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ディズニーのドローン演出:儲からない投資の勝算

暑い盛りの舞浜で、なぜオリエンタルランドは高額なドローン演出に踏み切ったのでしょうか。

2026年7月2日、東京ディズニーランドのシンデレラ城に新たな演出が加わりました。『Reach for the Stars』の終演を前に追加された『Everlasting Dreams』です。Reach for the Starsには目立ったスポンサーの存在が確認されていません。しかも季節は、パークの客足がやや落ち着く夏。普通に考えれば、費用対効果の良い施策とは言えないはずです。

それでもオリエンタルランド(以下OLC)がこのタイミングでドローンという高コストな新技術を選んだ背景には、決算数字を読み解くと見えてくる事情がありました。



なぜ、この夏にドローンだったのか

『Everlasting Dreams』は、通常版『Reach for the Stars』(約20分)の本編終了後に、約5分間のエピローグを追加した特別版です。専用の楽曲に合わせてシンデレラ城にキャラクターたちの後日談が投影され、夜空にドローンが展開されます。公演日は20時30分からファンタジーランドへの夜間入場が規制されるなど、安全確保のための運用体制も敷かれています。

鑑賞は自由エリアのほか、有料の鑑賞エリアも用意されました。一方で、他のパレードや演出に見られるような、企業一社によるスポンサー提供は確認されていません。つまりこの演出は、スポンサー収入という後ろ盾を持たないまま、ドローン機体の調達・運用や専門スタッフの配置といった重いコストを、パーク自身が引き受ける形で実施されていることになります。

ここで気になるのが、OLCの足元の業績です。2026年3月期決算によると、連結売上高は7,045億円と過去最高を更新した一方、営業利益は1,684億円と前期比で減益となりました。人件費の増加、システムやメンテナンスにかかる諸経費の増加、新テーマポートの減価償却などが重なり、テーマパーク事業単体で見ると営業利益は前期を下回っています。2027年3月期についても、ホテルの大規模修繕などを織り込んだ減益予想が示されています。

株式市場でも、OLC株は伸び悩みが指摘されてきました。主要株主に対して保有株式の売却や自社株買いを求めるアクティビスト投資家の動きが表面化しており、株価の重荷になっているとされています。

こうした状況を踏まえると、この夏のドローン投資には二つの見方が成り立ちます。

一つは懐疑的な見方です。スポンサーなし、客足が伸び悩みやすい季節、そして利益率が圧迫されている決算状況。この三つが重なる中でのドローン追加は、短期的な費用対効果という物差しで見れば、必ずしも合理的とは言い切れません。

もう一つは、ブランド投資としての見方です。夏の暑さで消耗したゲストの帰り足を夜まで引き留めることができれば、夕食や物販といったパーク内消費の機会を増やせます。加えて、今年東京ディズニーシーで開催されている25周年イベント『スパークリング・ジュビリー』は、過去の周年イベントと比べて規模感が物足りないという声がSNS上で広がっていました。ランド側の初のドローン演出は、リゾート全体で見たときの体験価値のバランスを取り戻す役割を担った、という見立てもできます。

どちらが正しいと断定できる材料は、現時点では十分ではありません。ただ、記録的な売上を更新しながらも利益が伸び悩むという構造の中で、あえて目立つ新技術に投資したという事実そのものが、OLCの経営判断として興味深い題材であることは間違いなさそうです。


今後、シーでもドローンは見られるようになるのか

初のドローン演出が好評だったとなれば、次に気になるのは「東京ディズニーシーでも見られるようになるのか」という点だと思います。結論からいうと、定常的な導入のハードルは低くないとみられます。

まず前提として、屋外でのドローンショーは航空法上の「特定飛行」に位置づけられており、国土交通省への許可申請が必要です。人が集まるイベントの上空や、空港周辺の空域では特に厳しい審査が課されます。舞浜上空が法律で一律に飛行禁止と定められているわけではありませんが、羽田空港に近いという立地上、実際の飛行ルートでは舞浜上空を避けて運航されているのが実務上の対応です。つまり、法律の条文だけを見れば飛ばせないわけではないものの、空港が近いという地理的条件が、常に慎重な調整を必要とする要因になっていると考えられます。

次に、気象条件です。ドローンによるフォーメーション飛行は、機体同士の位置がわずかにずれるだけで隊列が乱れてしまうため、一定以上の風が吹くと安全に飛ばせなくなります。東京ディズニーシーは東京湾に面した立地であり、海からの風を遮るものが少ない環境です。内陸に近いランドと比べて、上空の風がショーの実施可否を左右する場面は増えやすいと考えられます。

さらに、今回のランドでの実施でも、ファンタジーランドの広い範囲が夜間立ち入り規制の対象になりました。ドローンや演出用の花火を安全に飛ばすためには、観客との距離を十分に確保する必要があるためです。これを毎日恒常的に行うとなると、その分だけアトラクションやエリアの利用が日常的に制限されることになり、パークの限られた敷地の中では運用上の負担が小さくありません。

OLCがこれまでに実施してきたドローン演出も、新エリア開業の前夜祭や、全国各地を巡る単発の出張イベントが中心でした。パーク内に恒常的な設備として組み込む方向性は、現時点では明確には示されていません。こうした点を総合すると、ドローン演出は当面、周年やシーズンの節目に合わせて期間限定で投入される「特別な演出」という位置づけが続く可能性が高いように思われます。


Reach for the Starsが教えてくれたこと

ここからは、私の考えとして書かせてください。

『Reach for the Stars』は、100種類を超えるキャラクターが登場する城プロジェクションとして親しまれてきました。アイアンマンをはじめとするマーベル作品のキャラクターが初めて城の演出に登場したことも話題になりましたが、私が個人的に好きだったのは、『ヘラクレス』や『WALL-E』のような、普段はグッズ展開も控えめな作品にもきちんと出番が用意されていたところです。誰もが知る王道の名作だけでなく、ファンの間でひっそりと愛されてきた作品まで拾い上げてくれる。そのバランス感覚こそが、このショーの魅力だったと思います。

ドローンによる演出は、まだ日本のテーマパークでは頻繁に見られるものではありません。実施できる条件が限られている以上、今後も「いつでも見られるもの」にはなりにくいはずです。だからこそ、機会があるうちに一度見ておく価値があると思います。9月14日までという期間限定の今回は、まさにその貴重な機会です。

そして、Reach for the Starsそのものはこの秋に幕を閉じます。寂しさもありますが、それ以上に願っているのは、王道の名作だけでなく、ヘラクレスのような隠れた名作にもきちんと光を当ててくれるショーが、この先も東京ディズニーリゾートに残ってほしいということです。

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