【デジタルツイン】点群が重すぎて困る問題を救う「ボクセル」という考え方
点群データは、デジタルツインの中で扱われるデータとしては、都市モデル(CityGML)と双璧をなすデータタイプです。静岡県のVIRTUAL静岡や東京都の東京都デジタルツイン実現プロジェクトなどでも、全都道府県レベルでデータが整備され、オープンデータとして公開されています。
こんなすごいデータが公開されているのは素晴らしいのですが、点群データを扱ったことがある人なら、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか?
ファイル数が多すぎて、どう扱ったらいいかわからない
データが重すぎて開くだけで時間がかかる
可視化や解析にどんなツールを使ったらいいかよくわからない
見るのに手一杯で、解析できない
ここまで位置精度が高い3Dデータが簡単に手に入るのに、活用するのに手間がかかりすぎて使えないという本末転倒な状態に陥ってしまう。
そこで登場するのが、ボクセルです。
ボクセルって何?
一言で言うと、ボクセルとは、3次元空間を小さな箱で区切ったものです。
2次元の画像が「ピクセル(小さな点)」でできているように、3次元の空間は「ボクセル(小さな立方体)」で表せます。
ピクセル:縦 × 横
ボクセル:縦 × 横 × 高さ
つまり、ピクセルの3D版です。
なぜ点群は重くなるのか
点群データは、
x, y, z の座標
色や強度などの属性
を持つ「点」の集合です。問題は、点の数。LiDARやフォトグラメトリで取得した点群は、平気で数千万〜数億点になります。この状態で可視化や解析を進めようとしても、砂粒一つ一つを見ながら、地形や景観を理解しようとするようなものです。
点群データは、LiDARと言う技術を使って航測会社が取得します。航空機やドローン、車、手押し車などにレーザースキャナを搭載し、無数のレーザーを照射して、対象への距離を測り、それを点群として保存します。なので、点群は、原材料に近いデータだと言えるかもしれません。
点群データの精密は素晴らしいのですが、特に解析に使うにはにはオーバースペックなことも多いのではないでしょうか。
ボクセル化すると、何が良いのか
点群をボクセルかすると、大きなメリットがいくつかあります。
① データが一気に軽くなる
点群をボクセル化する際には、一定の大きさの箱を用意して、その中に入った点をまとめる、ということをします。たとえば、5cm四方のボクセルを用意して、その中に100点あっても「1ボクセル」として扱います。その結果、
点の数 → ボクセルの数に減る
データサイズ激減
表示・解析が速くなる
と言うメリットが生まれます。もちろん、データの正確性とのトレードオフはありますが、目的によっては、点群データが劇的に取り扱いやすくなります。

② ノイズに強くなる
点群には必ずノイズがあります。浮遊点、反射ミス、測定誤差など、点単位だと厄介ですが、ボクセルにまとめる際に、データをフィルタリングすると、単発ノイズが目立たなくなる、安定した形が見えてくる、といったメリットがあり、ノイズが多いデータでも使いやすいデータになります。
③ 「空間」を扱いやすくなる
点群は「点の集まり」です。一方ボクセルは、空間そのものを分割して扱う
という考え方です。そのため、占有判定(ここに物がある/ない)、体積計算
、3Dグリッド解析といった、この空間に何があるか?と言う問いに答えるには、点よりボクセルが向いています。
精度は落ちないの?
点群のボクセル化のメリットは理解できるけど、精度が落ちてしまうのではないかと不安に思う方もいるかもしれません。しかし、データを取り扱う場合の回答としては、いつも同じで、目的次第ということになると思います。目的次第で、ボクセル化することがむしろ適切になる場合が多くあります。
ミリ単位の形状復元、計測 → 点群のまま
地形傾向、体積、分布 → ボクセルが適切
すべてを最高精度のオリジナルの形で持つ必要はありません。使う目的に合った解像度を選ぶというセンスが必要だと思います。
ボクセルは「手抜き」ではない
ボクセル化は、情報を捨てることではなく、情報を必要な形に整理することです。実務では、正確すぎて使えないデータより目的に合わせて粒度を下げた、速くて安定して使えるデータの方が価値があります。
皆さんも経験があるのではないでしょうか?確かに、高精度のデジタルカメラを買ったけど、結局撮影する際は、最高スペックではなく、見たり、共有したり、保存スペースを圧迫しないために少し解像度を落として撮影したりしないでしょうか?

結局重すぎて使えないデータは、死蔵してしまう運命が待っているかもしれません。
最後に
私たちは、点群が重くて扱いにくいと、PCの性能を上げて解決しようとしがちです。でも実は、データの「持ち方」を変えるだけで、データが一気に扱いやすくなることがあります。
ボクセルはその代表例だと思います。点群を扱いたいけども、ちょっとやりにくいな、と感じている方は、一度「空間を箱で考える」視点を持ってみてもいいのではないでしょうか。きっと、新しい世界が見えると思います。
今週、Ceisum社がボクセルについてのとても面白い取り組みを紹介してくれていますので、そちらもぜひご覧ください。
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