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【#2】社債投資家によるVerizonのクレジット分析

サマリー

信用力の方向性:ややポジティブ
M&Aでレバレッジは拡大した。主力の携帯の収益には少し雲がかかっているが、安定したキャッシュフローをもとに資本政策の規律が守られる限り信用力の改善は進む。
※レバレッジ = Net Unsecured Debt / Adjusted EBITDA倍率(会社開示ベース)

Verizonは、Yahoo等の非中核メディア事業を手放し、「5Gや4G LTE(無線)」と「光ファイバー」に集中する通信会社へ回帰した。

直近は光ファイバーの拡張を目的としたM&Aにより一時的にレバレッジが上振れする一方、同社は約2年でレバレッジを改善させる方針を示している。  

クレジットの焦点は計画通りにデレバレッジへ転じるかであり、フォローすべき指標は以下のとおりである。

  1. 収益・CFの源泉: 後払い携帯の純増数/ Postpaid Phone Net Adds

  2. 財務規律: Capex見通し、株主還元(配当・自社株買い)方針の変更有無

FCF(営業CF-Capex)から配当金と自社株買いを控除した調整後FCFは、2026-2027年の2年間で累計115億ドル程度となるとみている。そうなれば、レバレッジは2027年には投資拡大前の水準まで戻るだろう。

計画どおりのデレバレッジに関して、黄色信号が点灯するトリガーは以下と考えている。

・Postpaid Phone Net Adds(四半期ベース)が継続的に前年同期の値を下回る場合や、年間ベースで同社計画(+75万〜100万件)に未達となる場合

・株主還元方針が上振れる場合。

こうした兆候がみられた場合には、レバレッジ目標の達成時期の延期(2027年→20xx年)などが実施される可能性があり、信用力の方向性の変更を検討する。


企業概要

Verizon Communicationsは、米国の通信会社。
米国における三大通信企業(AT&T、Verizon、T-Mobile)の一角。米国の企業および消費者向けに、無線通信(5Gや4G LTE)と有線通信(主に光ファイバー)を提供する。収益の柱は月額の通信料金収入である。


展開地域

売上高・利益のほぼ100%を米国で稼いでおり、米国マクロ経済の状況や制度、規制に影響を受ける。

事業ポートフォリオ

スマートフォンやタブレットなどのデバイス向けに5Gなどの無線通信サービスを提供することで得られる月額の通信料金が収益の柱である。

以下で詳細にみていこう。

最上位のセグメント区分としては、
ConsumerとBusinessの2つ。
2025年通期ベースで売上高の77%、営業利益の92%をConsumerが占めている

Consumerは次の3つに区分される。

①Service:スマートフォン等のモバイル通信料、FWA(固定無線アクセス)料金、光ファイバー通信(同社ブランド:Fios)料金、デバイス保護プランおよび保険関連プランの料金。

②Wireless equipment:スマートフォン、タブレット、スマートウォッチなどのデバイスやアクセサリーの販売による収益。

③Other:規制や業界の義務・プログラムに関連するコストを回収するための手数料(管理手数料など)、規制上の追加徴収金、代理店経由で販売されたデバイス支払プランの金利収入やリース収入。

Consumerの売上高の75%をServiceが占めており、さらにServiceのうち85%をWireless Service(スマートフォン等のモバイル通信料、FWA(固定無線アクセス))料金が占める

まとめると、同社全体の売上高に対して50%をWireless serviceが占めており、5Gなどの無線通信サービスの提供から得られる月額の通信料金が同社において主な収益源となっている。

さらに細かくみると、無線の総契約数(2025年12月末時点で1億4,700万)のうちの64%を「Postpaid Phone(後払い携帯:同時点で9,400万)」が占める。

つまり、スマートフォン向けのモバイル通信収入(後払い携帯契約数 × ARPU)が全体の売上高を左右する最も重要なファクターである。

しかしながら、Verizonは携帯個別のARPUを開示していない。

代わりに、携帯、ウェアラブル端末、タブレット、FWAなど諸々を含んだ口座あたりの月間平均収入であるARPAを開示している。

そのため、少しややこしいしフォローしにくいものの、決算発表においてまず最初に確認するべき指標は「後払い携帯電話純増数/ Postpaid phone net adds」と、「Wireless retail postpaid ARPA」となる。

Verizonは2026年のガイダンスにおいて、後払い携帯電話純増数/ Postpaid phone net addsの目標を「+75万〜100万件」としている。

2024年の実績(+58.3万件)や2025年の実績(+36.2万件)と比較すると、目標達成には大幅な改善が必要となる。

同社は、光ファイバー通信を担うFrontier買収によるシナジー効果に期待している。携帯と光ファイバーのセット販売により解約率の低下やARPAの上昇を狙い、Frontierから獲得した顧客基盤へのクロスセルにより契約純増数のブーストを期待しているようだ。

期待通りの効果が出ず、2026年目標(+75万〜100万件)を下振れ、かつその傾向が継続するようだと、信用力の方向性に下押し圧力がかかってくる。

「+75万〜100万件」は年間の数値であるため、四半期報告においては、「+18万〜20万件」程度純増しているかが目安となる(ただし、4Qにまとめて顧客を獲得する傾向が見られるため、1Qや2Q単独で判断するというより、継続してフォロー)。

また、ARPAについては、2023年末で$167.26だったものが2025年末で$170.62となり上昇傾向にある。これがダウントレンドに陥ってしまうようだと、それも信用力にはネガティブに働く。

これらの指標は、同社のIRページから「Financial Statements」という資料のなか(= Supplemental Information - Total Wireless Operating and Financial Statistics)で確認できる。

次に、主力事業以外の部分についても確認する。

Frontierを買収したとおり、Verizonは光ファイバー事業(同社ブランド:Fios)を強化している。

財務報告では「Fios revenue」として個別に開示しており、ConsumerセグメントのService売上高のうち15%程度を占めている。

Frontierの買収により、Verizonは現在3,000万以上の光ファイバー敷設済拠点を有しており、これを中期的には4,000万〜5,000万とすることを目標としている。

Q4 2025 Verizon Communications Inc. Earnings Call

ただし、現状、Verizonは四半期報告において光ファイバー敷設済み拠点の数を開示していないため、この数値をフォローすることはできない。

上記のとおり、決算コールの議事録などで確認していく必要があるだろう。

(AT&Tと比較して、Verizonの開示は投資家フレンドリーとは思えない。後払い携帯ARPUや光ファイバーの開示が足りないこともそうだが、四半期報告資料の種類が多くファイルが分かれている上に、四半期単独と四半期累計が別のファイルに掲載されていたり、数値を追いにくい。)

※Verizonは「Fiber passing」と表現しているが、これは光ファイバーの敷設済み拠点の数を示している。AT&Tにおける「Fiber Locations Passed」と同義で、当該指標についてはAT&Tの分析記事を参照。

事業ポートフォリオの歴史

過去にYahooやAOLといったメディア事業を運営していたが、現在は切り離し、通信事業に再集中している。

〈過去の主要イベント〉

2016年:カリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州における地方交換局事業をFrontier Communicationsに105億ドルで売却。

2017年:Yahooのインターネット中核事業を約45億ドルで買収。

2021年:Verizon Media (Yahoo/AOL) を約50億ドルで売却。

2021年:5G向け周波数帯(C-Band)ライセンスを529億ドルで取得。

2026年:Frontier Communicationsを200億ドルで買収(2026年1月完了)。光ファイバー戦略(Fios等)を強化することを目的。

業績推移

主な収益源は通信料金であるため、
同社の業績は相応に安定している。

過去10年で最終赤字転落はない
大きく減益となった年度やその背景は次のとおり。

2018年12月期:デジタル広告市場における競争激化により収益が期待以下となりOath(YahooおよびAOLを統合したメディア事業部門)の減損(46億ドル)を計上。結果、純利益が▲48%減益の155億ドルとなった。

2023年12月期:銅線ベースの有線需要減退や金利上昇を受け、法人向けのBusiness事業で減損(58億ドル)を計上。結果、純利益が▲45%減益の116億ドルとなった。

2度の大幅減益はいずれも減損が主因であるため、キャッシュフローは痛めていない。

こうした非経常要因を除いた平常時には通信会社らしい安定的なキャッシュフローを計上している。

財務分析

ここでは、Verizonは、投資局面で悪化するレバレッジ(純有利子負債倍率(Net Unsecured Debt/Adjusted EBITDA倍率(会社開示ベース))をどのように改善させていこうと考えているのかを検証していきたい。

まず、ベースライン(2025年12月末時点)だが、

純有利子負債:1,101億ドル
調整後EBITDA(会社開示ベース) :500億ドル
純有利子負債倍率:1101 ÷ 500 = 2.2倍

となっている。

Frontierの買収コストは200億ドル。

買収金額を手元の現預金または新規負債調達により賄うため、純有利子負債は1,101 + 200 = 1,301に増加する見込み。

Frontierの年間EBITDAは24億ドル程度であるため、買収後のVerizonのEBITDAは500 + 24 = 524となる。

Frontier-3Q25-Earnings-Presentation-Final

この結果、買収完了直後は、純有利子負債倍率は2.48倍(1,301 ÷ 524)に上昇する。

買収後にレバレッジがどうなっていくのか、Verizonが前提としているシナリオは次のとおり。

vz_4q25_presentation
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Q4 2025 Verizon Communications Inc. Earnings Call
Q4 2025 Verizon Communications Inc. Earnings Call


また、25年通期実績は次のとおり。

〈25年通期実績〉
営業CF:371億ドル
Capex:171億ドル
FCF:200億ドル
配当金:115億ドル
自社株買い:なし

これらの前提を踏まえて、2026-2027年のキャッシュフローを試算すると、次のとおり。

【2026年(試算)】
営業CFは380億ドル、
Capexは160-165億ドル、
FCF(営業CF-capex)215-220億ドル、
配当金 118億ドル、
自社株買い30億ドル、
調整後FCF (FCF-配当-自社株買)67-72億ドル

【2027年(試算)】
営業CFは390億ドル、
Capexは165億ドル、
FCF(営業CF-capex)225億ドル、
配当金 120億ドル、
自社株買い60億ドル、
調整後FCF (FCF-配当-自社株買)45億ドル

【2028年(試算)】
営業CFは400億ドル、
Capexは170億ドル、
FCF(営業CF-capex)230億ドル、
配当金 122億ドル、
自社株買い100億ドル、
調整後FCF (FCF-配当-自社株買)8億ドル

それでは、Verizonがデレバレッジ達成のターゲットに置いている2027年末には純有利子負債倍率がどうなっているのか。

2027年の年間EBITDAは545(524 × 2026-2027年の年間成長率+2%)を見込み、2026-2027年の累計調整後FCF:115億ドルを負債削減に充てると見込むと、2027年末の純有利子負債は1,186(1,301 - 115)となる。

この結果、2027年の純有利子負債倍率は2.18倍(1,186 ÷ 545)に低下し、同社目標(2.00-2.25倍)どおりの水準となる。

Verizonの計画は確認できたので、あとは「この計画は無理のない計画なのか」ということを考えたい。

まず、EBITDAの成長見込み(+2%)は、主力の後払い携帯の契約数を計画どおり伸ばしていけるかは懸念事項ではあるものの、それでも足元の売上高成長率は+2-3%であり、主力のサービス収益を+2-3%伸ばしていく計画であることを踏まえれば、大きく背伸びをした数値とは考えにくく、妥当なレベルと言える。

Capexは、足元と同レベルであり、相応の計画とみている。

株主還元については、過去の実績を踏まえると同社はクレジット改善に誠実に向き合うとみているので、基本的に上振れは考えていない。

具体的には、同社は、2020年2月に「最大1億株」の自社株買いプログラムを承認していたが、実際には2020年から2024年まで5年間にわたり、このプログラムに基づく自社株買いは一切行われなかった。この期間、5Gネットワーク(特にC-Bandスペクトラム)への巨額投資と、それに伴う負債の削減を最優先に進めてきた。

こうした財務運営の実績から同社のクレジット改善への堅実性が伺えることも信用力上はポジティブに評価できる。自社株買いを大規模に行うとしても、デレバレッジを成し遂げた2028年以降になるとみるのが妥当だろう。

以上から、Verizonのデレバレッジ計画は順当にいけば達成可能とみている。

ESG

2023年に、AT&TやVerizonが過去に扱った鉛被覆通信ケーブルが土壌や水源を汚染しているのではという問題がクローズアップされた。

この点については、同社もリスクとして認識しており、「すでに政府の調査、規制当局からの照会、および訴訟が発生しており、今後さらに新たな法的手続きや規制措置、罰金、ケーブルの撤去およびコンプライアンスに伴うコストの発生、業務上の悪影響が生じる可能性がある」としている。

Verizon 2024 10-K

それでは、鉛被覆通信ケーブルの除去・交換費用がいくらになる可能性があるのだろうか。

下記2つの記事を参照すると、40億ドル前後となる可能性が考えられる。

単年ではなく複数年に渡って按分されて発生するコストと考えられるため、現時点ではフリーキャッシュフローのなかで管理可能なコストとみている。

" Verizonの鉛被覆ケーブルは81,000マイルと推計される。"

https://www.fierce-network.com/telecom/verizon-latest-disclose-lead-clad-copper-cable-footprint

" 鉛被覆ケーブルの除去費用は、6万マイルで20-40億ドルとなる可能性。"

https://finance.yahoo.com/news/att-might-spend-4-billion-replacing-lead-cables-analysts-estimate-163449924.html


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