Photo by
123ribbon
該当作梨 | 毎週ショートショートnote
信じてもらえないかもしれないが――
本を食べて育つ梨がある。
年に一度の文学賞、“該当作梨”と発表されたその年、応募作はすべてひとつの梨農家に集められる。
そして燃やされ灰となり土へ還り、梨の木の糧となる。
世の中は「誤字だろう」と思っているだろう。
まさか、本が肥料になっているなんて。
けれど、それを知る者は、ほんのわずか。
その梨はひと口で胸を打つ。
言葉よりも早く、感動が波のように押し寄せるという。
けれど誰も本当の味を知らない。
高価すぎて、農家ですら口にできないからだ。
そして梨は、本を燃やした年にしか実らない。
だから、今年の「該当作梨」に歓喜する者もいる。
もしかすると、本当に該当作がなかったわけではないのかもしれない。
梨を食べたいがために、誰かが意図的に選考を外したのではないか――そんな疑念さえ浮かぶ。
紙をめくり、じっくりと言葉の余韻を味わうあの感動に勝るものなんて、本来あるはずがないのに。
(396文字)
今週のお題に参加させていただきました。
梨が食べたくなってきちゃった。
