嫉妬は良妻の顔をしていない
「まんぷく」という朝ドラが好きだった。
発明家の夫と、それを支える主人公が、力を合わせてカップラーメンを開発する話だ。
何回失敗しても、ふたりで協力して困難を乗り越えていく姿が、理想の夫婦ってかんじで憧れていた。
だけど、わたしは、あの主人公みたいに、夫の夢を応援することができなかった。
夫が、会社を辞めて独立するという。
前々から、自分の力でやってみたい、というような話は、本人から聞いていた。
夫の決意が本物だということは、そばで見ているわたしにも伝わってきた。
旅行の途中でも、独立のための勉強会にzoomをつないで参加し、気になる同業者に連絡をとって会いにいく。自分の会社をもっている友人や親戚に、夜遅くまで相談をしていたのも知っている。
頑張れ、という気持ちもあったけど、なんだか自分だけ蚊帳の外みたいで、モヤモヤとした気持ちもあった。そりゃあ、相談されても、いいアドバイスなんかできないけどさ。
だけど、一応、わたしたち家族の話じゃないのかな。
だいたい、お金とか大丈夫なの。君、子どもほしいって言ってたよね。もし、開業して、子どもまでできたら、わたし、知り合いのいない土地で、ひとりで頑張らないといけないの。大丈夫っていうけどさ、わたしは全然大丈夫じゃないんだけど。
暗い感情が、わたしの心を覆う。だけど、それを夫に言うことはできなかった。だって、かっこ悪いじゃないか。人の夢を、大好きな夫の夢を邪魔するような、ダサい人間にはなりたくなかった。
だけど、気持ちは外に出さないと、行き場をなくして大きくなって、心を塞いでしまうんだと思う。夫の開業準備がすすむにつれて、わたしのなかのイヤな気持ちも、どんどん大きくなっていく。
夫から、「ローンの審査が通ったよ」とか、「建物が決まったよ」と報告をうける。
「そう、よかったね」と当たり障りない返事をしたかと思うけど、この後に及んで、心の片隅では「考えなおしてくれねーかな」と思う。
わたしは、きっと、夫のことが羨ましかった。
独立する、っていう話を聞いたときからずっと。
お金のことも、子どものことも、心配だっていう気持ちは本当だけど、それは多分、後付けの理由で、本心では、夫に嫉妬していた。
夢を追うと決意する覚悟も、素直に周りの人たちに助言を求めることができるところも、夢を応援してくれる仲間がいるところも、全部、全部、羨ましくて、妬ましかった。
そして、わたしが羨ましいと思ったところは、全部、夫の大好きで尊敬している部分だった。
好きな人の大好きな部分まで、醜い嫉妬のせいで嫌いになってしまいそうなことが、いっそう悲しかった。
夫の周りのみんなも、羨ましい。
矛盾してるかもしれないけど、わたしだって、夫の力になりたいという気持ちもあったのだ。
なんで、夫は、わたしのことを頼りにしてくれなかったんだろう。頭が悪いからか。なんの経験もないおっちょこちょいだからか。
応援どころか、嫉妬するような妻だから、当たり前か。だけど、わたし、ずっと部外者みたいで、さみしかったよ。言えなかったけど。
わたしに、何か、力や才能があればよかった。
追いかける夢があればよかった。
才能があれば、夫に協力できたかもしれない。
夢があれば、一緒に頑張れたかもしれない。
だけど、わたしには、何もない。
いつも口ばかりで、行動が伴わない。
できる理由より、できない理由を探してしまう。
笑われるのが怖くて、やりたいことを口に出すのも躊躇ってしまう。
だから、わたしは、夢に向かって頑張る夫が、眩しくて羨ましかったのだ。
わたしも、夫みたいになりたかった。
いつか、わたしにも、見つかるだろうか。
そうしたら、今度こそ、本当に心から、夫のことを応援することができるだろうか。
わからない。わからないけど、こればかりは、自分で探すしかない。
綺麗にまとまらないけれど、でも、逃げないで、ちゃんと探さなきゃ、と、これを書きながら、そんなことを思っている。
嫉妬祭り、参加します。
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