべて“最適化”されています。
なお、個別の最適化には
介入できません。

ただ……

少し特殊な状態に
移行しているようです」

「特殊?」

「はい。
幸運が最大化され続けると、
最終的には
“リスクゼロ”として
生活可能になります

つまり──

何もしないことが、
最も運の良い行動になります」


彼は言葉を失った。
ここ数日、
確かに失敗はしていない。

だが同時に、
何ひとつ運の良いことは起きていない。


それ以来、
彼はベッドの上で過ごしている。

「動くな」
「考えるな」

指示は簡潔で、正確だ。


ある日、
彼はふと口にした。

「…これ、運がいいって言えるのか?」


彼は、もう一度
サポートセンターに連絡した。


「この状態は、
いつまで続くんですか」


オペレーターは
間を置いて答えた。

「順番にご案内しております」

それ以上の応答はなかった。

彼は、しばらく待ったが、
返事は来なかった。


翌朝。

新しい指示が表示された。

『現在、"運"が混み合っています
順番にご案内します』