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積み重ねは、ある日突然つながる

前回の記事では、監督から掛けられた一つの言葉をきっかけに、「努力の量」ではなく「努力の方向」を考えるようになった話を書きました。

「自分に足りないものは何か。そして、自分はチームに何を還元できるのか。」

その問いと向き合い続けた夏を終え、いよいよ秋のリーグ戦を迎えました。

ただ、正直なところ、自信に満ちあふれていたわけではありません。

練習では少しずつ手応えを感じるようになっていましたが、「本当にこれで良かったのだろうか」という不安は最後まで消えませんでした。

努力の方向は変えた。

でも、その努力が結果につながる保証はどこにもありませんでした。



秋のリーグ戦が始まっても、最初から思い通りにいったわけではありません。

相手が変われば状況も変わる。

練習でできたことが、そのまま試合でできるほど甘くありません。

それでも以前とは違っていたのは、「結果」だけで自分を評価しなくなっていたことです。

ヒットが打てたかではなく、自分がやろうとしてきたことができたのか。

役割を果たそうとしたのか。

そんな視点で、一打席一打席を振り返るようになっていました。



リーグ戦で打席に立つたび、自分の頭の中にあったのは一つだけでした。

「逆方向へ打つ。」

ボールをできるだけ長く見て、一、二塁間へ運ぶ。

追い込まれたら粘って四球でもいい。

ランナーがいれば送りバントや進塁打で次につなぐ。

派手な長打ではなくてもいい。

チームの攻撃を止めないこと。

それが、自分に与えられた役割だと考えていました。



そのプレーをしている瞬間は、特別な感情があったわけではありません。

ただ目の前の一球に集中し、自分の役割を果たそうと必死でした。

でも、試合が終わって振り返ったとき、ふと思いました。

「ああ、このために夏の間ずっと練習してきたんだ。」

以前の自分なら、「もっと飛ばしたい」「もっと長打を打ちたい」という気持ちが先にありました。

でも、その頃には違いました。

チームが求める役割を果たす。

そのために、自分にできることをやる。

そんな考え方が、少しずつ自分の中に根付いていたのです。



そうした打席を積み重ねていくうちに、チームメイトから掛けられる言葉も少しずつ変わっていきました。

「今の打席、よかったぞ。」

「その内容を続けようぜ!」

「結果はついてくるから焦るな!」

そんな言葉を掛けてもらえることが増え、自分の取り組みは間違っていなかったのだと感じられるようになりました。

もちろん、悔しい思いをすることもありました。

思うような結果が出ない日もありました。

それでも、不思議と以前ほど焦ることはありませんでした。

積み重ねてきたものは、簡単にはなくならない。

そんな感覚が、自分の中に少しずつ芽生えていたからです。



今振り返ると、この経験は社会人になってから何度も思い出します。

仕事でも、「頑張っているのに結果が出ない」と感じることがあります。

新しい仕事のやり方に挑戦したとき。

キャリアについて悩んだとき。

方向性を変えようと決断したとき。

すぐに成果が出ないと、「このやり方で本当にいいのだろうか」と不安になります。

でも、あの頃の経験が教えてくれました。

努力は、頑張った順番に結果が返ってくるわけではありません。

けれど、正しい方向へ積み重ねた努力は、自分の力として確実に残っていきます。

だからこそ、結果だけを見て途中でやめてしまうのはもったいない。

積み重ねは、ある日突然つながる瞬間がある。

僕は、そのことを野球から学びました。



ただ、この秋のリーグ戦で得た自信も、これから先ずっと順調に続いたわけではありません。

努力を続けても乗り越えられない壁。

自分の力だけではどうにもならない現実。

その壁を乗り越えるきっかけになったのは、技術でも体力でもありませんでした。

キャッチャーとしての「ある考え方」の変化です。

次回は、その経験について書いてみたいと思います。

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