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赤字の真犯人は診療報酬ではない。“人事の壁”が自治体病院を苦しめる

数日前に下記記事が出てきました。自治体病院の債務超過という話です。今回自治体病院の人事に関して掘り下げたいと思います。

はじめに

自治体病院の赤字と聞くと、「患者数減」「診療報酬が低い」「物価高」といった要因が注目されがちです。
しかし、もう一つの大きな要因が 「人事制度」 に潜んでいます。自治体病院は地方公務員制度の下に置かれており、人材マネジメントの柔軟性が制約される構造を持っています。本記事では、定数管理・直営型の限界・定期異動の慣行に焦点を当て、エビデンスに基づき解説します。


1. 定数管理が機動性を奪う

地方自治法172条3項により、常勤職員の数は 「定数条例」 で定められます。つまり、病院の職員数は議会が決める枠の中でしか動かせません。

この仕組みは一見するとガバナンスが効いているように見えますが、実際には需要の急変(感染症流行や救急搬送の増加)に対して即時に増員することができません。
その結果、人手不足 → 外部委託や応援医師への依存 → コスト増 という悪循環を招くことがあります。
また逆に、人員を削減したい場合でも柔軟に対応できず、過剰配置を抱え続けるリスクがある点もデメリットです。


2. “直営型”では人事・給与の裁量が狭い

直営の公営企業(病院事業)では、職員が地方公務員であるため、給与は条例と人事委員会勧告に縛られています。
その結果、民間病院のように「市場相場に合わせた年俸提示」や「専門職へのプレミアム加算」を行うことが難しくなります。

厚労省の「公立病院経営強化ガイドライン」も、直営型は地方独立行政法人(非公務員型)に比べて人事・給与の裁量が狭く、柔軟性に欠けると明記しています。こうした制約のため、自治体病院は人材確保競争で不利となり、外部委託や応援医師などへの依存を強めざるを得ません。

さらに、在籍年数に応じて自動的に昇給する仕組みである一方、降格や処遇改善が困難なため、無能な幹部層が温存されやすいという組織的な弊害も生じています。

3. 定期人事異動が“経営専門人材”を育てない

自治体では 2~5年ごとのローテーション が原則です。

  • 大阪府:原則2年(上限3年)

  • 守口市:在課3~5年を基本

この仕組みは不正防止やジェネラリスト育成には役立ちますが、医療経営のように長期的な知識と経験が不可欠な領域ではマイナスに働きます。せっかくノウハウを蓄積した職員も、数年で異動してしまい、経営の継続性が損なわれます。

ある自治体病院の元事務方管理職から、こんな話を伺いました。
「前いた病院では、医事業務に精通した専門職が育たず、その穴を埋めるために高額な外部委託費を払っています。内部に人材がいないため、委託先に依存せざるを得ないのです。」

さらに深刻なのは、業務を外注しているために、改善のアイデアや効率化の工夫が院内から出てこないという点です。外部業者は与えられた契約範囲内の業務を遂行するだけであり、病院全体の経営改善につながるような提案までは期待しにくいのです。


4. 全国調査が示す「直轄病院の人材不足」

2025年の 全国衛生部長会調査 は次の点を明確に示しています。
(令和7年3月 全国衛生部長会 調査研究部会)

  • 公立病院の経営悪化要因のひとつが 「条例による採用制約」

  • さらに 「人事異動により病院経営に精通した人材が育たない」 と回答する自治体が多数

  • 特に 直轄(本庁直営)病院が多い自治体ほど、外部の経営専門家支援を要望する傾向 が強い

つまり、制度設計そのものが「内部で人材を育てられず、外部化を招く構造」になっているのです。

上記の京都市立病院においても、外部コンサルタントに委託する記載があります。


おわりに

自治体病院の赤字は、単に「収入が少ない・物価が高い」という話ではなく、人事制度の硬直性が構造的に赤字を生みやすくしている側面があります。
「人材をどう確保・育成し、どう柔軟に処遇するか」――自治体病院の未来を考える上で、最も見逃せない論点です。


自治体病院関係者の皆さまからの、率直なご意見をぜひコメントでお寄せください。

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