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黄金色の焦げ目と、私の「勝ち名乗り」

第一章:嵐の前の静寂と、崩れたパズル
「おめでとうございます! 夢のマイホームですね」

不動産屋の担当者の声が、春の陽光の中で弾んでいた。当時、麻貴の人生はパズルのピースが完璧にはまっていくような感覚だった。結婚し、子宝に恵まれ、ついに都内に家を建てる。世間が言う「勝ち組」のテンプレをなぞっている安心感。

しかし、運命は気まぐれだった。

ローン契約書に判を突いた翌月。夫から告げられたのは「リストラ」という四文字だった。さらに追い打ちをかけるように、東日本大震災が日本を揺らす。物流が止まり、建築資材が消えた。

「家が建たない……?」

真っさらな土地にポツンと置かれた資材の山。それはまるで、麻貴の人生そのもののようだった。
新居のローンと、今住んでいるアパートの家賃。二重の支払いが首を絞める。夫婦揃って無職。貯金残高は、目に見える速さで目減りしていく。

夜、隣で眠る子供の寝顔を見ながら、麻貴は暗闇の中で計算機を叩いた。
「高学歴、高収入、マイホーム。あんなに必死に集めた『勝ち組カード』が、一枚も役に立たない……」

絶望の淵で、彼女は「何者でもない自分」という鏡を突きつけられていた。

第二章:戦いをやめた日
一年の月日が流れた。家はいまだに建たず、精神的にも追い詰められた麻貴は、鬱の霧の中にいた。

ある日の夕暮れ。スーパーの特売で見つけた一パック200円の餃子を焼いている時だった。
ジュワーッという音と共に、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
ふと横を見ると、夫が子供と床で転げ回って笑っていた。窓の外には、夕焼けがオレンジ色に空を染めている。

「……あれ?」

麻貴の手が止まった。
お金はない。仕事もない。世間から見れば、間違いなく「負け組」のレッテルを貼られる状況だ。
でも、この瞬間、この部屋に流れている空気はどうだろう。

「私たち、まだ笑ってる」

人と比べれば「足りないもの」ばかりに目がいく。けれど、自分たちの「今」にフォーカスを絞ってみれば、そこには「お互いを思いやる家族」が、確かにある。

「誰と戦ってたんだろう、私」

スポーツじゃないんだ。人生に勝ちも負けもない。
勝手に審判を呼んで、自分に「負け」の判定を下していたのは、自分自身だったのだ。
その日、麻貴は心の土俵から降りることに決めた。戦わない。ただ、この餃子を美味しく食べる。それだけでいい。

第三章:アツ苦しく、美しく、私らしく
それから十数年。
今の麻貴は、かつての自分と同じように「勝ち負け」に縛られて苦しむ人たちに言葉を届けるカウンセラーだ。

「最近の私、アツイ気がする~(笑)」

ブログにそう綴る彼女の表情は、晴れやかだ。
今の彼女は、自分を甘やかすことも、追い込むことも楽しんでいる。
加圧トレーニングで体に負荷をかけ、筋肉が悲鳴を上げるのを楽しむ。
「ビールは糖質ゼロ! 夜は温野菜!」とストイックに振る舞いながら、その実、自分の心が「楽しい」と叫ぶ方へ全力疾走している。

かつてのどん底の時間は、無駄ではなかった。
あの「家が建たなかった10ヶ月」という空白の時間が、彼女の心の根を深く、強く育てたのだ。

エピローグ:最後の晩餐
「ママ、本当なの? 最後の晩餐、餃子でいいの?」
大きくなった子供が笑いながら聞く。

「そうよ。一パック200円の。あれが私の原点だから」

麻貴は、黄金色に焼き上がった餃子を皿に並べ、糖質ゼロの缶ビールをプシュッと開けた。
誰かに勝つ必要なんてない。
自分が自分であれば、それで100点満点。

「さあ、今日もアツ苦しくいくわよ!」

彼女の瞳には、かつての絶望を焼き尽くした、温かくて眩しい「生」の炎が宿っていた。


一般社団法人パラダイス・バードのカウンセラー紹介
TEAMS PARABA | paradisebird

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