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deoxyriboco
猫にこんばんは【アマノ文筆クラブ】
近所をうろついている野良猫が、私の家の前で待っている。特に餌付けをしたことも、世話をしたこともない。ただ、何度か見かけたことがあるくらいだ。とりあえず、声だけでもかけてみるか。
「こんばんは。お腹、空いたのか?」
猫は何も言わず、その場を去っていった。
次の日も、家の前にいた。だからまた声をかけた。
「こんばんは。ミルク、いるかい?」
でもまた、気が付くといなくなっていた。
それからというもの、毎日のように家の前に現れるようになったが、私が挨拶をすると、決まって帰ってしまう。もしかすると飼い主がいなくて、ただ寂しくて、誰かに声をかけてほしかっただけなのかもしれない。
やがて近所の人たちも、この猫を見かけるたびに挨拶するようになっていた。ある日、たまたま猫に声をかけていた初老の男性に尋ねてみた。
「どうして、この猫に声をかけてるんですか?」
「挨拶するのも、されるのも、嬉しいもんだろ?最近の若いもんは、挨拶の大切さをわかっとらん。猫の方がまだマシだよ。あの猫は、近所の様子を見て回ってるんだ」
なるほどな、と思った。近所づきあいなんて、今の時代、めっきり希薄になっているもんな。
アマノ文筆クラブ様、今週もよろしくお願いします。
