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1からの水理学(12)急拡大損失

話のきっかけは、図1のように動く歩道の入口で見ることができる「しりもち」と出口で見ることができる「つんのめり」の話です。

図1 「しりもちの作用」と「つんのめりの作用」
ここだけの造語です

この「つんのめりの作用」ですが実は、図2のように管路内の水が管を出てタンクなどに流れてゆく出口でのエネルギー損失(出口損失)にも関わっています。どちらも、速度が急に遅くなる場所ですね。

図2 エネルギー線がカクンと落ちているところ(左は入口損失、右側は出口損失)の例
((4)で用いた図の再利用です)

それがどう関わっているのか、話を具体的にするために図3を用意しました。

図3 急拡大の断面の例が①~②の区間になります
(赤い矢印がHLで急拡大損失です)(青い矢印は水圧の差です)

図3中、①、②付近のエネルギー式は以下の通りです。これは(10)で紹介したべチュリー計の計算式に、急拡大損失水頭HL(m)を追加しただけです。HLは図2中の赤い線の2つ目の垂直部分の長さに相当します。以下、場所①の変量に下付きの1、場所②の変量に下付きの2を付しました。
v₁²/(2g)+Hp₁= v₂²/(2g)+Hp₂+HL  (1) この式の意味は、
速度水頭₁+圧力水頭₁=速度水頭₂+圧力水頭₂+HL
単位は[m]です。斜線は分数の横線です。

今、ベンチュリー計では、水銀マノメータで2か所の圧力差[m]を測定します、今、流量Qを知りたいわけではなく、設計上の目的からHLと速度水頭₁との関係を知りたいだけですので、圧力差のデータはここでは不要でしょう。

その代わり、「つんのめり」で発生した力についての計算式を使います。流れが②に入ってすぐのところに、前につんのめっているおじいさんがいると想像してください。
ρQ v₂-ρQ v₂ =ρg Hp₂ ×A₂-ρg Hp₁ ×A₂  (2)
この式の意味は、運動量の変化量[N]=圧力[N/㎡]×面積[㎡]

左辺は「つんのめりの作用」で発生した力ですが、右辺は水圧でその力を押しとどめているエアバッグのような力の作用を表しています。(私は、これらの力で管全体が前とか後ろに押されると思っていましたが、そうではなさそうです。目に見えないエアバッグですので、なかなか難解です。)

図4 つんのめりの作用を帳消しにしているエアバッグ

(1)と(2)式に加えて、連続の条件Q=A₁v₁=A₂v₂(3)
を考慮すれば、急拡損失水頭HLは、
HL=急拡大の損失係数 × v₁² / (2g)    (4)
の形に整理できて、結果的に、急拡大の損失係数を断面積A₁とA₂の比から得ることが可能になります。設計上、A₁もA₂の管の形状から容易に得ることが可能ですので、数学上は既知のパラメータとして扱われています。

書きながら思ったことのまとめ

雑感1:ここでは、おじいさんの「つんのめりの作用」とか、「エアバッグの機能」について詳しく説明したかったので、急拡大損失係数と面積A₁やA₂との関係式は敢えて示しませんでした。受験的には、式を的確に記憶することが大切と思ったのですけど、ご容赦ください。

雑感2:ベルヌーイの定理の運動方程式に損失水頭を追加することによって、図2では、まるで連続的であるかのように赤いエネルギー線が描かれています。元々、ベルヌーイの定理は連続的な1本の流線にそった概念ですので、不連続な水理現象に応用してゆくことには、水理学の先人たちの大胆さが伺えます。実務上の必要性がそうさせたのかなぁ。


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