消滅。
当たり前の毎日が嫌だった
暮らしといっても
実家を出る甲斐性も無い
ただ同じような日々
繰り返す季節
過行く日々
小学生から
中学生
高校生になり
何となく大学を
卒業させられ
したくない就職
大学生時代
斡旋された
バイト先から
引き抜かれ
そのまま就職
何となく過ごす日々
スマホ片手に
仕事に向かう
最寄り駅の
バス停で
マナー違反の
喫煙者に注意もできず
乗り込んだ
すし詰めの地下鉄
優先席に
やっと座ると
出入り口で
ヘルプマーク付けた
老人が睨んでる
ゆずりたくても
立ち上がることさえ
困難なほど
混み合う車内
俯きながら
下車駅をひたすら待つ
成績は悪くなかった
理数は得意で
どちらかと言えば
目立たないわりに
生徒会長などやって
学生時代を過ごした
なんとなく
入社した会社は
未だ昭和時代の
手書き書類の山
年功序列
パワハラなんて当然
時間外労働は普通
労働基準監督署も
社保庁も驚く
大手子会社の実情
大きな怪我にも
労災は使えず
国に何も求められない
それでも
辞する気にならず
ただただ
グダグダ漂うクラゲ
何となく購入した
分譲マンション
高級住宅街の一室
パラサイトしてた
家を抜け出し
自立へと踏み出す
勤務歴が長いことが
功を奏して
住宅ローンも難なくクリア
幸せになれるとか
そういう大それた
感覚じゃなく
ただただ自立
誰も迎えない
暗い部屋
帰宅する度
声にする
「ただいま」
部屋に上がる時の
呪文になってる
照明を点けることなく
スーツを脱ぎながら
部屋へ向かう
「疲れたなぁ」
大きな独り言が響く
空気の中に
「家族」を創る
本当なら「妻」がいて
本当なら「子供」もいて
独りニヤケながら
仕事であった出来事を
あれこれ話す毎日
洗濯機の中で固まってた
昨日の洗濯物をのばしながら
吊るす
シワシワで臭い
そのことに
ウケながら独り言
「まいったな」
それが今の毎日
当たり前の毎日
何も求めてない
何も嫌じゃない
結婚したくないわけでもない
酒もタバコもやらない
博打もしない
貯金もある
仕事もある
収入は少ないがある
自宅も購入した
怪我も病気も無い
太っても無い
希望はない
夢も無い
友達はいるけど
彼女はない
そんな日々
平凡で魅力もない
それでも
唯一の
安らぎなのか
いつもと同じように
急こう配の坂を上る
自宅へ急ぐ
仕事帰り
帰宅したら
風呂に入ろう
たくさんの人だかり
焦げ臭い煙
閑静な住宅街に
何やら事件か・・
数十台の消防車
我がマンションが
燃えている
火元は自宅の真下
1棟全焼
保険は降りた
しかし
全てを失って
得た「金」など何になる
「想い出の品」も
「気に入りの服」も
「使い勝手のいい家具」も
「よく眠れる寝具」も
何もかも
残ったのは自分自身だけ
頭がおかしくなるほど
考えを巡らせるが
何も浮かばない
昨日までの
暮らしは
目の前から
消滅したのだ
つづく
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